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秋雨

 投降土曜日と思っていましたが、時間が空いたので投降しちゃいます。

 

 3台のコンテナに捕らわれていた30人のエルフ族の子供を解放した。

 しかし、彼らの反応は薄い。

 彼らの宗教が原因だ、一方的な暴力さえ受け入れてしまう、死んでも生きても”ああ、そうか”としか思わない。

 元エルフ族だったメイも知っている宗教だ。


 エルフの子供は地の底の神に向かって手を合わせて祈り始める。

 「神よ、救世主をつかわしてくださったことに感謝いたします」

 全員が手を合わせる。

 「やめなさい、祈るんじゃない、あなたたちを助けたのは私、人間の私、神じゃない」

 「お姉さんは神様の使徒様じゃないの?」

 幼いエルフがメイを見上げる。

 「違う、神様なんていない、信用できるのはこの世に存在するものだけ、架空の偶像ぐうぞうに命を捧げるなんて意味がないわ」

 「天国はないの?」

 「天国に行く資格があるのは必死

に生きた者だけよ、黙って命を差し出しても、その先に何もありはしない」

 「年長者!よく聞いて、オーガはまた来る、みんなを連れて都に逃げて」


 エルフの子供たちは荷馬車2台に分乗させる、残り1台にヒュドラ達兵士の甲冑や剣などの装備を積む。

 ヒュドラの懐を探ると金を持っていた、年長者に預ける、うまくできれば新しい暮らしの足しにはなるだろう。


 装備を乗せた荷馬車を連れてタタラ山にある武器屋に向かう。

 ここからは5日もかかるが、ヒュドラたちに使った弓は曲がってしまい再使用出来ない、一度溶かして鋳造ちゅうぞうし直おさなければならない、装備の補充が必要だ。

 メイが使用する武器は独創的な一品物だ、作成者は偏屈へんくつな人間で医師だったメイの父親の友人だった。

 メイがイシスであることを知る唯一ゆいつの人間であり、本音で話せる⦅友人⦆だ。


 武器屋の工房はタタラ山の森深くに、ぽつんと一軒だけで店を構えていた。

 メイにとっては半月ぶりの帰宅になる、引いてきた荷馬車を裏に回す。

 

 屋根のある馬小屋にエルーを入れて草と水を入れておく。

 首筋をでてあげる。

 「お疲れ様、エルー」

 ヒュドラの甲冑を手にして店の扉を開ける。


 「帰ったわ、宗一郎」

 巨大な工作台の上に試作品やら工具やらを盛大に広げて、背中を丸めて作業に没頭ぼっとうしていた禿はげの丸眼鏡の男が、メイの声に振り向くと、ニヤッと笑う。

 「帰ったか、メイ」

 

 散らかった作業台にヒュドラの鎧をドカンと置く。

 「思わぬお土産みやげ付きよ」

 「んんー、これは、これは、オーガの鎧じゃあないか、それも結構位の高い物だな」

 「さすがね、武器を作って50年の変態親父」

 「マニアといってほしいね、年のことを言うならイシスの方とは同い年じゃあないか」

 「レディに年の事を言うとモテないわよ」

 「ふん、なにお今更いまさらってやつだな、よっと」


 鎧の細部まで顔を近づけてのぞき込む。

 「くっさ、どうしてオーガはこうも体臭が強いのかねえ」

 「こりゃあ驚いた、軽銀合金(ジェラルミン)だ、こんなの王族ぐらい……」

 「見つけたのか!?」


 「偶然ぐうぜん、第5王子のヒュドラ坊やを見つけちゃったの」

 「殺ったのか」

 「もちろん、復讐第一号完遂よ、有益な情報も多数頂いたし」

 「そうか……」

 

 少し葛藤かっとうを含んで考え込むように髭の伸びた顎髭あごひげさする。

 「メイには悪いとは思っているわ」

 「いや、そうじゃあないんだ……」

 「もっと喜んでくれると思ってた」

 

 「何人いたんだ?」

 「10人、9人はコンパウンドボウで、ヒュドラには戦槌を使ったわ」

 「盾役はいなかったのだな」

 「ええ、いなかったわ」

 「運が良かったな、盾があったら返り討ちになっていたかもしれん」

 「今の弾頭では盾を破壊しきれない、多勢で攻められたらお手上げになる」

 「……」


 そのとおりだ、私も気付いてはいた。

 まだ私のイージスは完璧じゃない。


 「アイデアが無いわけじゃないが、手っ取り早いのは仲間を作ることなのだが」

 「だめ、それは出来ない、私怨しえんの復讐に誰かを巻き込めない」

 「ヘリオス主従長さんの方はどうだ?なにか情報はあったか」

 「捕まってはいないことは確かね」

 「ヒュドラに感応したのたせな」

 「まあいい、鎧は何着あるのだ?」

 「全員分持って帰ってきたわ、10人分よ」

 「軽くて強度のある矢が作れる、その分火薬を増やせるな」


 ヘリオス主従長、オーガ族と人間のハーフ。

 エルフ族とオーガ族の間にはハーフは生まれないようだ、だが人間との間にはエルフもオーガも混血がまれに生まれる。

 身長190㎝はオーガ族としては小柄だ、腕力最優先の社会では虐げられていた。

私がイシスであったころ、あの冥界の城の中で唯一の味方だった男、自分の命をけて逃がしてくれた。

私がこうして生きていることは知らない。

きっと落胆らくたんしているだろう、知らせてあげたい、ここで生きていると。

無駄じゃなかったと。


「ヘリオスならどうするかな」

「ワンドロップ(混血)のヘリオスか、俺も会ってみたいな」

「お前はイシスでもありメイでもある、あまり無茶はしないでくれ」

「わかってる」

「そうだな、エンパスのお前にはどう思っているか伝わっちまう」

「もっとたよってくれていいのだぜ、この老いぼれでも多少は役に立つぞ」

「あら、あなたが老いぼれなら、私もおばあちゃんね」

「これは失礼」

「それに、宗一郎がいなかったら私は今ここにいない、恩人よ」

「当然のことをしたまでさ」


仇討あだうち第一号だ、献杯けんぱいしよう、とっておきがあるんだ」

「あら、だめよ、私17才だもの」


メイの帰還きかんを待っていたかのように外は大粒の雨が降り出した。

雨に叩かれた枯れ葉が落ちる。

神などいないといったメイに、何かが味方するように荷馬車のわだち痕跡こんせきを洗い流していく。


読了ありがとうございました。

今日夜にもう一話UPします。

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