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プロローグ

16作目になります。

ジャンルとか、いざ設定しようと思うと難しいですね。

 オーケス王国は乙女ゲーム『虹の音色と君と』の舞台だ。

タイトルの虹の通り、7人の攻略対象がおり、ヒロインがそれぞれの攻略対象と結ばれると、ハーレムルートが出現するという、良くある乙女ゲームである。

そのヒロインに彼女は転生した。

前世でそれなりにやり込んで、割と好きだったゲームのヒロインに転生した事を知った彼女は、有頂天だった。

負け犬みたいな前世と違い、ヒロインという勝ち組に転生したのが、余程嬉しかったのだろう。

一体誰と結ばれようか、そんな事ばかり考えていた。


 全ルートの攻略情報を知っているので、ハーレムルートも良いかも! などと思いながら、ゲームの舞台であるオーケス王立学園に彼女は降り立った。


「えーと、確か学園の裏の端っこに、王太子がいるのよねー」


 ゲームのジャケ絵の中心、メインヒーローであるヴァーリオ王太子。

金髪碧眼の美男子で、成績トップクラスでありながら下々にも気さくに接してくれる、正に理想の王子様キャラである。

割と癖の強めな攻略対象の中で、スタンダードな設定が逆に人気になったキャラである。

彼との出会いは、学園に慣れないヒロインが、ウッカリ人気の無い校舎裏に入ってしまった事から成る。


 王太子である彼が何故、そんな所に居たかというと、その場所は学園で指折りの人気者である彼が、ちょっとした息抜きをする隠れ家的な場所であるからだ。

彼にとっての秘密の場所に、ヒロインがピンポイントで侵入した結果、2人は出会う事になったのだった。


「誰よ? オメー」


 開口一番、チンピラ染みた台詞が、美しい金髪の貴公子の口から放たれた。


「は? ……え?! え!?」


 想定していた事と全く違う王太子の口調に、ヒロインは困惑する。


「だから、誰なんだよ? ったく、人がまったりタイムをタンノーしていたのによ……」


 『はー、ダリー』……などと言いながら、ヴァーリオはのっそりと起き上がる。

彼はさっきまで寝転んでいた。

ゲームでは木に寄り掛かりながら本を、優雅な雰囲気で読んでいるスチルだったのだが……。

全然違っていた為、ヒロインの思考が停止する。

ヴァーリオは頭をボリボリ掻きながら大欠伸をしている。


「で、マジで誰なん?」


 目の前の光景に頭痛がしそうなヒロインであったが、何とか気を取り直して自己紹介をする。


「し、失礼しました。私はシーワ男爵家のピア・シーワと申します」


 ヒロイン……ピアはちょっと前までは平民であったが、男爵家の令嬢である事が発覚し、シーワ男爵家に引き取られ、男爵家に淑女としてのマナーを叩き込まれている。

中々に大変だったが、最低限のマナーは修めることが出来ていた。

元平民の少女が、実は貴族の落とし胤であったというのは、乙女ゲームのお約束である。


 目の前でぎこちないカーテシーをする少女を目にしたヴァーリオは、そういえば貴族名鑑に元平民の男爵令嬢がいたなと、ボンヤリと思った。

以前に目にした記憶は彼に無いが、元平民の男爵令嬢と王太子が、人気の無い校舎裏で出会うというシチュエーションに、ヴァーリオはハッとする。


「何だ? もしかして、此処って乙女ゲーってヤツの世界なのか?」


 そうポツリと口にしたヴァーリオに、ピアは目を丸くする。


「え!? ……それって、もしかして!?」


 ピアの台詞に、ヴァーリオもピンと来た、という顔をした。


「あー、もしかして、アンタも?」


 確定である。


「ま、まさか、アナタも転生者!?」


 転生者の攻略対象とヒロイン、何の因果か出会ってしまう事になった。


「なーるほどねー、『虹の音色と君と』っつー乙女ゲームの世界ってか」


 変なタイトルだな、とヴァーリオは呟く。

お気に入りのゲームを馬鹿にされたようで少しカチンと来たが、同じ転生者とはいえ相手は王太子だ。

男爵令嬢である自分が粗相をする事は出来ないと、ピアは堪えた。


「あ、ワリー、ワリー。別にゲームを馬鹿にしたつもりはねーよ」


 ピアの雰囲気を察したか、ヴァーリオは軽く謝罪する。

それを受けて、ピアも寄せた眉根を元に戻した。


「すまんね。じゃあ、改めて自己紹介するか。俺はこっちではヴァーリオ・オーケスっつー名前だけど、前世は『竹本 海翔』っていうんだ」


 ヨロシクな、と前世名タケモト・カイトはそう言った。


「あ、私は前世では『多田野 広美』という名前でした」


 既に今世の名前は名乗ったので、前世の名であるタダノ・ヒロミを名乗る。


「OK。んじゃあ、悪いけどちょっとこの世界の事を教えてくれない? 代わりに俺の方からも知ってる事を話すからさ」


「……わかりました」


 こうしてピアは、ヴァーリオに自分の知る『虹の音色と君と』の情報を話した。


「なるほどね。まぁ、良くある恋愛ゲームっぽい感じだな。あんまやった事無いからそんなに分からんけど」


「まぁ、確かに普通に良くあるゲームでしたね」


「……そのゲームではエンディング後にこの国がどうなったか、というのは無いんだよな?」


「大体ヒロインと攻略対象が結ばれて目出度し目出度し、って感じですね」


「ふむ……そうなると、大分こっちとは違うなー」


「え?」


「えーとな、ピア嬢はこの世界何周目?」


「へ? え?」


 何周目……その言葉にピアは目を丸くする。


「どうやら、今回が初めてか。実はな、俺って今回で二周目なんよ」


「はぁッッッ?!」


「驚くのも無理ないがね。所謂、逆行? 強くてニューゲームって感じだな」


「そ、それってどういう……」


「まぁ、これから説明するよ……と言いたいが、そろそろ休み時間が無くなるな。放課後、また此処で落ち合うか」


 そう言ってヴァーリオはこの場を去って行った。

残されたピアは、呆然とするも予鈴が鳴ったことに気付き、慌てて教室に戻って行った。


 教室に戻ってからも、ヴァーリオの衝撃の発言に頭が混乱状態だった。

乙女ゲームのヒロインに転生したと思ったら、攻略対象の王太子も転生者で二周目という、訳の分からない状況なのでそれも無理は無かった。

ピアは授業内容はそっちのけで、ずっとその事に頭を悩ませていたのだった。

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