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俺の黒歴史が教科書に載ってる by勇者

作者: 雪音 蒼
掲載日:2025/08/28

 いつもと変わらない平凡な1日だった。

 いつものように愛しい妻と娘に見送られ仕事へ行き、調子に乗って暴れる若い竜をぶん殴ったり深夜のテンションそのままに邪神召喚の儀式をしていた黒魔導師に説教をしたり知り合いの錬金術師がノリと勢いで復活させた超古代兵器を海に沈めたりして仕事を終え、日が完全に落ちる前に家へと帰ってきた。

 家に帰るとまだ幼い娘が笑顔で出迎えてくれる。続いてエプロン姿の妻とお帰りのキスをして、シャワーを浴びにいく。仕事帰りで汗臭いからな。


 平和で、この上なく幸せな日常だ。かつて必死に戦い抜き、勝ち取ったこの平和がいつまでも続けば良いと思う。特に娘には、あの頃のような戦乱の時代を経験して欲しくない。


 着替えてさっぱりとしたら、食事と団欒だ。朝と夜は家族で一緒の食事を心掛けている。俺も妻も親がいない。正確には俺には父親だけいたが、記憶している限り家族らしい交流など皆無だった。独りでとる食事の味気無さを俺は知っていたし、彼女もそうだろう。


 各々が今日あった出来事を話す。

 俺は仕事での出来事や立ち寄った土地での話。妻は家や近所であった出来事や人の話。娘は学校での出来事や友達との話だ。


「今日のテストでね、わたしクラスで一番だったんだよ!」


 自慢げに大きな花丸のついたテスト用紙を見せる娘。可愛い。そして満点だ。やはり天才かもしれない……。


「おお、凄いな! さすがはリリだ!」


 頭を撫でてやれば照れ臭そうに笑う天才で天使な愛しい娘の姿に幸せを再度噛み締めながら、テスト用紙に目を通す。

 内容は、子供向けの簡単な教養のテストのようだった。近隣国の名前と守護聖獣の名前を線で結んだり、近代戦役史の有名な英雄の名前(俺にとっては殆どが顔見知りの見慣れた名前ばっかりだけど)に丸をつけたりといった微笑ましい内容だ。


「はー、最近はこんな勉強してるのかー……ん? んんんっ?」


 何の気なしに眺めていたのだが、そこで俺はある項目を二度見した。

 有名な英雄達の名前に混じって、他とは明らかに違う異彩を放つ名前が載っていたからだ。


 その名も、――†漆黒のダークナイト†。


 他の名前がほぼ本名、精々二つ名と共に書かれている程度なのに対しそいつだけはそんな称号とも二つ名ともしれない名だけが記されていた。ご丁寧に正式な表記の†まで付けて、だ。


「…………………………………………………。」


 身に覚えのありすぎるその名に押し黙る。

 何故、何故ここでこの名が出てくるのか。

 というかどこのどいつだこのテスト作りやがったのは。


「パパ、どうしたの? 変な顔してるよ。」

「あ、ああ。何でもないんだ。……そうだ、ちょっと、リリの教科書、パパにも見せてくれ。」

「うん? いいよー」


 そう言って渡された数冊の教科書から近代戦役史の教科書を選ぶ。子供向けのためだいぶざっくりとした内容だが、教養として知っておくべき戦役の流れや功績者が分かりやすく纏められている。

 中でも最も多くのページを割かれた『第8次降魔大戦~魔性と人類の終わりなき戦い~』の章の始めから目を通していく。


 見付けた。

 『エドリオ街紛争』の功績者の欄に、†漆黒のダークナイト†の名が記されている。

 後のページで詳細を記す、とされている。そのページを開く。


「っぶふっ!? ゴホッゲホッ!」

「え、パパだいじょうぶ!?」


 思わずむせた。文章だけでなく、そこには†漆黒のダークナイト†……その写真まで載っていたからだ。

 心配そうな表情で俺の顔を覗き込む心優しい娘の頭を撫でながら、そのページを改めて見る。


 小さな写真だが、そこには顔の上半分が隠れる黒い仮面を付け、黒いロングコートに黒い長剣を持った少年の姿が写っていた。

 それも、なんというか、小っ恥ずかしい、決めポーズの写真だ。

 なんだこれ。なんでこんなんが教科書に載ってんだよ。なんで載せようと思っちゃったんだよ。やめてくれよ。

 待てよ、これ確かエルド地域連合国群全域で使われてる教科書だよな。大陸全土に広まっちゃってんの、これ!?


 そして、写真の横にある説明文も、俺のメンタルを削りに来ていた。


『†漆黒のダークナイト†とは

 第8次降魔大戦の初期に各地で姿を現した謎の魔法戦士。主な貢献戦役はエドリオ街紛争、プルーナ狂竜事件、旧ゴワ・ダート制圧戦線など。

 常に素顔を仮面で隠し、芝居がかった独特な言動が特徴。

 一見無意味な謎のポーズを取ることが多いが、その戦闘能力の高さから何らかの呪術的な効果があるのではと囁かれている。

 特に「アビス・ザ・ダークネス・インフィニット・ブレイク」と呼ばれる彼独自の大魔法は未だ再現不能の固有魔法として魔導院にて研究中である。

 また、敵を倒した際の「深淵アビスなる闇に抱かれ、眠れ……。」という言葉は彼を象徴するものとして有名。』


 うあああああああああああああああああああああああ!!!

 やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!


 せっかくシャワーを浴びたのに、体にじっとりと嫌な汗がまとわりつく。

 この、この恥ずかしい写真が……全国に? 若気の至りな必殺技と決め台詞が……大陸全土に??

 つーか魔導院もクソ真面目に研究してんじゃねぇよ、マジでやめろくださいまじで。

 それ大魔法は大魔法だけどリソースの半分はカッコイイエフェクトに割いてるから威力はそこまででもないし名前にも意味はないんだよ!

 俺が羞恥心に震えていると、背後から妻が顔を出して俺の開いた教科書を覗きこんだ。


「あら、懐かしいですねぇ。そういえば、私達が初めて出会ったときもこの格好で…」

「うおああああああああああああああああああ!!!」


 咄嗟に妻の言葉を遮った。普段ならこんなことはしないが、この流れはまずい。妻はきっと俺の恥ずかしい過去の所業を独自の(箱入り)フィルターに通した状態で娘に語り聞かせる気だ。記憶の奥底に封印していた黒歴史を盛大に穿くり返される予感しかしなかった。


 「ちょっと、ちょっとだけ待っててくれパパはママと大切な話があるから、っな?」


 不思議そうな表情の娘に言い募りながら俺は妻の手を引いてリビングを出た。何よりもまずは妻の口止めをしなければならないのだ。

 俺は冷や汗をダラダラ流しながら何とか妻を言い包めた。†漆黒のダークナイト†は正体不明の謎の戦士、人知れず世界の平和を護る事こそが本懐なのでその正体は人に知られるわけにはいかないのだ、と。妻は訳知り顔で微笑み納得してくれた。

 危なかった……。これでひとまずは妻から真実が漏れることはおそらく無いだろう……。


 †漆黒のダークナイト†……あの恥ずかしい生物と俺が同一人物等という事実を、可愛い娘に知られるわけにはいかない……!




 俺はガキの頃、なんと言うか……自分の事を特別な存在だと思っていたアホだった。

 勉強も戦闘訓練もいつだって一番で、何をやっても他人より数段上手くできた。自分は選ばれた人間だと思っていた。

 実際俺は頭のおかしい父親に知らないうちにヤバい魔導実験とか手術とかされて人外に片足突っ込んでいたので、ある意味ではそれは正しかったと言えるかもしれない。

 ただ、俺は勉強は出来ても本質的にアホだったので、幼なじみのバカによってもたらされた数々のサブカルチャー……当時流行っていたマンガとかアニメとかゲームなんかに触発され、暗黒なる第二の自分を作り上げてしまったのである。


 それがーー†漆黒のダークナイト†。俺の悲壮なるブラックヒストリーである。あたまいたい。


 ダークヒーローってカッコいいじゃん? という発想でなんか黒っぽいロングコートとか指出しグローブとか曰くありげなシルバーアクセとか、果てには呪われてそうなダークな武具を集め始めたのが最初だった。俺を実験用モルモットとしか見ていなかった父親モドキが面白がって自由に使える金を無駄に与えてきたのも原因だ。とにかく身の丈に合わない経済力で当時の基準での“かっこいい装備”を買い集めていた。

 手に入れれば勿論使いたくなる。俺はひっそりと自室で試着した。鏡の前であらゆるカッコイイポーズを取ってニヤニヤしていた。親父の職場から包帯とか治癒陣術符パクッてきて怪我もないのに装着してみたり、只でさえ曰くありげな装備達の“それっぽい”設定を考えてはノートにしたためた。しっかり隠していたはずが親父とその助手のクズコンビがしっかりチェックして記録まで取ってやがった。一生の不覚である。勿論その事実が発覚した時に記録の全ては研究所ごと完膚無きまでに破壊したが。


 ある時、血の繋がったマッドでクレイジーな魔法学者が違法な人体実験に手を染めていたことが発覚しかけた。良心の呵責に耐えかねて非人道的な実験の数々を告発しようとしていた研究員が俺を研究所から逃がし、闇に葬られた辺りでようやく俺は自分の家が異常だということに気が付いた。

 というかその違法な人体実験をされていたモルモット筆頭が俺な訳だけど、最終的には反抗する俺を殺処分しようとしてくる追手を振り切って家出することになった。


 そして、自分の正体を隠さなきゃならないと考えた俺は……仮面をつけ孤独に闇を生きると覚悟したのだった。


 馬鹿……! 俺、ホント、馬鹿……!! なんで法的機関に駆け込んで保護してもらおうとか考えないんだよっ! 実は状況に酔ってたんだろ、なんか主人公みたいって! この、馬鹿っ!!


