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顔だけは良い妹が何故かバーチャルアイドルをやっているらしい  作者: 光川
日常編

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129/140

【短編】九月、エリオット雑談枠

 八月が終わり九月になってもエアコンの稼働は止まらず、スウィングする冷風が風呂上がりの身体を冷やしてくれる。燃え尽きたかのような脱力と共に迎えた九月は夢から醒めたかのようで――。


「あのさ、最近ずっと思ってたんだけど。みんなレーのこと、か、か……んんと」

「……過大評価」

「過大評価しすぎなんですけど! 今日はそのあたりの認識のそご? を正していこうと思います!」

 

 ――僕の日常ってこんなだったなと感慨深い。なにが悲しくて妹の、エリオット・リオネットちゃんの配信にお邪魔しないとならないのか。

 今日の妹の配信内容は『最近やたらとチヤホヤされている兄について話があるので緊急で動画を回します』という頭の悪いタイトル。

 そんなろくでも無い配信がさて寝ようかなとベッドでウトウトしていた僕の隣で始まってしまった。無論、兄の許可を得ていないゲリラ配信である。


 手狭なシングルベッドの上に並んだ妹はノートパソコンとマイクを調整しながら上機嫌に「レーはほんとにねー」と流れるコメントに目を向けながらプンスカしている。

 そろそろ部屋に鍵をつけるべきかもしれない。不幸なことに僕の妹は部屋のドアノブに触れてドアを勝手に開けてしまうわんちゃんよりもギリギリ賢いのだ。


「あのね、みんなはレーのうわべ的な、良い部分だけ見てるから褒めちゃってるの。ほんともう浅いというか、エリからしてみれば全然そんなこと無いんだから。子供のころなんてエリがいないと何にも出来なかったんだよ? 憎さあまって可愛さ百倍みたいな感じだよもう」

「……」


 反論しようかと小さい頃の妹を思い返すが……。

 今となっては信じられないけれど、当時の妹は聡明と言うに相応しい実に良く出来た子で、確かに僕の面倒を良く見ていた。一緒に登校し、一緒に帰宅し、一緒にゲームして一緒にお風呂に入って一緒に寝て…………甲斐甲斐しく世話をされた記憶しかない。

 どうやら残念なことに妹の発言は正当と言わざるを得ない。


「いまレーはなにしてるのって? 寝ようとしてたみたいだからものすごく迷惑そうな顔でエリを見てる。あ、そうそう良く気付いたね。今日はレーの部屋で配信することにしたからノートパソコンで配信してるの。だからちょっとカクつくのかも。ん? 今はベッドに並んで配信してるけど……、同じベッドにいるのってそんなにおかしい?」


 枕元に置いていたワイヤレスイヤフォンを耳栓代わりにして寝ることにする。ノイズキャンセリングを駆使すれば雑音は――。


『こんなこともあろうかと、そのイヤフォンはエリのノートパソコンとペアリングしておいからね。ああ、こっちの話。レーがエリのこと無視してイヤフォンつけて寝ようとしてたから配信の音声乗せてあげたの』


 イラっとして妹の尻を叩く。


『今の音はレーがエリのお尻叩いてセクハラした音です。ねー、レーもあきらめてエリと遊びなよ』

「嫌」

『は?』

「邪魔」


 数秒煌びやかな瞳と視線が重なり――。


『わー!』

「うわっ」


 マイクに向かって叫んだ妹の声が響くイヤフォンを慌てて取り外し、そのまま妹にゴンと頭突きを喰らわせる。


「いたっ! みんな、暴力です! レーがエリに頭突きしました! こういう兄です!」

「自分も夏休みに毎日僕のこと蹴り回してたろ」

「あれはゲームだもん。レーもどーたい視力上がって良かったでしょ?」

「あれはエリの蹴りが鋭すぎて怖いから、恐怖によって磨かれた悲しき動体視力なの」

「エリと遊べて楽しかったくせに」

「じっくり考えてみたけどエリちゃんと遊んで楽しかったこと無いよ」

「みんな今の聞いた? 言い切りましたこの人! ほぼ無いとかじゃなくて無いんだって。はーあ、傷つきました。ほんと普段のレーってこういう人だから。ノンデリなの。エリは普段からこういう雑なたいおーに心を痛めているのお分かりいただけたでしょうか。ここからは具体的に、今までどんなことがあったのかを紹介していきます」


