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ep.02 影に生きる一族

東北の征討、地方の統治。

月影一族は、天皇の影として、絶えず歴史の裏側を支えていた。人知れず戦い、貧しき者を救うという初心を忘れることなく、闇から光を支え続けた。


だが、時代は移り変わる。

桓武天皇の崩御後も、一族は忠誠を尽くし続けたが、戦国の乱世に入り、天皇の権威は音を立てて崩れ始める。

そして第三十八代目の族長は決断する。


「我らは、我らの手で道を拓く」


天皇からの独立――

それは一族にとって初めての「反逆」だった。


戦国の初期、月影は力を蓄え、密かに国の中枢に食い込んでいった。

しかし、豊臣秀吉との戦いに敗北を喫し、その限界を突きつけられる。

続いて台頭した徳川家康は、月影一族の実力を見抜き、使者を送り救いの手を差し伸べた。

月影は再び忠誠を誓い、今度は幕府の影として生きる道を選んだ。


だが、初心は次第に薄れていった。

助けるべき民は消え、残ったのは強き者に仕え、影で忠実に任を遂げる一族の姿。

そして新たな掟が定められた。


――「絶対成功、失敗者は消滅せよ」


歴史の表舞台から姿を消した月影一族は、暗殺と諜報に特化した存在へと変貌した。

その名も、過去も、闇の中へと沈めて――。


 


正島一族は、月影を補佐するために存在した。

その使命は、明治天皇によって定められたもの。

誰を補佐するかは、生まれた瞬間に決められる。


運命を拒んだ者は、容赦なく粛清される。

――「月影使者、違反者消滅」


月影当主が代われば、正島の族長もまた代わる。

その者には莫大な資産と情報網の管理を許される絶対的な権限が与えられ、地位を巡る戦いは熾烈を極めた。


 


そして、時は――

二〇三二年。日本。

月影第七十一代目、月影・しゅんが一族を統べる。


「殺しのマシン」


それが彼に与えられた異名だった。


スーツの上からでも分かる鋼のような肉体。右頬に走る深い傷跡。

無数の戦いの記憶を刻んだ身体が、彼の生き様を語る。

一歩踏み出すだけで、空気が張り詰める。

その動きは、まるで精密機械のごとく無駄がなく、冷徹な瞳がすべてを見通す。


瞬が言葉を発するだけで、部下の心は凍りつく。


「次の任務」


「はっ」


「結果は言うまでもない」


「はっ」


その場にいた部下たちは、声を揃えて短く返事をし、深々と頭を下げて任務へと散っていった。


静寂が戻ると、瞬は再び巨大スクリーンに視線を向ける。

思考の回路は常に回転し、無数のシナリオが構築されては消えていく。


掟――「絶対成功、失敗者は消滅」

それを最も体現しているのが、他ならぬ彼・月影瞬だった。


どれほどの血をその手に背負おうと、瞬は決して揺るがない。

それは冷酷さではなく、使命。

一族を守るため、未来を紡ぐため、彼は自らを「影」と定めた。


闇に生きる者が、光を守る。

それが、月影一族の本懐であった。

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