 不幸な事に当時の俺はその手の装備をたくさん持っていた。お気に入りの怪しい仮面を着け、見た目だけで選んだ呪われてそうな剣2本(どちらも別々のデザインでそれぞれに設定を考えてアレな名前まで付けていた。)を手に服も防具も全身黒ずくめ。端から見ればさぞかし怪しかっただろう。

 町を歩くときは


「俺に日の当たる場所は似合わない……」


 とか言って路地裏とかを好んで歩いていたから余り人目には付かなかったが、人通りの多い道を歩けば皆が2度見して、でも子供だからああ……(察し)みたいな生暖かい眼差しで見送ってくれるみたいな感じになっただろう。羞恥心で死ぬ。


 追手から身を隠しながらの逃避行だったが、それはそれとして俺は自由な旅をエンジョイしていた。

 なんか揉め事を見つければ積極的に悪そうな方を成敗して


「名乗る程の者じゃない……忘れろ。」


とか


「俺に関わるな……“組織”に消されたくなければな。」


 なんて言って立ち去る日々を送った俺。勿論組織とは親父の研究所の事である。

 お金が無くて討伐賞金目当てで魔物を狩っては、賞金申請手続きの書類の必要事項(氏名・年齢・住所等基本情報から未成年者は保護者連絡先等)をちゃんと書けと役場の事務の人に指摘されて


「俺は闇に生きる流浪の旅人……。」


 だの


「†漆黒のダークナイト†……俺を表す記号はそれだけさ。」


 とか言ってゴリ押しする迷惑なガキだった俺。

 特に理由もなく勝てそうな魔物の群に単身突っ込んでは脳内で自作のテーマソングを流しながら無双して


「クッ、封じられた古の力が疼くッ……!」

「やれやれ、俺の死に場所はここではなかったか……。」


 とか何とか言って気取った決めポーズをかましていた俺。

 特に意味もなく高い木の上や塔の上(不法侵入)に陣取り月を見上げながら黄昏て、ひとりでブツブツそれっぽいポエムを口ずさんで悦に浸っていた俺……。


 あ、ヤバい、思い出すだけでなんか脂汗出てきた。全身をかきむしりたくなる。なんつー痛いガキなんだ。頭おかしいだろ。恥っっっず!!


 しばらくそんな生き恥を無自覚に振り撒いていた俺はある時目が覚めるきっかけを得る。迷いこんだ森の奥で師匠に出会ったのだ。

 師匠は協調性に難がある以外は当時の俺が目指していた強い・クール・イケメンの三拍子を天然で兼ね備えた524歳独身エルフだったのだが、この出会いによって†漆黒のダークナイト†は封印された。

 と言うか初対面でイキった俺が人嫌いを拗らせた鬼畜ドSの師匠に完膚無きにまで叩きのめされて、伸び切っていた鼻っ柱と心を折られてなお†漆黒のダークナイト†の『クールで影のあるカッコいい俺』というキャラを保てなくなっただけなのだが。


 そして無鉄砲な子供の俺はいつかこの男を超えてみせるとヤケクソ気味に奮起する。その時こそ新生†漆黒のダークナイト†復活の時だとも。アホなのか。ああ、アホだったんだな……。

 クソゴミ扱いされながらも勝手に師匠の家に住み着いて弟子として食らいつき、事あるごとに勝負を挑んでは叩きのめされた。

 それから襲い来る実家の組織からの追手を蹴散らしたりクソ親父を黙らせる為に奴の研究所と熾烈な争いを繰り広げて行く内にいつしかワケありな仲間達が集まって、ついでに成り行きで魔物やら魔王やらまでぶっ飛ばす生活をしていたところ気付けば俺は『勇者』だの何だのと呼ばれるようになっていたと言うわけだ。


 まあとにかく、†漆黒のダークナイト†とは若き日の俺の忘れたい黒歴史であり、思い出せば身悶えするほど恥ずかしいので世界中の記憶から闇の彼方へ葬り去りたいこと請け合いなのだ。


 ……ああでも、†漆黒のダークナイト†やってて唯一良かったのはエドリオ街紛争で魔族の襲来を成り行きでブッ飛ばしてる時に妻と出会った事かな。魔族に拐われそうになってたのを助けたんだよな。

 好みドストライクの美少女だったから滅茶苦茶張り切ってカッコつけたんだよ。全力でクールを装っていた。

 妻は妻でお忍び巡礼の真っ最中の聖月教会の神子様だもんで、世界でもトップレベルに筋金入りの箱入り娘だったから俺の奇行にも純粋に対応してきたんだ。目をキラキラさせて素直に「†漆黒のダークナイト†様」って呼んでくれてたしな。


 あと……あの時はなんつーか、魔族の奴等ってみんな素で悪役ムーブしてくれるし反応も良いから、ピンチのヒロインを颯爽と現れたヒーローが救うみたいな流れが完璧にハマってて正直滅茶苦茶気持ち良かったんだよな……。

