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影に灯る花  作者: 佳山雅


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ep.06 琥珀色

お待たせいたしました。幽紗が登場します。

街で最も名高い廣瀬美術館は今夜、夢の宮殿のように美しく飾られていた。

巨大なガラスドームの下、柔らかな灯りがアート作品を照らし、まるでそれらが息づいているかのように見えた。

空気には香水と料理の香りが漂い、遠くからは優雅な交響楽が聞こえる。ゲストたちは高級な衣装を身にまとい、シャンパン片手に談笑していた。華やかでありながらも、どこか落ち着いた雰囲気が漂っている。


そんな中、昴は静かに歩み進めた。

一流のコレクターを装い、精緻なスーツに身を包み、ブロー型の眼鏡をかけて。

その眼鏡には極小の録画装置が仕込まれ、彼の顔立ちと違和感なく馴染んでいた。

胸元の胸ピンもまた、芸術愛を象徴しながら、高性能な録音装置を内蔵した特注品だった。


人々の目を避けながら、昴は会場を観察する。

やがて視線の先に、標的である真綿議員の姿を見つけた。

洗練されたスーツに包まれ、笑顔を振りまきながら、政財界の人物たちと談笑している。

だが昴の目には、その笑みの奥にある仮面が透けて見えていた。

そして、ほんのわずかな姿勢の揺らぎを見逃さない。

その隙が、今回の任務の鍵だった。


その時――

音楽が切り替わり、場の空気が変わった。優雅で幻想的な旋律が流れ、人々が自然と道を開けていく。


そこから、彼女が現れた。

東日幽紗――伝説的な天才画家。

淡い色のドレスが彼女の細身の身体を優雅に包み、歩くたびに花びらのように裾が揺れる。

肩までの茶色の髪は、自然な波打ちを描いて光を反射し、編み込まれた部分には精巧な花の髪飾りが添えられていた。

そして、その瞳――琥珀色に輝くその双眸は、まるで他人の心の奥を見透かすような静けさと力を持っていた。


「……あの天才画家か」

「美しすぎる……」

「才能もあって、完璧ってこういうこと?」


誰かの囁きが、昴の耳にも届いた。

彼の視線も自然と彼女に引き寄せられた。


幽紗の目がふと、昴に向けられる。

その瞬間、二人の視線が交わった。


胸の奥で、何かが弾けた。

心臓が跳ね、空気が震え、感情が稲妻のように身体を駆け抜ける。


彼の中で、何かが動き出していた。

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