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顔だけは良い妹が何故かバーチャルアイドルをやっているらしい  作者: 光川
現れない幽霊編

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教えて!エリオットさまの100のこと! part2


「第五問、エリオットが最近嬉しかったことは?」


 何だろう。


「レーきゅん、なにかある?」

「トネリコさん、悪魔の人がこっち見てきます」

「見るくらいは良いじゃんっ」

「答えは自分で考えてくださいねー」


 妹が最近嬉しかった事ってなんだろう、錦糸卵作れるようになった事かな……。これは間違えても良さそうな問題だ。


『FPSでキルリーダーになった』


 とタブレットに記入し送信。


「答えが出揃いました。レーさん、FPSのキルリーダー。ユズリハさん、お兄ちゃんとサイクリング。マリリさん、レーと一緒に遊んだ。ナツさん、お兄さんと遊んだ。では答えを聞いてみましょうっ」


『ちょっとマネージャー。このデコポンじゃまなんだけど、くっつかな……あ。ええと、第五問の答えね。正解は、レーと自転車で出かけたことでした』


 パズルゲームで遊んでたな……。


「お、正解ゲットっす」

「ユズリハさん2ポイント目獲得でナツさんと並びました」

「まーこのくらいはイケるっすね、あ」

「どうしましたユズリハさん?」

「い、いや。中学生ファンの夢を壊す可能性があったことを思い出したもので」

「あ。あー、いえいえ勝負はこれからですから、不正は無しでナツさんの望みはナツさんに勝ち取って頂きましょう」


 これ、二人とも八百長クイズ大会だという事を忘れていたな……。


「続きまして第六問.エリオットが好きな寿司のネタはなに」


 甘エビ。


 答えは分かるけれど、ここは間違えても不自然では――。


『もしもし、エリだけどー。ちょっと言い忘れていたことがありました』 


妹が出番でもないのに突然モニターに映る。


「エリさん、どうしました?」

『むきりょく試合をしそーな兄が一人いるので、ここで副賞についてお伝えします』


 副賞……?


『これもゲームを盛り上げるためです。まずナツという人』

『う、うんっ』

『エリとお喋りの他に、かくしゅグッズとサインをご自宅の方にプレゼントします。がんばるように』

『え、あ、はいっ』


 知らない展開だ。


『続いてママ、ユズママはそうだなぁ。最新ペンタブと……、締め切り延長チケット』


「ペンタブ……延長?」


 まずい。


『で、悪魔のひと』

「わたしー? そんな単純な女じゃ無い……え、待ってなにその写真っ! おいっ、もっとモニターに近づけ――いいや、マリリが近づくっ」


 マリリがモニターに駆け寄る。


『この前のリオネット兄妹のひょーばんが良くて、よくにかられたスタッフがレーのグッズも勝手に作っちゃいましょうともりあがって。資料用にエリが家から持ってきたレーが小さい頃の写真。それをあげようかなって』


「うおおおおおおッ少年幼年期っ絶対優勝しますぅううううう!」


 あーあ。


『そしてレー君。これなーんだ』


 妹が透明な袋に入ったTシャツらしきものを持つ。

 いやいや作戦がある以上、僕はそんな服なんかじゃ――あれ。


『レーがグレゴリーのオールデイジャパンを好きだと知ったスタッフの中に、ハガキ職人? って人がいて。期間限定オールデイジャパンTシャツを提供してくれることになりました』

「うわあっ、優勝するのは僕だああああああああああっ!」


 ――拝啓、横浜夏生さん。今から貴女は僕の敵です。


・・・


「第二十八問、エリオットが小学生の頃に見てハマったアニメは」

「はいはいっ、僕知ってます!」

「レーさん、挙手ではなく書き込んでください」

「ちょ、ずるいっすよ。憶えてないって」

「そーだそーだっ、と言いつつ、マリリちゃんはエリオット姐さんの非公式wikiで予習して来たので多分知ってるんだなぁこれが!」


 くそ。マリリ、目障りな女め。僕の優勝を阻もうと言うのか。


『遊撃戦艦ヤマトナデシコ』


 と記入し送信。

 サブヒロインの子、エリと瞳や髪の色が似ていて親近感を得ているはずだ。


「はい、集計しました。レーさんとナツさんが遊撃戦艦ヤマトナデシコ。マリリさんが起動戦記ガンキャリバー、ユズリハさんが魔法コレクターさくら。私としてはコレクターさくらかなあと思」