 だってあいつら


「そこまでだ!」

「む、何奴っ!?」


から始まって


「その娘を離してもらおう!」


って言ったら


「なにィ!? 人間風情が舐めた口をきくなァ! 目障りな小僧め、捻り潰してやる!」


って返してくれるし


「俺は✝漆黒のダークナイト✝……貴様を屠る男の名だ、魂に刻め!」


って名乗りを上げたら


「✝漆黒のダークナイト✝、だとぉ!? 死ぬのはお前の方だっ!」


 ってオーバーリアクションで復唱してくれるし、倒される時は


「グワアアア! この俺がァ! 人間ごときにイィィ!!」


 って叫びながら爆散してくれるのだ。

 そういう作法なのかなってレベルでみんなそんな感じなので魔族の文化的なアレなんじゃなかろうか。多分。

 それも相まって俺達の馴れ初めは中々に劇的な運命の出会いだったのだ。


 その後も数回巡礼中の妻と再会する機会があって、その度に少しづつ距離を縮めて行ったのだ。……†漆黒のダークナイト†封印後に素顔で出会った時、即座に生体魔力で識別してきて「貴方はまさか……†漆黒のダークナイト†様!?」って速攻で身バレして羞恥心で死にたくなった思い出もあるけどな。

 極めつけはそのやり取りに好奇心を刺激された賢者のヤローに根掘り葉掘り尋問されて最終的には黒歴史をゲロらざる負えなくなって「えええっwwwwリフさんwwwwそんな事してたんですかぁwwww」とクッソ馬鹿にされたのだ。実にクソ生意気なガキである。


 そこまで思い出してはたと気が付いた。教科書の一番最後のページを開く。奥付に印刷された発行元は『エラン・ワイト賢人協会』。賢者のヤローの職場であった。





「ヴォ〜イトくぅぅぅん! あっそびましょぉぉぉ! ッオラぁっ!!」


 破砕魔法を重ねがけした拳で力任せに閉鎖結界をブチ壊し、堂々と正面からエラン・ワイト賢人協会に殴り込み、もとい、旧知の仲である賢者のヤローを訪ねてお邪魔した。

 スタッフは慣れたもので、悲鳴をあげながら素早く退避していく。


「ちょっと室長ー!! また勇者様が襲撃に来たんですけど今度は何やったんですかー!?」

「素手で結界破りとかドラゴンかあの勇者は!?」


 職員がバタバタと精霊樹の巨木の虚を利用した協会本部事務室のバックヤードへと引っ込んだのを暫く待つと、草木染の暖簾の奥からひょっこりと眼鏡の男が顔を出した。


「何なんですか、リフさん? おれは貴方と違って忙しいんですけど。」

「嘘つけテメー、知ってんだぞ。毎日毎日部屋に引きこもって本読んでるだけじゃねーか。趣味だろそれ。ニートか。」

「違いますー。魔導書の管理は賢者の立派な職務ですー。リフさんこそフリーランスのトラブルシューティングって何なんですか、それこそ趣味じゃないですか。」

「趣味じゃねーわ。世界の平和のために邪悪の芽を摘んでんだよ。変な事件にうちのセレやリリが巻き込まれたらどーする。」


 かつて小生意気なクソガキだったこいつも今では歴代最年少の賢者だなんだと担ぎ上げられている。が、その実情はタダの引きこもりである。


「それより聞きたいんだが、この写真の出所はテメーだな?」


 教科書の件のページを眼前に突き付けてやれば、賢者のヤローはぷはっと吹き出した。


「アハハっ、これ、よく撮れてますよね! 当時のハンソルト地方新聞の記事に載ってた奴なんですけど、面白かったのでつい取り寄せて永樹図書館(データバンク)に入れちゃいました!」

「やっぱりテメェかあぁぁぁぁっ!!」


 衝動的に胸倉を掴んでガタガタ言わせようと伸ばした手はあっさりと魔法で弾かれた。チッ、浅かったか。

 ケラケラ能天気に笑ってる様に見えて案外しっかり警戒していたらしい賢者のヤローは、俺の得意な間合いを避けて距離を取っている。これでも降魔大戦を共に戦ったパーティメンバーだ。互いの手の内は知り尽くしている。

 俺は息を吐き出して構えを解く。別に今日はコイツを殴りに来たわけではないのだ。

 へえ、と賢者のヤローが興味深気に目を丸くした。


「おや、どうしたんですか。てっきりおれを絞めに来たんだと思ってましたが。」

「自覚があるんなら大人しく殴られてくれても良いんだぜ?」

「お断りします。おれはそういう野蛮なの嫌いなので。」


 殴りたいこの笑顔。まあ良い、余裕でいられるのも今のうちだ。

 俺は預かり物の薄い冊子が何冊も詰まった鞄を取り出す。生暖かい眼差しでそれを賢者のヤローに押し付けた。


「今日はデータの持ち込みだ。エラン・ワイト賢人協会にこの本を寄贈する。」

「へえ、珍しいですね。リフさんが持ち込みなんて……一体何の、」


 鞄から冊子を取り出した賢者のヤローはその体勢のまま固まった。俺はなるべく爽やかな笑顔でその『薄い本』の題名を読み上げてやる。


「『魔法少年マジカル☆ヴォイトくん』の全巻セットだ。ちょっと前に完結したからってお前のねーちゃんが送りつけてきたぞ。」


 『魔法少年マジカル☆ヴォイトくん』は、聖陽教会の前神子様が自分の実弟をモデルに描いた15禁エロ同人マンガシリーズである……。曲がりなりにも元聖職者なのに心の闇深すぎませんかね。

