表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

エピローグ:ピア

一応、ここで終わりになります。

 ヴァーリオとの出会いから後、ピアは学園で勉学に励む。

一通り貴族としての礼儀作法をマスターし、それ以外にも様々な知識を学んだ。

乙女ゲームとしての設定は知っていても、この世界における常識にはまだまだ疎い所があるからだ。

良く学び、学友達とも交流するなど、ピアは青春を謳歌した。


 乙女ゲームのヒロインのような振る舞いをせず、地に足を着けた学園生活を送るピア。

特に悪目立ちする事も無く、半分平民という出自を侮られる事も無い、一学生として平穏に過ごしていた。

友人にも恵まれ、その内の一人である令嬢から兄を紹介された。

彼は男爵家の三男に当たり、爵位は継げないが、西の隣国であるホープス王国に渡り、商家を営んでいるそうだ。

歳は5つ上で、優しく真面目そうな雰囲気の男だった。

勿論、原作には影も形もない人物である。


 彼の営む商家はそこそこ繁盛しており、中々に裕福であった。

それが故に金遣いの荒い女性に目を付けられ、苦労したそうである。

学園で真面目に勉強し、周りからの評価も高いピアはそれを見込まれ、友人から兄を紹介されのだった。


「うーん、結構イケメンだし、お金持ちだし良い人っぽいし、すっごく良いんだけど……」


 ピアの望みは前世では果たされなかった、穏やかで幸せな結婚生活だ。

そういう意味では、紹介された男は非常に優良な物件である。

問題は、自分の血縁上の父親だ。

アレがしゃしゃり出て来られると面倒になると思われた。


「……そういう訳で、あの父がどんな難題を貴方に押し付けるかと思うと、二の足を踏んでしまって……」


 ピアは包み隠さず我家の事情を目の前にいる男……エレクトに告げた。


「そうですか。正直に話してくれて嬉しいです。ですが、貴女が気に病む事は無いですよ」


 そう言って優しく微笑む。

超が付く程の美形ではないが、何処か安心出来る様な笑顔だった。

ピアはその姿に少しばかり心が揺れる。


「私とて男爵家の生まれですし、貴族の事は十分に理解しております。問題はありません。全て私の方で対処しましょう」


「え……それって……」


 その後二人は結婚に至った。

開眼したピアの貴族令嬢としての佇まいに加え、前世の日本人的な奥ゆかしさ、乙女ゲームのヒロインとしての魅力に、エレクトの方が夢中になったからだ。

その結果、ピアの父が色々とやらかしかけた事を、エレクトは見事に抑え続ける事で、ピアの抱える面倒な事案を全て解決する、スパダリへと進化した。


 ピアは今、ホープス王国で夫と共に商家を営みながら、幸せな生活を送っていた。


「どうもオーケス王国との関係が怪しい雲行きになって来たね……」


 エレクトが今朝の新聞を読みながら渋面を作る。


「この国の王太子様にも困ったものだ。まさか、ユーフィニア公爵令嬢を巡ってオーケスの第二王子と張り合うなんてねぇ……」


 悪役令嬢のユーフィニアだが、どうもヴァーリオの弟の第二王子だけでなく、ホープス王国の王太子とも繋がりがあったようだ。

これについては彼女に非があるのではなく、実は幼い頃に二人が出会っていた事に起因していたようだが。

転生ヒロインと攻略対象がざまぁされる物語において、悪役令嬢は真の主人公といえる。

つまり、ユーフィニア公爵令嬢こそが、この世界の真の主人公である為、色んな所にフラグが立っていたようだ。

その内人外の王とかも関わってくるのかもしれない。


「偉い方の事情なんて知らないけど、振り回されるのだけは勘弁して欲しいものね」


「まったくだね」


 苦笑するエレクト。


「ま、私達は私達で何時も通りにして行きましょう」


「あ、あ、待って待って。君はあんまり無理しちゃダメ。今日は大人しくしていなさい」


「あら? 私はまだ全然平気よ?」


「見ているこっちからすると、落ち着かないのです」


 そう言ってエレクトはピアの身体を優しく支えながら、椅子に座らせた。


「もー、別に病気じゃ無いんだけどなー」


「それでも、だよ。君はちょっと無理をし過ぎる所があるからね。少し退屈に思える位が丁度良いんだよ」


「はーい」


「はい。よろしい。では私は店に出て来るよ。……ちゃんと休んでなさいね?」


「もう、念を押さなくても大丈夫ですー」


「はは、じゃあ、行って来るね」


「いってらっしゃいませ、旦那様」


 そう言ってエレクトは店の方に出て行った。

少し過保護な所があるが、ピアを本当に大事に思ってくれる、良い旦那であった。

ピアは腹部にそっと手を当てる。

命の鼓動をそこに感じていた。

ありがとうございました。

評価を頂けると嬉しいです。

また、感想や誤字脱字報告もして頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] エレクトって名前がギャグなのかどうなのか…。 英語の意味で考えるとどうしても気になって、最後の妊娠報告で確信犯だったのかな?と思いました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