「トネリコさんの感想はいいので、クイズ進めてください」

「うっ。クイズへの熱意に反して私への対応が雑になってる。エリさーん、お願いしますぅ」

『はーい。正解はガンキャリバーでも良かったけど小学生のころってことだから、遊撃戦艦ヤマトナデシコのレンタル版が正解です。いーじょうっ』


 モニターの妹がプツンと消える。


「ということでレーさんとナツさんが正解ですっ」

「よしっ」


 たしか父親が潰れそうなレンタルショップで遊撃戦艦ヤマトナデシコのレンタル版をまとめ買いしたんだよな。


「うわーっ、自分、ヤマトナデシコ劇場版好きだったんでこれ落としたの悔しいっす。特にね、味覚が駄目なんだってセリフとか最高なんすよ」


 柚乃さんが机をドン、する。というか柚乃さんも観てたんだ。


「これは良い問題だったみたいです。しかしながらお兄さんであるレーさんはともかく、ナツさんもよく分かりましたね」

『は、はい。もしかしたらそうなのかなって思ったというか、はい』

「その調子で頑張ってくださいっ」


 夏生……小学生時代の妹を知る手強いライバルだ。出し抜かなくては……。


「では続いて第二十九問。エリオットが小学生のころ呆れたことはなに」


 知らないよ。


「んあー。小学生のころゾーンに入るとマリリちゃんには不利だなぁ」

「いやー、自分も厳しいっす」

「僕はここで二人とのリードを広げます」


 この二人はここで周回遅れにしてみせる。


「なんだとー」


 ……妹が呆れた事か。

 二人にはああ言ったものの、これってかなり難しい問題だ。なぜなら小学生のころの妹は特に出来が良かったし、根っこの部分で人間を見下しているし、呆れる対象なんて事欠かないだろうし。


『人類の愚かさ』


 と記入し送信。


「はい、ではレーさんから。人類の愚かさ、マリリさんがレーについて、ユズリハさんがレーさんについて、ナツさんがお兄さんについて、とのことで。エリさーん」

『はいはい。えっと、小学生のころに呆れた……。んー、やっぱりあれかなー。レーがおかーさんに一日くっついてたこと。もー、ほんとずっとくっついてたから呆れました』


 おい、やめろ。


「ふふ、可愛らしいエピソードが聞けましたが、これは。レーさん以外、全員正解でいいでしょうっ」


 おいおい、果たしてこの配信を何人が見るのか知らないけれど僕はポイントに差をつけられた上にいらぬ恥をかきそうだ。


「マリリにくっついてもいーよー?」


 隣の席でニヤつくマリリを机の影に隠れて蹴る。


「あーっ、今この人マリリの足蹴りましたーっ」

「すみません、マリリさんより足長くて」

「マリリの足が短いっていったのかい?」

「ちょっと揉めないでください、ということで第三十問っ、エリオットが今、食べたいものはなーんだっ」

「……あ、はい」

「マリリ、座りまーす」


 トネリコさんけっこう強引な進行だ。


・・・


「ふぅー」


 五十問目を終え控室に戻ると唐揚げ弁当とサンドウィッチが置かれていた。僕と柚乃さんとトネリコさんの分だ。

 この控室、普段は会議室として使われているらしく座る場所には困らない。今はスタッフさんと打ち合わせをするトネリコさんとお花を摘みに行った柚乃さんが居ないので好きな椅子に座り放題なのだけれど――。


 僕の背後から部屋に侵入した怖い悪魔が気がかりだ。普段であれば十字架を突き刺して祓うところだけれど……。事情があるとはいえ、一緒に遊ぶ約束をして無かったことにして放置していた事実があるので、邪険には扱いづらい。