 しかも主人公のショタとエロ関係のチョメチョメする相手キャラ達はみんな実在する知り合いの男共で、俺がモデルになったキャラも存在する。本当に、あの元神子様は何を考えているのか。挙げ句の果てには自分の夫が元ネタのキャラまで相手役に登場させてやがる。どういう精神状態で描いたんだ、本当に。

 見えない場所で楽しむだけなら個人の趣味だ。勝手にやってくれても構わないのだが、如何せんあの腐れ元神子はわざわざ俺に自作のエロ同人を送り付けてきやがる。立派なセクハラだ。

 何が『今はヴォイト総受けなれど元々はヴォイリフヴォイ同軸リバの民だったのでここは別枠で推してる。どうか私の夢を理解してほしい。』だ。意味わかんねーよ。悪夢であることだけは確かだろうけどな!


 自己保存系の凶悪な祝福(呪い)が掛かっていたため処分もできず、解呪の為に多大な精神ダメージを受けながら検閲するも歯が立たず。神子としての技能をこんなところに使ってんじゃねーよ。白の神官長が泣くぞ……。

 娘の教育に悪いどころか純粋さを失っていない妻にも大変毒となるので厳重に封印していたのだが、この度遺憾ながら日の目を見る事になったのだ。


「なっ…………なん、な……っな……??」


 嘘でしょ? と悪い冗談を聞いたとでも言わんばかりの表情で手元のナマモノと俺の顔を見合わせる哀れな賢者。涙目でその本の表紙を飾る半裸の少年は悲しいほどにその男の面影を映していた。


「さらに、これが一部の変た……ファンに人気らしくてな。著者主導で自主制作アニメにするって噂が」

「姉さぁぁぁぁんんんん!!?? 何やってんだあの人はあぁぁぁぁぁっっ!!!???」


 頭を抱えてその場に崩折れる哀れな賢者。その姿を見下ろして俺は追い打ちをかける。


「同情はするが、あらゆる情報の蒐集がお宅等の仕事だろ? 遠慮なく保存してくれや。」

「な、なんてものを……なんてものを持ち込みやがって!!!」


 そう、世界のありとあらゆる情報を蒐集・記録し保存するのがエラン・ワイト賢人協会の存在意義。内容の如何に関わらず、集まった情報は協会自慢のデータベースに永久保存されるのが決まりとなっている。

 例え賢者と言えど、持ち込まれた情報を握り潰して闇に葬るなど、あってはならない。


「リフさんの変態! 親馬鹿! 厨二病! 深淵なる闇に抱かれて眠れ!!」

「おいやめろ。」


 負け惜しみの暴言に†漆黒のダークナイト†を混ぜんな。


「ヒデェ内容だよな、わかるぜ。コレをお前に直接見せるのは俺だって心苦しいんだ。でもな、お前の預かり知らぬところで、例えばお前のいない時にお前の部下達に、とか……ここじゃない別の協会支部に持って行くのは躊躇われたんだ。センシティブな情報の取り扱いは、気を付けたいだろ? なあ?」


 頭を抱えて項垂れる賢者のヤローに俺は努めて優しく話し掛ける。励ますように肩を叩けば力無くもはたき落とされた。解せぬ。

 賢者のヤローが少し顔を上げる。少し長い前髪の合間から眼鏡越しの眼がギロリとこちらを睨みつけていた。賢者のヤローは忌々しげに舌打ちをして立ち上がった。


「ええ、ええ、わかりましたよ。このナマモノを閲覧不可の禁忌情報として封印処理するついでにリフさんの黒歴史も闇に葬れって言いたいんでしょう。やってやりますよ。……クソっ、完全な藪蛇だった。」


 コイツとしては俺を弄り倒すネタとして†漆黒のダークナイト†情報を充実させたのだろうが……どうしてコイツは昔から何かと俺に突っかかってくるのか。まあいい、これで大陸共通教科書から俺の黒歴史は姿を消すだろう。

 賢者は禁忌な薄い本に簡易な封印魔法を掛けたあと家に帰ろうとする俺と連れ立って外へ出た。


「どうした、ついてくんなよ。気持ち悪いな。」

「ハア? ついてきたわけじゃねーですけど? おれはこれから姉さんの邪悪な企みを阻止しに行くんです。リフさんに構ってる暇はありませんよ。」

「そうか……頑張れよ。」


 他人事だと思って……とブツクサ悪態をつきながら手をヒラヒラと振ったあとに賢者のヤローは転移魔法を無詠唱起動して姿を消した。俺は通りがかりのドラゴンをヒッチハイクして帰宅した。




