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データ供養所

【プロローグのみ】転生した魔法薬師のお客様【一発ネタ】

作者: まい

 ナニカに似てるでしょうが、そこはリスペクトでオマージュですので、どうか見逃して下さい。

「ありがとうございました」


「どうぞお大事に」


 閉じる扉を前に()を見送る。





 ここはヨーロッパ風の街並みを見せる、地球に似た異世界。


 いわゆる中世風ではなく、産業革命によって発展(いちじる)しい世界だ。


 この世界は実は魔法が()る。


 在るのだが、魔法そのものの武力利用はあまり進んでいない。


 なぜかと言われれば、魔法で直接人間をそこまで害せる強い魔法を使えない世界だからだ。


 だが文明が(おこ)る初めの人力でおこした火だって、摩擦を起こす火おこし棒による着火ではなく、魔法の火だったと言うのが歴史の常識になっている位には魔法が浸透している。


 なので科学(かがく)化学(ばけがく)が発展する余地があり、少しだけ頼りない魔法が発展の補助をして、この世界が地球で言う産業革命時代位に技術力が発展したと。


 ちなみにこの世界では、エルフとかドワーフとかと言った、異種族の存在は不明だ。


 確認されたとする発表が、1度もされてないみたいなので。


 それと魔物はいる。 ()法を使う動()で魔物。 自分達で水をまき、食べる草を自力で育てる牧畜にできる魔物は手間があまり掛からないと評判だ。




 なぜそんな違いを知っているか?


 それは俺が、地球からの異世界転生者だからだ。


 生前の俺は新薬研究をする研究員だった。


 まあその研究中に、自身では気を付けていたはずなのに何らかのミスをしたらしく、命を落としたらしい。


 で、気が付いたらこの世界に生を受け、特別な力なんて無くこの世界の一般的な人間として生活し、前世の知識を応用して魔法薬を作り販売する薬師(くすし)になったわけだ。


 薬師として店を開いた直後はヒマだったが、客が来はじめたら後は一気に人気店の仲間入り。


 まあ適切な薬を創る&使う為の知識は前世から持っていたわけだし、前世の薬品知識と魔法の効果を合わせる研究も怠ってないし。


 そりゃあ、専用の精密な機材が無いから大変ではあるけど、前世で治療薬がある病気に対応するのはある程度可能だよなと。




 それで、そんな忙しい生活を送っていたある日。


「やあ、ちょっと良いかい?」


 地味な色で広いつばの帽子をかぶり顔を隠し、地味な色の長い外套(がいとう)で体をすっぽり覆った男が店にやって来た。


 その人の斜め後ろには、同じく地味な色の外套で全身を隠し(うつむ)いた子供らしき存在が(たたず)んでいる。


「誰だい、あんた」


 ちょっとロクでもない空気をまとわせる人物へ問いかけると、怪しさとは別に案外気さくな男の声で応えてくれた。


「店が繁盛(はんじょう)してるみたいだから、チョイと人足(にんそく)を紹介したくてね」


 人足……まあ従業員と受け取るか。


 怪しい。


 怪しいが、人気店になってから、人手が欲しい気持ちも確かにあった。


 なぜそれを見抜いて、こう営業に来たのかが怪しいが。


「いやね? 偶然、この子を見つけちまってね? 何者か(たず)ねてみたら、天涯孤独だって聞かされてね? そりゃあ大変だと思ってね? でもオレも育てる余裕の無い生活をしていてね? そんな時にアンタの所は景気が良さそうだからさ、この子を住み込みで雇ってもらえるんじゃないかなとね?」


 怪しい。


 が、悪意のある目や声では無いのだけは伝わり、どんな理由なのかは知らないがその子を助けたいと思っているのは本心のようだ。


「まあこの子を見てくれよ。 ほら」


 なんて言いながら怪しい男は子供の外套をめくり、中身を見せてくる。


「あ……」


 思わず。 多分、条件反射だろう。


 思わず声をもらしてしまったが、良心を持つ者なら誰もが言ってしまうだろう。


 外套で隠された子供の姿は、粗末なワンピース1枚だけを引っ掛けた少女だった。


 しかもただの少女ではない。 全身に(ひど)傷痕(きずあと)が刻まれており、後遺症対策のケアなんて考慮されず自然治癒に任せて放置されたのが簡単に推測できて、どう治療してもその傷痕が消せないのが理解できる姿だった。


 特に両手首を覆う大きな傷は、何度も酷く(こす)られ、毛細血管が死滅していそうなほどにズタズタになっている。


「これは……」


 明らかにまともでない環境で育てられた、又は生きてきた、少女だった。


 絶句していると、怪しい男の声が響く。


「分かったろ? こんな子を見て、ある程度財力があって心優しい薬師様が、放っておけると思うか?」


 質問には答えず、俺は怪しい男に質問していた。


「この子をどこで見つけた?」


「最近めっきり影が薄くなったお貴族サマが、最後の抵抗とばかりにした大博打(ばくち)でこさえた借金が返せなくなって、爵位と全財産を国に没収された、そのやしk……っとと。 違うからな? 忘れてくれ」


「…………」


 そう。 産業革命時代は、貴族達より商人の方が金も影響力も得てしまった事により、貴族が形骸化(けいがいか)して消えるかどうかって時代だ。


 そんな時に、貴族はこんな子供を……。


 なんて考えていると、


「引き受けるか、受けないか。 どっちなんだい?」


 なんて()かれた。


 それに俺は、迷う事なく。


「引き受けよう。 大事な娘として」


「へへっ、まいどあり」


 怪しい男は、最後まで怪しい男だった。







しばらく後。



 大事に大事に娘として育てていたはずなのに、ウチの子はなぜかサキュバス(比喩的な)に育っていた。


 だれか助けて。

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