夜の帳はその手で上げろ
この時間がずっと続けばいいのに。
好きな時に寝て起きて、
好きなモノを食べて、
たまに好きな人たちと遊ぶ。
ぼくは夜を望んだ。
みんなと会うのはたまにで良い。
静かなひとりになって
暗い空を見上げるのが
ぼくにはなんとなく必要だった。
だから夜を愛していた。
そんなことをしているうちにも、
空気は暑くなって、冷たくなった。
日は延びて、短くなった。
ぼくは怖くなって、
ただひたすらに夜を望んだ。
けれどいつの間にか、
愛しい人は夜を出て行った。
そしていつの間にか、
僕は大人の様になってしまっていた。
それでも夜を愛していたから、
月を見上げて叢雲を吐き、
アルコホルで星を増やす。
……この時間がずっと続けばいいのに。
ぼくがこんなだから、
キミは夜を出て行ったのかな。
夜は、明けなきゃいけないかな。
ぼんやり想いながら、また夜になる。
ぼくの居場所は夜になった。
逃げ込む場所じゃなくて、
居場所になってしまった。
それでもぼくは動くことなく
未だずっと夜に居る。
『光の帝国』には、昼と夜しかない。
それは違うだろと叫んだのは少し前の話。
虹色の天蓋がなぜ虹色か、
それは隙間を愛せばわかる話。
それなら、夜の帳は上げなきゃいけないか。
暁も、黄昏も、ぼくは好きだったハズだから!
『光の帝国』
ベルギーの画家、ルネ・マグリットの作品。1953~1954年にかけて制作された、油彩絵画群。
彼の代表作のひとつであり、デペイズマンと呼ばれるシュルレアリスム表現手法の筆頭でもある。
その内容は、「”昼間の青空”と、”夜の湖畔など”がひとつの画面に同居する」というもの。