 帰宅した俺を出迎えたのは†漆黒のダークナイト†だった。

 正確にはかわいい娘とその幼なじみ……非常に見覚えのある黒い仮面を着けた少女が木剣を振り回して大見得を切っていたのだ。


「『ふっ……闇の眷族達よ、貴様らに教えてやろう。真なる闇、漆黒に生きる我が力を!』 ……どう、カッコイイかな!?」

「うーん、ルカがやるとやっぱりちょっと間抜けかも。」

「えー?」


 扉を開けた体勢のまま固まった俺を他所に、娘達の無情な『†漆黒のダークナイト†ごっこ』は続く。


「じゃあ……。『俺の前に立ちはだかるモノは斬る……漆黒の深淵に触れんとしたこと、後悔するがいい……!』」

「さっきと一人称違うけど大丈夫?」

「うん、なんか我の時と俺の時があるみたい。」

「そうなんだ。」


 無自覚で俺の精神をゴリゴリ削り取っていく幼なじみちゃんの手には黒く重厚なデザインの冊子があり、そのタイトルは金押しで『深淵なる闇 漆黒の言霊集』と書かれている。

 誰だ、そんなふざけた本を出した奴は。賢者のヤローか!? 違う、あいつならあんな本が出来上がったら嬉々として俺に見せに来る。俺が羞恥でもだえ苦しむ姿を見る為に、必ず対面でだ!


「あ! パパおかえりなさい!」

「おじさん、こんにちわー! お邪魔してまーす!」


 娘達が俺に気付いて笑顔を向けてくる。


「ああ、た…だいま。えー、今日はなんか、変わった遊びしてるなァ。その仮面? 何処から持ってきたんだい?」

「これね、エフィお兄さんのお家にあったの! ルカが気に入ったから貰ってきちゃった!」


 師匠の家にっ!? クソッ! そういえば確かに捨てた記憶はねぇな!! 置きっぱなしだったのかっ!!

 師匠は俺がガキの頃は人嫌いのクソ鬼畜横暴ドSエルフ野郎だったが俺の娘とその友達には妙に優しい。孫ができて丸くなったお爺ちゃんかな?

 師匠(おじいちゃん)、生まれたばかりの娘を抱っこさせるとガッチガチに動けなくなってたのマジで一生笑える。その後も下手に触ったら死ぬんじゃないかって笑顔のプリティベビーに顔をバンバン叩かれても髪引っ張られてもされるがままに耐えてたの腹が捩れるほど面白かった。

 俺がガキの頃は容赦無くボコボコにしてきたのにな。まあ押しかけ弟子として事あるごとにガチめの奇襲仕掛けてた俺も俺だけど。

 うちの娘は天使以上に天使なので流石の師匠も大切に扱わざるおえないのは自然の摂理……。それはそう。仕方無いな。

 そんなわけで普段から娘は師匠の家に気軽に遊びに行くのである。友達を連れて師匠の住んでる森を探検する事も多く、最近は子供達の放課後の溜まり場のひとつになっているらしかった。


 ……仮面だけじゃない。剣もコートもアクセサリーも衣装一式が師匠の家の何処かにある。子供達に見つかる前に回収して処分しなければ。


「エフィお兄さんがねぇ、パパが子供の頃に遊んでたおもちゃだから好きに遊んでいいって言ってたよ!」

「他にもカッコイイ剣とかアミュレットとかコートなんかもあったんだよ! でも剣はまだ危ないからこっちにしなさいって、これくれたんだ!」


 もう全部見付かってるゥ!? おもちゃ……まあおもちゃだけどォ!!

 そして幼なじみちゃんは素質があるな!? 将来俺みたいに黒歴史を築いてしまいそうで心配だよ!


 無邪気に目を輝かせた幼なじみちゃんは身に覚えのある決めポーズをとった。フフフ……と暗黒微笑をキメながら言う。


「おじさんも……漆黒に魅入られし同志だったんだね……!」


 他所様の娘にこう言ってはなんだが、幼なじみちゃんは……ちょっとその……アでホの子なので、俺のことをかつて†漆黒のダークナイト†ごっこに興じた仲間だと思っているらしい。なんと応えればいいか決めあぐねていると、娘が首を傾げた。


「あれ? パパが子供の頃っていつ? †漆黒のダークナイト†さんが活動してたのってパパは何歳の頃かな……?」

「あー、あー! そうなんだよ! 懐かしいなあ俺も昔†漆黒のダークナイト†ごっこしてたんだよなあ! 流行ってたんだ! みんなやってたよ! みんな、な!」


 嘘である。しかしそこに気付くとはやはり天才か。

 とにかく仮面の出処はわかった。あとは漆黒に魅入られてしまった幼なじみちゃんが抱える黒い本だ。場合によっては何とか言い包めて本を没収し闇に葬らなければならなくなる。面倒だがまた賢者のヤローに閲覧封印をさせるべきか……。


「リリちゃん、クッキーが焼けましたよ。」


 そこにエプロンを着けた妻が香ばしいバターの香りと共にキッチンから出て来た。「やったぁ!」と娘達が歓声を上げてキッチンに駆け込んで行った。


「ただいま、セレ。」

「お帰りなさい、リフ。」


 妻に挨拶とお帰りのキスをする。ケーキクーラーに並べられたクッキーに手を伸ばして「あちちっ」「おいしそう!」などと笑い合う娘達を微笑ましく見守りながら、冷静に黒歴史隠蔽計画を立てた。