「あーやぁのん。あーそーぼっ。ねぇ、わたしちゃんとは遊べないのかなぁ?」


 マリリの声が僕の背後から迫り、左目の視界の端から徐々にマリリの顔が現れる。


「わたしちゃんもバカじゃないからさぁ」

「バカじゃん。変態ストーカー、バカっ」

「バカじゃないからさぁ、気づいちゃったんだよねー。ユズリハちゃんと仲良いでしょー。気づいちゃった気づいちゃったわーい、わい……ね?」

「……人のギャグそんな怖く使わないでよ」


 マリリは手近な椅子を引くとドンと座り足を組む。


「巧妙に隠されていたけれども、わたしちゃんは誤魔化されないから。どういう関係?」


 そんな問いただされてもな。


「ともだち」


 素直にそう言うとマリリはジッと僕を見つめた後、渋々と言った様子で頷いた。


「そう。まあ、母であり姉でもある茉莉花ちゃんとしては礼きゅんが友達を作れたことは嬉しいけれども。そこは、じゃあ素直に言ったことに免じて許すけど」


 マリリは足を組みなおし。


「さーて彼女でもあるわたしちゃんがソレを許すかな?」

「留置所、拘置所、裁判所」

「ちょっ、わたしが行く道を単語で説明しないでいいから」

「というか何でマリリここいるの。僕に会うなら普通に会いに来ればいいじゃん」


 と言うと。


「ふっ、ちょっと自意識過剰じゃなーい? マリリちゃんは仕事で来ただけだっつーの。それがたまたま趣味と実益を兼ねているだけだったわけで……あぁ、だめださっきの写真思い出したら、ムラムラしてきた。しかもあのショタレー2Ⅾとかヤバすぎなんですけどっ! もうまじユズリハ先生天才っ! 先週、先々週だっけ、あのイラスト見た時堪んなかったもんっ! 配信中だったんだけどさ、もう、興奮冷めやらぬって感じで叫んじゃった。ぺろ、ごく。あ、ごめんね。目の前で舌なめずりして生唾飲み込んじゃって。でもさ、あの衝撃ったらないよ。マリリが小さい男の子好きだって知ってるリスナーがあのイラスト見ましたってコメントしてて、何かなーと思ってスィッター見たらああっ、あ、ごめんね叫んじゃいそうになっちゃった。ふぅ、はぁ、落ち着け。ちょっとアヤノン、視界の端に移動してね、目の前いたら興奮冷めやらないから。そう、ありがと。でね、あの画像を写真屋さんで高精細にプリントして部屋に飾ったら最近肌艶が良くなって来てたんだけど――さっきの見た? 2Dショタレーきゅん、かあいいねえっ!? ふぁっ、正気を保つのやっとだったよ、あの時ばかりはマリリのプロ意識を褒めてあげたい。だってさ、目の前に2Ⅾ隣に3Ⅾだよ? たまんねーっ、あああ、今日は最高っ、ほんと仕事してて良かった! 正直、自分の会社の後輩が育ってないというのに、他社と絡んでいく方針ってのは気に入らなかったけどさ! 良いじゃん! 正解じゃん! しかもあのご褒美写真とか、エリちゃん、いやエリさま最高かよ。じゅるっ、はぁ、色々と言いましたけれど何が言いたいか分かる?」

「え、ああ、うん」


 殆ど聞いてなかったけれど、まずい、相当盛り上がってる。

 なんだか前に襲われた時を思い出すな。なにか、身を守れるものはないだろうか……。


「そうっ、もう、マリリは礼きゅんがいれば大丈夫ってこと! 悪いこと言わないからさ、マリリのものになってよ。礼きゅんが見えるガラスケース買ってさ、はぁはぁ、そこで飼ってあげるから。欲しいものなんでも買ってあげるし、なんでもお世話してあげるから、ね? どうかな? ねえっ!」


 テーブルに置かれていたミネラルウォーターの入ったペットボトルを手に取り、蓋を開け、マリリにぶっかける。

 すると。


「…………あっぶねー、他社でやらかすところだった。さんきゅーアヤノン、頭冷えたわ」

「うん、気をつけて」


 500mlの水が掛かったショートカットからはボタボタと水滴が垂れて――。


「スタジオ見学させて貰っちゃいましたー。お弁当はなにがあるっす……か……ん? これは何事っすか」


 柚乃さんの目には無表情の僕と濡れたマリリが映っていることだろう。


「柚乃さんのせいでマリリが壊れちゃったよ」


 最近大人しかったけど、やっぱりこの悪魔ほんと……付き合い方考えないと。

 どの心霊スポットより恐ろしい。


「え……いや、え?」


・・・


「さぁ! 後半戦、がんばっていきましょーっ!」

「おーっ、マリリが優勝しちゃうぞーっ」

「……」

「……」

「あ、あれ、マリリさんは元気ですけどリオネット家のお二人はどうされました? 席の順番も、マリリさんが右端でユズリハさんが真ん中になってますけど」


 フットペダルを見つめ、『涙』を踏む。


「いやー、その、さっきうちの息子がその、控室でマリリさんに襲われかけたみた――」

「もうっ、やだなー神絵師ユズリハ様っ。そんなわけないじゃんっ。マリリはみんなのマリリなんだから可愛い男の子が部屋に一人でいたからって襲ったりなんかしないんだぞっ」


 フットペダルの『恐怖』を踏むとモニターの中のショタレー君がプルプルと震えだす。


「ふ、ふふ、いや、ごめん。ちょっとレーくん。そのフットペダル踏むのやめて、その表情マリリに刺さって逆効果だから。水ぶっかけられても今度こそ止まれなくなっちゃうから」

「……はいっ、という冗談は置いておいて、第51問っエリオットの……」

「……」

「……」


 場がまるで盛り上がらない。

 その空気を察したのかトネリコさんがワナワナ震え――。


「あの、マリリさんっ。どうしてくれるんですかこの空気、うちのタレントに何してくれてるんですか!」

「うわーんっ、ふつうに怒られたー」


 ラインオーバーのタレントではないけれど。

 真正面から怒られるマリリを見れてスッとした。


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