 涅槃像のように寝転びつつ身体を妹に向けると、楽しそうに足をパタパタと動かしている。


・・・


【リオネット家を見守るスレ】


120:リオネット家別邸 

 結局八月はレーくん配信現れなかったし、この後の配信も出ない感じかな


121:リオネット家別邸

姫いわく最近は燃え尽きてるらしいからそのうち出るかも


122:リオネット家別邸

雑談枠から察するにレーくん夏休み中は一日二十時間近く動きっぱなしだったらしい。推定高校生男子の体力えぐ


123:リオネット家別邸

エリの知らない女とオッサンとバンドしてた、だっけ。

この話が出た時の情感というか『まあ、楽しそうならそれで良いんだけどさ』って言葉の冷ややかな圧が恐ろしかった。喜怒哀楽全部こもってなかった?


124:リオネット家別邸

>>123 単に好きというより、言い方あれだけど愛憎入り混じってるレベル。なお実際に兄と一緒に居る時は終始ご機嫌な模様


125:リオネット家別邸

>>124 実際レーくんが見てる「エリちゃん」と我々が見ている「姫さま」には大きな隔たりがあると思うわ


126:リオネット家別邸

言わんとする事はわかるけどワイも友達の前と親の前じゃ違うし、そんなもんやろ


127:リオネット家別邸

 姫さまって基本的に「お気に入りには雑だけど優しい」「興味無い相手には塩」って感じでそれ以上でも以下でもないというか。その中で兄だけは例外ってだけやろね


 128:リオネット家別邸

 片手で数えられるほどの出演回数で多くの夢女を生んだ兄だから、間近で接してる妹が夢中になるのも仕方がないのだ


 129:リオネット家別邸

 なお肝心の兄からは犬だと思われている模様


 130:リオネット家別邸

 草


 131:リオネット家別邸

 悲しいなぁ


 132:リオネット家別邸

「あ、レー帰って来た!」で、配信止めて玄関まで行くくらいだからな。ほぼ犬よ


 133:リオネット家別邸

「レーってエリのことデカい犬だと思ってる説ない?」って姫様が言ってただけだから


 134:リオネット家別邸

 八月後半にトネリコさんとお泊りコラボした時とか

「レー帰って来た! ちょっと行ってくるっ」→「は? なにあの兄、エリに向かってただいまの一言しかなかったんだけど」とか言っててトネリコさんが「それで充分じゃないですか(呆れ)」

 みたいな流れあって笑った


 135:リオネット家別邸

 犬って愛情深い生き物よな 昔飼ってたボーダーコリー思い出して泣けてきた


 136:ガチ恋小悪魔

 やっほー。なんか面白い話ある?


 137:リオネット家別邸

 >>136 


 138:リオネット家別邸

 >>136 


 139:リオネット家別邸

 >>136 クソコテ来ちゃったよ。レーくん専スレに閉じこもってどうぞ


 140:ガチ恋小悪魔

 >>139 あそこはもう無理。彼女面と保護者面が多すぎる。あのペイントパレットの女神こと可愛い可愛いマリリちゃんに向かって「さっさとレーきゅんにアカウント返せよ」とかいう暴言も行き交ってるし、同じ悪魔として居心地悪い


 141:リオネット家別邸

 まだアカウント返してないんかあの人……


 142:リオネット家別邸

 >>136 お前も彼女面、姉面、嫁面してるだろ。


 143:リオネット家別邸

 クソコテに同意するのもあれだけど確かに今のレースレは混沌としてて居心地は悪いぞ。スウィッターとかも女アピールしつつ『レーくんしゅき』とか呟いてるアカウントあるし。そういう意味だとボケ悪魔がアカウント強奪してる方がレー君を守護れるかもしれない


 144:ガチ恋小悪魔

 >>143 ほんそれ。やっぱマリリちゃんしか勝たん。レーきゅんも身近な良い相手見つけてさっさと厄介の脳を焼いて欲しい。

 ほんとなぁ、いると思うんだよなぁ。身近に凄い相性の良い相手……。

 あとレーきゅんしゅきって呟いてるアカウントの全てが悪い訳では無いと思うよ


 145:リオネット家別邸

 >>144 身近な相手っていうと一緒にバンドやったっていう女の子かな


 145:ガチ恋小悪魔

 >>145 ……すぞ。思い出させるな。あんな悔しい思いしたの初めてだ。喜びも悲しみも、このわたしが全て与えるつもりだったのに。あの男は勝手にわたしの手の外で成長して……。もう嬉しいやら誇らしいやら。


