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バーでトンカツ定食を食べながら
「つまり、依頼した人がその非公開アカウントを見られるようにすればいいってこと?」
グラスを磨きながら、有希は聞く。昼間は喫茶店、夜はバーの「雪白」。
店内のシックな雰囲気に似合わない炊飯器の音が鳴る。
有希の店の仮眠室を間借りして俺は生き延びている。家賃は格安の2万円。タダで住むのも申し訳なくて毎月諭吉もしくは渋沢栄一を2枚押し付けている。
今回の依頼を上手くクリアすれば暫くバイトはしなくていい。
「まあ、そうなるな」
「好きなのかな、その男の人のこと」
「同世代に見えたから、それが一番可能性があるな」
「今、非公開や鍵垢見られるアプリとかあるじゃん。違法だと思うけど。はい、出来上がり。トンカツ定食です」
バーのカウンター席に置かれたトンカツ定食。俺が小洒落た料理は性に合わん、とワガママを言ったら裏メニューを作ってくれた。
「いただきます、ハフハフ……なんかさ、それじゃダメらしいんだよ……モグモグ……お互いにフォローしなきゃ……ムシャムシャ……」
「食べるか喋るかどっちかにしなよ」