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影に灯る花  作者: 佳山雅


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ep.48 影に灯る愛の花

幽紗の作品展は予想以上の盛況を見せ、会場は熱気に包まれていた。カメラのフラッシュが絶え間なく焚かれ、インタビュアーたちが競うように質問を投げかける。作品たちが放つエネルギーに引き寄せられ、来場者たちもその魅力に引き込まれていった。


その時、メインのインタビュアーが幽紗に向かって質問を投げかけた。


「幽紗さん、今回のテーマを『純愛』にした理由は何でしょうか」


会場が静まり返り、全ての視線が幽紗に集中した。彼女は一瞬目を伏せ、答えを探しているようだったが、顔を上げた瞬間、群衆の中にひときわ静かに立つ人物を見つけた。


昴だ。


彼の瞳は、周囲の喧騒を無視するかのように、幽紗を見つめていた。その視線が交わった瞬間、幽紗の心は温かな感情で満たされ、言葉を超えた感情が溢れてきた。彼の存在は、まさに「支え」そのものだった。


深呼吸をして、幽紗はゆっくりと口を開く。


「デビュー作の『純』は、私の理想でした。でも、『純愛』は今の私の現実です」


微笑みながら続けるその言葉には、過去の理想と現在の現実に対する深い理解が込められていた。


「『純』は理想の愛を追い求めた作品です。でも現実は、理想通りにはいきません。人はそれぞれ感情や過去を抱え、迷い、傷つきながらも愛し続けます。それは完璧ではないかもしれませんが、だからこそ本物なんです」


幽紗は一瞬目を閉じ、遠くを見つめる。その目の中には、過去と向き合いながら成長した自分を感じているようだった。再びインタビュアーに視線を戻し、静かに言葉を続けた。


「『純愛』は、私が実際に経験した愛です。それは不完全で、時に苦しいものですが、誰かを心から愛し、守りたいと思う気持ちは、どんな理想よりも強いと気づきました」


その言葉に込められた深い愛情と誠実さが、会場全体に響き渡った。幽紗は少し視線を落としながらも、その言葉が昴に向けられていることを感じていた。


「純愛は、支え合い、過去や本当の気持ちに向き合う過程で生まれます。その過程は辛いこともありますが、だからこそ得られたものは輝いていて、美しいと思っています。この作品を通じて、同じように悩んだり、支え合ったりする人たちに何か届けばいいなと思っています」


その声には確信があり、深い愛情が込められていた。昴は微かに微笑み、幽紗も自然と笑顔を返す。二人の目が再び交わり、その間には他の誰も入れない特別な空間が広がった。


会場の喧騒、フラッシュの光さえも、今や遠く感じられる。時間が一瞬止まったかのように、二人だけの世界がそこに広がっていた。その瞬間、純愛の本質がそこにあった。


幽紗と昴が共に歩んでいるその道こそが、彼女の描く「純愛」そのものであり、二人がそれを共に歩み続けることが、愛の証なのだと感じさせる瞬間だった。



幽紗は、愛を知らないまま大人になってしまった人です。颯と似た部分もありますが、彼女は感情を外に出すことなく、ずっと心の奥にしまい込んできました。平気そうに見えるかもしれませんが、実は誰よりも傷つきやすく、危うい存在です。


彼女は「普通の人」として自分を偽らず、ただ静かに日々を過ごしてきました。けれど、本当の気持ちを外に出すことは、彼女にとってとても怖いことでした。だからこそ、ある出来事をきっかけに少しずつ自分を開いていく姿には、ほんのわずかな変化であっても、深い意味があるのです。


今後、幽紗がどのような作品を生み出していくのか。私はとても楽しみにしています。

彼女の物語が、これからも誰かの心にそっと寄り添えますように。


***


ここまで『影に灯る花』を読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。


この物語は、「純愛」というテーマのもとに紡がれてきました。

けれど私が描きたかった「純愛」は、決して恋愛だけのものではありません。

それぞれの登場人物たちが、誰かを想い、支え合い、時には自分自身と向き合いながら歩んだ道。

そのすべてに、私は「純粋な愛のかたち」を感じています。


過去に傷つき、迷いながらも、それでもなお大切なものを信じ抜く。

それは簡単なことではありません。

だからこそ、昴と幽紗をはじめ、翼、颯、玲香、瞬、米田教授、時忠、忍たちが見せた想いの強さを、

「これもまた一つの純愛だ」と、胸を張って伝えたかったのです。


この物語の中に、

もし少しでも、あなたの心に重なる何かがあったなら

それが、私にとって何よりの喜びです。


また、いつか。

どこかの物語で、皆さまとお会いできますように。

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