 目の前に置いて行かれた仮面と本を一刻も早く回収のち処分したいのは山々だが、今これらを勝手に闇に葬ろうとするのは悪手だ。下手に隠して遠ざけようとすれば余計に興味を持たれる。賢者のヤローの時の二の鉄は踏まないぞ……。

 娘達が自然に興味を失い別の遊びに夢中になった頃にさり気なく回収して処分する。それしかない。


 娘達の気を逸らすために別の健全なコンテンツを何かしら勧めようと画策していると、妻が慈しむような表情で俺の黒歴史書とでも言うべきブツを手に取った。そのまま何処か期待を込めた目をキラキラと輝かせ、その表紙を俺に掲げて見せる。


「どう……ですか?」

「……………………………………………………。」


 小首を傾げて小さく訊いてくる妻に、俺は押し黙った。

 あー……、そういうアレね。うんうん。察しましたよ。うん。理解した。……マジかよ。


「…………。愛を感じるぜ。」


 俺はそう絞り出すように答えた。妻は照れてはにかんだ。かわいい。


「いつの間にそんなしっかりとした本を作ったんだい?」

「ヴィヴィエッタちゃんが趣味で漫画を描いているそうなのですが、実は先日貴女も描いてみないかってお誘いをいただきまして。でも私は絵を描くのは得意ではないので……。」


 あの腐れ元神子ッ! セレに何を吹き込もうとしている!? まさかあのナマモノを見せたりはしてねーだろうな!?


「絵ではなくとも好きなモノを表現し伝え残す事が大切なのよって。良い印刷所の伝手があるから試しに一冊作ってみましょうと言ってくれたので、作ってみたんです。……自信作ですよ?」


 役目を終えた神子は教会から結構な額の年金が出る。それは過度な贅沢をしなければ働かなくとも余裕のある生活ができる程度のものであり、普段の妻は趣味の菜園の世話やそこの収穫物で作る料理の研究等をして生活している。新しい趣味がひとつふたつ増えたところで生活の彩りになることはあっても負担になることは無いだろう。

 他には家事なんかも一手に引き受けてくれている。そのあたりは人を雇うことも勧めたのだが、どうも妻は菜園を含めた我が家を自分の理想の状態にする事も趣味の一環となっているらしく他人の手を入れるのを嫌がるのだ。

 神子現役時代は衣食住から髪型に細々した身の回りの物など全てが教会によって決められていて自由も娯楽も知らずに育ったらしいので、その反動かも知れない。

 妻のいた聖月教会と対になる聖陽教会にいた腐れ元神子も、似たような環境で神子業をやっていたため昔は浮世離れした清廉潔白な箱入り娘だった。しかし何処からか偏った同性愛概念を吸収してしまった結果、幼い頃に離れ離れになった弟への愛情を変な具合に拗らせてしまった。そして出来上がったのが()()である。

 あのヤンデレ聖騎士と一緒になって少しは落ち着くかと思っていた頃もあったんだけどなー……。この間一緒に飲んだ時に聞いた話によると、どうも最近はアシスタント扱いされてて野郎の裸の周りに花を描いたり全裸でいかがわしいポーズをとらせたりとやりたい放題されているらしい。

 「ヴィー様の為ならオレの尊厳のひとつやふたつ喜んで捧げます」なんて腐れ元神子を庇って魔竜に片腕食い千切られた時と同じガンギマリ顔で言われても困るんだわ。普通に引くよ。


 それはともかく。

 俺は妻から受け取った冊子にざっと目を通す。何か変な事言ってなかったよな俺……。いや、基本✝漆黒のダークナイト✝は変な事しか言ってないけど。


『我は闇に生き夜と同化する……漆黒の観測者、さながらナイトウォーカー、いや、カオスゲイザーと言ったところか。』(どっちだよ)

『君の瞳……俺の中の“深淵”が共鳴している……これはそう、運命だ。』(お前は何を言っているんだ)

『聞こえる……深淵の囁きが……俺を呼んでいる。良いだろう。共に奈落へ堕ちようではないか。』(道連れやめろ)

『フッ……君が笑うたびに、俺の中の“封印”が軋むんだ。』(封印なんて無い)

『眠りし万象を縛るは、輪廻の鎖。滅びを拒む愚者よ、いまその楔を解き放て。叫べ、深淵の名を――響け、終焉の鼓動! 星を呑み、時を裂き、世界を零へと還す災厄よ、我が血を贄として、その咆哮を解き放て――顕現せよ、絶望の理! 《アビス・ザ・ダークネス・インフィニット・ブレイク》!!』(ちょっと違うバージョンの詠唱が7種類くらい載ってるぞ!)

『この一呪に俺の全てを、これですべてが終わる。俺は止まらない――深淵の最果てに堕ちる覚悟はできている! 星々よ、崩れろ! 理よ、砕けろ! 禍津凶星を消却せよ!! 俺は世界よりも、君を選ぶ!《インフィニット・ラブ・カタストロフィ》!!』(魔王背景に詠唱告白すんな)


 羞恥で死にそう。なんの辱めなんだこれは。あまり意味の無い詠唱が何種類もある。深淵言い過ぎだろ大好きか。意味とかゲシュタルト崩壊してない?

