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顔だけは良い妹が何故かバーチャルアイドルをやっているらしい  作者: 光川
翼のない天使編

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兄妹の絆を示せっ! バーチャルタライ落とし!

「では第三戦の内容はコチラ! 」

「そのまんまだっ」


 妹が反応する。

 僕と一緒でリークされた内容から変化があると思っていたのだろう。だがどうやら今回は内容そのままでバーチャルタライ落としが行われるようだ。


「ルールを説明します。まずお二人はコチラに移動していただいて。ヘルメットをかぶっていただきます」

「うう、てっきり今回もトネリコがタライの下に座ると思ってたのに」

「それじゃもう私の罰ゲーム大会じゃないですか。はい、そうです、座って頂いて。右側にあるヒモを持ってください」


 まさか自分の人生でこの状況になる事があるとは。


「エリさんのヒモはレーさんのタライに繋がっていて、レーさんのヒモはエリさんのタライに繋がっております。ちなみに高さ三メートルの位置に設置されたタライは非常に軽くお二人が怪我をする心配はございません。ほぼハリボテです」

「それ言っていーの?」

「若者の安全に配慮しております。ただし負けた方は先ほどのお願いが待っておりますので、真剣にやってください」

「どっちにしろ嫌だなぁ」


 首は守られそうだけれど、どちらにせよドキドキのゲームらしい。

 サブモニターには座る僕達の上にバーチャルタライが表示されている。センサーか何かで実物と同じ動きをするのだろう。


「それで、ですね。タライを避けようと動いても負け、兄と妹にタライを当ててしまっても負けとなります。いわゆるチキンレース、当たるかどうかのギリギリを責めた方の勝ちです」

「これ、同時にやるの?」

「はい。サブモニターに映るファイブカウントに合わせてヒモを手放し、そしてここだという瞬間に掴んでください」

「なるほどなぁ。エリちゃんを信じられるかと言われると……ううん。これって一発勝負ですよね」

「そうです。妹を思ってすぐにヒモを握っても良し、自分を信じてギリギリを狙っても良しとなっております。準備は宜しいですか?」


 トネリコさんからの最終確認。自分が対象のゲームじゃないからか乗り気に見える。


「エリはいーよ」


 自身満々な妹。


「礼さんはいかがでしょう」

「はい。大丈夫です」


 時間を与えられたところで意味も無さそうだ。


「ではタライのロックを外しますのでヒモをしっかり握って下さーい。スタッフさんお願いしますっ」


 クッ、とヒモに重さが加わる。なるほど、何となくの重さは分かった。それほどの速度は出なそうではある。


「よければコメントでどちらが勝つのか予想してみてくださいっ、行きますよっカウントダウンスタートっ」


 5・4・3・2・1。


 サブモニターに映る数字に集中して、手を離すと。

 スゥーとヒモが手の中で滑っていき――キュッとヒモを握りしめる。


「おっとぉ! タライが両者の頭に落ちる事はなかったぁ! ではお二人とも、頭上をご覧くださいっ」

 恐る恐る上を見ると。


「うわ、近っ」


 頭上五センチほどの所でタライが止まっていた。

 そして妹の方を見れば。


「ふっふー。レーがさぁ。エリに怖い思いさせる訳がないんだなー」


 妹の頭上2メートルの高さで、タライは止まっていた。


・・・


「という事で、勝者はエリさん! 三番勝負も二勝一敗で、エリさんの勝利となります」

「やったっ、いえーい、みんなー見てるー?」


 妹がヒモから手を離したのでコツンとタライが僕の頭に当たる。


「……確かに軽い」


 タライの正体はプラスチックと厚紙だったらしい。


 妹が立ち上がりタライの下から離れたのを確認し、するするとタライを下ろしていきヘルメットを脱ぐ。

 はぁ、学校に行かせるのは失敗か。


「いやー、これは個人的には納得の結末と言いますか。良いもの見せて頂きました」

「レーなら絶対すぐ止めると思ったんだー。ね、レー」

「いや、もう恥ずかしいからさっさと進めてくれ」

「だってさ、トネリコ」


 妹は非常に上機嫌といったご様子。


「では、まずレーさん。夜の九時が門限となります」

「はい、前向きに善処しまーす」

「そして、エリさんが自作したというルーレットが、こちら……なのですが。はい、皆さんがご覧の画面にも表示されましたね。なんともエリさんらしいラインナップが並んでおります」


 サブモニターにルーレットが映し出される。

 まず、ルーレットの七割ほどが同じマスだ。


「一番大きいマスが『エリと週に六回遊ぶ』ね。で、次に大きいのが『エリと二人でFPS、目指せダイヤランク』で、その次が『エリが見守る二百メートルバンジー』最後の一番小さなマスが『ラインオーバーでデビュー』ね」

「全部、イヤだぁ」

「え? 一番楽な奴を一番大きいマスにしてあげたじゃん。他のも楽しそうなのばっかりだし。ほらトネリコ、試しにちょっと回してみて。どーさ確認しよ。頑張って作ったんだから」

「はい。では」


 トネリコさんがパソコンの元まで向かい、カチっとクリックすると。

 クルクルと針が回り――。


「お、六回遊ぶに止まった。もう一回押してみて」


 クルクルと針が回り――。


「お、目指せダイヤランクだ。エリがキャリーすれば二か月くらい頑張れば行けるかもね」

 これ、ホントにルーレットじゃん。以前のトネリコさんに使ったインチキルーレットかと思えば……これは、一瞬で終わるバンジー狙うしかない!

「それでは礼さん、覚悟は宜しいでしょうか」

「はい。もうトネリコさんに任せます。押しちゃってください」

「では、行きますっ」


 カチっとクリック音が響き――。

 クルクルと針が回り始める。


「何が出るかな、何が出るかな、たらららんらん、たらららん」


 ご機嫌な妹がどこかで聞いたメロディを口ずさみ、針が、止まる。


「レーさんバンジー決定!」

「うわああ! やっぱりバンジーも嫌だぁー、200メートルってどんなだぁ」

「二百メートルは、二百メートルだよ、レー。楽しみだね」

「以上、第一回、ドキドキ、炎の兄妹三番勝負でしたー、ばいばーいっ」


 手を振るトネリコさんと満面の笑みのエリオット、そして膝から崩れ落ちる『レ』の人を映しながら、配信が終了し――妹の誕生日ライブが告知された。


「……礼。エリも、ちょっと頑張ってみるよ」


 聞こえるか聞こえないかの声量でポツリと呟かれた言葉を聞いて、まあ、この茶番に付き合った甲斐はあったかもしれない……そう思った。


決着がつきました。

いよいよ話も後半にさしかかります。


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