 146:リオネット家別邸

 嬉しいんかい


 147:リオネット家別邸

 ギリギリのとこで愛情が勝つやつ


 148:リオネット家別邸

 大岡裁きで勝つタイプの変態


 149:ガチ恋小悪魔

 きみらわたしに風当たり強くない? ちょっと感情抑えられない時に連投してスレ荒らしてしまうだけなのに泣 


 150:リオネット家別邸

 泣きたいのはこっちだよ


 ・・・


 251:リオネット家別邸

 今レーの声した? 久しぶりの兄妹配信なのかこれ!


 252:リオネット家別邸

 過大評価


 253:ガチ恋小悪魔

 レーきゅん、カーテン開けて♡


 254:リオネット家別邸

 尻の音助かる


 255:リオネット家別邸

 兄と妹、同じベッドの上、なにも起きない訳が無く……。え。同じベッドから配信? まずいですよ!


 256:リオネット家別邸

 姫さま、むずかしい単語使う時語尾に「?」ついてるの何回聞いても可愛い


 257:リオネット家別邸

 語尾の件、リオネット家学会では『兄の真似して失敗』説が濃厚。対抗馬として『言い間違えると兄が訂正してくれる』説もある


 258:リオネット家別邸

 兄の居ぬ間にイヤフォンのペアリングを繋げる妹


 259:リオネット家別邸

 姫さまの可愛さと面倒くささが分かる良配信。


 260:ガチ恋小悪魔

 こういう時のレーきゅんはほんとに面倒くさそうな顔する。


 261:リオネット家別邸

 わー! 


 262:リオネット家別邸

 わー! レーの耳は逝った。ワイの耳も逝った……。


 263:リオネット家別邸

 ゴッ


 264:リオネット家別邸

 ゴッ


 265:リオネット家別邸

 兄妹特有の容赦の無さ


 266:リオネット家別邸

 頭突きされて嬉しそうなのがもう


 267:リオネット家別邸

 レーの良くないトコ言う、みたいなわりに一向に出てこないな


 268:リオネット家別邸

 レーが褒められすぎてもイヤだけど、レーがバカにされるのもイヤなのだ


 269:リオネット家別邸

「……で、あのバンドの女の子とはどうなの?」→「んー。今まで会った人間で一番気が合う」

 終わりです


 270:リオネット家別邸

 専スレ阿鼻叫喚


 271:リオネット家別邸

「まあでも、エリちゃんが一番だよ?」→「だよねっ!」→「なんつって。あはは」

 この兄さぁ……


 272:ガチ恋小悪魔

 なにこいつ。ほんと女心をなんだと思ってるの? 


 273:リオネット家別邸

「ん? ああ、僕がせー……バンドの人と付き合うとか思ってるの? はぁ。エリちゃんもお年頃というか……。閉じた世界で生きてると男女ってだけで付き合うとか思うんだ。ま、エリちゃん友達いないもんね。難しい話しちゃったかな?」

 ライン越えだぞ


 274:リオネット家別邸

 こういうとこほんとエリオットの兄


 275:リオネット家別邸

 あまりに攻撃力が高くない? 涙でちゃった


 276:恋する小悪魔

 うちの子が申し訳ございません。本人に悪気はな……くはないのですが、妹を小馬鹿にしているだけで視聴者がいることは考えていないのです。親切な子なのですが意地も悪いのです


 277:リオネット家別邸

 しかもマイクが近くて寝転びながら? 喋ってるからかASMRみたいになってるのがまた変な層を開拓してそう


 278:リオネット家別邸

「エリとその人、どっちが大事?」→「……」→「うわ、ダル、みたいな顔しないで」→「いや、エリちゃんは誰かと比べる枠にはいないからなぁ……」


 !?!? そもそも特別ってこと!?


 なにこの男、ワイの情緒めちゃくちゃになっちゃうよ!


 277:リオネット家別邸

 専スレ民、自分に置き換えて爆発しそう


 278:恋する小悪魔

 この男悪質だよね。なんなの?