 しかも妻目線だからというのもあって必死にカッコつけて口説こうとしているセリフが散見されて大変酷い……酷……おあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっ!!! キッッッツッッッ!!!

 やめろやめろやめろ!! 詠唱告白!!? 何考えてんだ戦闘中に!! なんでよりにもよって魔王戦真っ只中で告白してんだ! いや覚えてるけど!! 聖月結界の要になってた妻が結界ごと圧殺されそうだったから必死だったんだよ当時は!!! 妻が「たとえこの命尽きようとも世界を、貴方の生きる大地を守ってみせる!」って自己犠牲キメててヤバかったんだよ!!! 小っ恥ずかしいアホみたいな詠唱だけど全力で火力特化のガチ強殲滅魔法作ったんだよ!!!! ギリ魔王消し飛ばせたけどこっちも反動で死ぬかと思ったよ!!!

 いやでもやっぱり詠唱のドサクサに告白すんな!!! そもそも魔王戦の時は✝漆黒のダークナイト✝じゃなかっただろ!!! 仮面も着けずに何言ってんだ俺ー!?

 そしてなによりも!!!


「セレ。」

「はい、なんでしょう?」

「……最後のこれは、俺がセレのためだけに紡いだ魔法だから。セレ以外には見せたくない。」

「…………!」


 そういう事になった。

 俺達の愛の言霊集は妻の寝室の本棚に大切に仕舞われた。

 流れで妻とイチャついていたところ娘達からは大変に冷やかされたが、こればっかりは譲れない。

 黒歴史だが、思い出すたび滅茶苦茶に恥ずかしいが、夫婦の大切な思い出でもあるのだ。




 しばらく後、娘の教科書から✝漆黒のダークナイト✝は姿を消した。引きこもりでも賢者のヤローはちゃんと仕事をしたらしい。

 賢者のヤローと言えば、あの腐れ元神子の自主制作アニメの話は頓挫したそうだ。姉弟喧嘩で仮スタジオが更地になったからで、今度はこっそり水面下で制作を模索するらしい。いい加減懲りろ。

 子供達も新しい娯楽に興味が移り、仮面他黒歴史の痕跡を回収したは良いものの、数年後に少し困った事になる。


「ボクは真なる闇を受け継ぎし漆黒の後継者……✝漆黒の破壊者(ダーク・カタストロフ)✝。ああ、今日も深淵の囁きが聞こえる……。」


 幼なじみちゃんはその魂の内にずっと漆黒の理を秘め続けていたらしい。ある日真なる闇に覚醒してしまった。

 なんということだ……一人称まで変わってしまって……。

 そんなに包帯や、眼帯まで着けて……病気も怪我も無縁の健康優良児なのに……。

 ✝漆黒のダークナイト()✝のせい、だよなぁ……。


「奈落への道程を共に征かん……。同胞達が待っている……。」

「パパー、学校の友達と遊びに行ってくるねー! もうみんな待ってるみたいだから急がなきゃ!」

「お、おう。気を付けてな。」

「行ってきまーす!」

「ふはははは! 我が導きに従うが良い!」


 今日も可愛い娘と、バサッと黒いロングコートを翻し先導する幼なじみちゃんの背を見送って、せめて彼女が穏やかに光の世界へ帰還できるよう祈った。

【勇者パーティ】

【星討勇者レグリフ】

 禍津凶星より飛来した魔王を滅ぼし第8次降魔大戦を終結させた勇者。正体を隠して活動していた秘密の過去がある。

【聖月神子セレーナ】

 聖月教会の神子。禍津凶星より飛来する魔物達から大地を護る結界の要。魔王が滅ぼされたのでお役御免になった。

【樹録賢者ヴォイト】

魔物に虐殺された賢人の一族の生き残り。一族の秘宝である永樹図書館の管理権限を受け継いでいる。ヴィヴィエッタの弟。

【古種導師エフェストート】

第5次降魔大戦で滅んだとされるハイエルフの隠者。古の魔術と剣技を勇者に授けた。

【聖陽神子ヴィヴィエッタ】

聖陽教会の神子。禍津凶星から飛来する魔物達を滅ぼす浄化殲滅術式の要。魔王が滅ぼされたのでお役御免になった。ヴォイトの姉。

【聖陽騎士クライツ】

聖陽教会の聖騎士。聖陽神子を護る剣にして盾。何においても神子を優先する狂信者。


【子供達】

【祝福の子リリムフェリア】

レグリフとセレーナの愛娘。両親から受け継いだ強大な魔力と魔法適性で将来を期待されているが、憧れのハイエルフお兄さんのお嫁さんになる事にしか興味が無い。

【✝漆黒の破壊者✝ルカリフィム】

魔族の残党に故郷を滅ぼされた少女。特殊な魔力特性をち、漆黒の後継者として覚醒した。かつてとある研究所で闇に葬られたがなんやかんや生き残った元研究員に保護されている。

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