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影に灯る花  作者: 佳山雅


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ep.41 刻限の中で

時間が刻一刻と迫る中、幽紗は急ぎ病院に向かおうとした。

玄関のドアを勢いよく開けると、そこに立っていたのは翼だった。車の前に立つ彼は、まるで自分が来るのを待っていたかのように、腕を組んで静かに佇んでいる。


翼の表情には落ち着きがあり、その奥には明らかに緊張が漂っていた。幽紗はその姿を見て、わずかながら安心感を覚えた。


「送ります。乗ってください」


突然の出来事に戸惑いながらも、幽紗は無意識に頷いた。


「はい。お願いします」


翼はすぐに車のドアを開け、幽紗が乗り込むのを待った。無駄のない動きで、彼の行動が計算されたものだと感じさせる。ドアが閉まると同時に、翼も車に乗り込み、エンジンをかけた。車はすぐに走り出し、夜の街を駆け抜けていった。


車内には仕切りがあり、前後の座席の間に視界が遮られていた。静かな車内で、突然、マイク越しに翼の声が響く。


「隣に置いてある服に着替えてください」


その冷静な声に、幽紗は少し安心した。状況が理解できた彼女は、袋からナース服を取り出し、手を伸ばして着替え始めた。


「安心して着替えてください。誰にも見られることはありません」


その言葉に励まされ、幽紗はナース服に身を包みながら、心を落ち着けようとした。


車は静かに進み、夜の街が流れる。外の景色を見つめながら、幽紗は心の中で母を救うための覚悟を新たにした。時間は限られているが、まだ間に合う。必ず間に合わせるという強い思いが、彼女の胸を熱くさせた。


星名病院に到着した時、残された時間はわずか十五分。二人が車から降りた瞬間、空気がピリっと引き締まる。翼は周囲をさっと確認し、幽紗に向かって低い声で言った。


「ついてきてくだい」


病院の玄関前には、警備員が二人立って無駄話をしている。翼はその場に一瞬目を止めると、迷いなく行動に移した。幽紗に「待って」とジェスチャーをし、前に進んだ。


最初の警備員が翼に気づき、少し怪訝な表情を浮かべたが、翼はすぐにその距離を詰め、親しげに声をかけた。


「お疲れ様です」


その瞬間、翼はすばやく警備員の首元をつかみ、正確に神経を狙って一撃で意識を奪った。警備員は言葉もなく、その場に倒れた。


二人目の警備員が慌てて手を伸ばし、警報を鳴らそうとしたが、翼は既にその動きを予測していた。彼は一瞬で間合いを詰め、相手の腕を巧みに制圧。抵抗する暇も与えず、警備員を地面に押し倒し、後頭部を軽く叩いて無力化した。


二人の警備員が倒れた後、翼はすぐに立ち上がり、周囲を再確認。すべてが順調に進んでいることを確信した彼は、幽紗に手招きした。


「この先は一人で進んでください。急いで」


幽紗は頷き、母がいる場所へ向かって駆け出した。その間、翼は車に戻り、病院の防犯システムに侵入。全ての防犯カメラを停止させ、幽紗が誰にも見つかることなく行動できるようにした。


残り時間は四分。幽紗は脳神経外科のフロアに足を踏み入れた。ナース服を着ているため、周囲の目を気にせず、自然にナースステーションを通り抜けることができた。


そして、ついに母の病室を見つけた。


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