 279:廃教会

 基本的にお母様から溺愛されて育ったから誰かに深い愛情向けられても無償の愛だと思ってる節あると思うんですよ。相思相愛を根本的には理解していない負の博愛主義というか。

 はっきり「好き」って言っても多分この人「お、どうも」って受け取るだけですよ。人間関係を深掘りする気がないんですよ


 280:恋する小悪魔

 >>279 ほんとそれ。この人こうしたら喜ぶかな喜んだら嬉しいなってとこまでは理解していても、その結果その人にどう思われるのかまでは考えてないのよ。幼児か?


 281:廃教会

 手を引いてくれる人が好きなのが余計に幼児


 282:恋する小悪魔

 手を引いてくれる人って……もしかして、わたし?


 283:廃教会

 わたし? じゃないんですよ。

 手を引かれて遠くステージの上に連れ去られたのもう忘れたんですか?


 284:恋する小悪魔

 わたしは子供の自主性を重んじるんです!


 285:廃教会

 管理願望あるくせにどの口が言ってるんです変態。重い女は嫌われますよ

 

 286:恋する小悪魔

 解釈浅すぎ、うちの子は重いくらいで嫌いません


 287:廃教会

 あの人そういう母親面は心底嫌いますよ。ご存知ありませんでした?


 288:恋する小悪魔

 はー特定したわ。ちょっと待ってて。今からそっち行く



・・・



「そうなの、それでエリたちクリスマスが好きになったんだー」


 結局、問い詰められたのは最初だけ。以降は一時間ほどただの雑談を続けてしまった。


「というかその話クリスマスシーズンにしなよ」

「だってこれはエリとレーを語る上で外せない話でしょ?」

「んー。まあ、サンタクロースのソリに乗せてもらったのは良い思い出かな」

「本物サンタ、また会いたいな。いまは何してるのかな」

「そりゃあそろそろクリスマスの準備でしょ。エリちゃんも今のうちに手紙書いておけば僕がプレゼント買って来てあげる」


 なんて言ってみると。


「そーいう夢のないことを言うのって、しっかりつまらない人だと思うな。夢とか素敵なものを皮肉るのはレーの良くないとこだよ」


 妹がしっかりと冷めた目で僕を諭した。反省するほかない。


「……僕が間違ってました」

「サンタが言ってたじゃん。プレゼントは気持ちデスって。サンタへのお手紙をおとーさんが受け取っておとーさんが夜にこっそり枕元にプレゼントを置いたとしても、それはサンタからの気持ちなのでオッケーなのデスってさ。サンタが実際にプレゼントを配っていないとしても人々の心の中にあるサンタという……なんだっけ」

「強迫観念」

「そうだっけ? まあ、そのサンタという存在がきょーはく観念になっておとーさん達に響いて、子供たちに笑顔を届けるの。エリもね、実はブイチューバーになってからクリスマス募金とかしてるんだよ?」


 エリちゃんが募金? やばい、普通に感動した。


「みなさん……、うちの妹はなんだかんだ良い子なんです」

「へへ」


 子供のころの話なので朧気なのだけれど、僕らが出会ったサンタ親子、正直なところ人間性はあまり良くなかった気がするのだが。妹に綺麗な思い出として残っているのだから話は妹の方に合わせておこう。


「さーて、けっこう話せたので今日のとこはこれでお終いにしよっかな。レーは最後に言っておきたいことある?」

「無いけど。……あ、そうだ、なんか柚……ユズリハ先生の同人誌が明日から再販するとか言ってなかったっけ。あれの宣伝したら?」

「あー、なんか言ってたね。ちょっと待って、画像持って来るから……はい、これです。今回ねユズリハママが夏コミで売って完売したリオネット兄妹の同人誌がラインオーバーの公式ショップでも取り扱われることになったのでご興味あるかたはどーぞ手に取ってみてください」

「あと受注生産のアクスタも」

「ああ、そっか。よく覚えてるね。そうそう、ユズリハママ曰くエリとレーが並んでるイラストのアクスタが近々発売予定なのでそっちもチェックしてみてね! それじゃあおつエリー」

「宣伝動画みたいになったな……。おつエリです」


 そんなこんなで、雑談が終わった。


 簡単掲示板形式風ということで一つ。

 読んでいただきありがとうございました!

 それとXフォローして下さっていた方いましたらすみません、しばらく前から凍結してます涙。必要に応じてアカウント作るかもです

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本編が急に完結してしまって寂しかったから、 また短編でも続きが読めて嬉しいな
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