村人の俺が勇者補佐になって世界を救うまでの話
俺の祖父は勇者パーティーの一員として、魔道士として魔王を倒して世界を平和へと導いた。
祖父は俺の自慢だった。
そして、それなら俺にだって魔道士としての血からがある筈!
魔道士としての資質が花開いて華々しくデビューして勇者達と魔王を倒す、そんなことを夢見ていた。
でも、12歳の子供全員が受ける職業診断の儀式では父と同じ村人だった…。
でもほら!隔世遺伝とか突然芽生えるかもしれないし!
そして魔道士として勇者パーティーに入ってモテモテな人生を歩むんだ!!
そう思い自宅に飾られていた祖父の杖を持ち出し家を飛び出した。俺も祖父みたいな偉大な魔道士になるんだ!
それも30分で他の村人に見付かって自宅に返されたけど。
そんなことを繰り返して早5年。
見付からない日時は延びてきたけれど、相変わらず魔法の才能も何も発揮できないまま時間は過ぎていった。
杖も魔道士としての役割ではなく、魔法を使えない俺には鈍器のようにしか扱えなかった。
手頃な魔物を杖でボコって迎えに来た両親か村人に別けて食べたり街で売ったりした。
祖父も祖父の杖もこんな使い方をされたら泣くだろうが、それ以前に頑丈過ぎるだろこの杖………と引き気味で魔物を殴り続けた。
そんなある日、5歳下の弟が職業診断の儀式で大魔道士の診断を受けた。
絶望する俺に、魔道士になりたがっていたことをずっと知っていた弟は「兄さん、ごめんね」と言って謝ってきた。
弟は何も悪くない。
ただ、惨めな気持ちは消えない。
そして、大魔道士の診断を受けた弟の元に王城から使いが来て王都に行くことになった。
少々ブラコン気味の弟は、兄さんと一緒じゃなきゃ世界なんて救わないとか馬鹿げたことを言ったので蹴りだして追い出した。
弟は、祖父からの杖も受け継いだ。
俺が何度も自宅から盗み魔道士に憧れて共に村を飛び出した杖。
さようなら…杖…弟よ………兄ちゃんの分まで格好良く大魔道士として華々しくデビューして勇者パーティーの一員として魔王を倒してくれ…。
杖に未練たらたら、兄さんと慕ってくれる弟も居なくなってしまった俺だが、気付いたことがひとつある。
実は俺は、俺自身でも驚くくらい強くなっていた。
どうやら祖父の杖には不思議な力があり、道具として使うとバフ効果があり、それを使用して魔物を倒していた俺は気が付いたらレベルがかなり上がっていたらしい。
5年間、毎日杖を持ち出しては魔物と戦ってたもんな…魔法使えないからボコってただけだけど…。
しかし、この間倒したオークがオークじゃなくて、王国の一師団を出して戦うほどのキングオークだと知った時は驚いた。
そこいらの戦士より強い村人として、俺は村の守護者になった。
まぁ、普通の村人よりはマシか…。大魔道士にはなれなかったけれど、村を守るという責務が俺の自尊心を回復させてくれた。
彼女は出来なかったけどな!!!
杖の代わりの棍棒で今日も元気に村に近付く魔物をボコって過ごしていくんだ!
そんなことを思う日が俺にもありました。
勇者パーティーから脱走して村に弟が帰ってきた。
いやいや、なにしてるんだ?
「僕は、兄さん以外の勇者パーティーには入りません!」
なんてこった!弟が更にブラコン拗らせていた!
俺も色々なもの拗らせたけど、お前の拗らせもやばいやつだ。早く正気に戻れ!
「兄さんと一緒に寝ないと寝れないんです!寝不足でやってられません!」は12歳少年が言ってはいけないワードだ。
弟がひしっと俺に抱き着き寝て満足気に一晩過ごし、清々しい朝(弟目線)をしたあと、昼頃に勇者パーティーが弟を迎えに来た。
「何しに来たんですか!勇者さん!僕と兄さんを引き離すことは勇者や魔王であっても出来ないんですからね!」
いや、出来るだろ。世界の危機だぞ今は。
しばらく離れていた間に弟のブラコンに磨きがかかっていた。
弟に懐かれて嬉しいが、行き過ぎな気がするので兄としては直ちに修正して俺は三軒隣のかわいい系お姉さんと仲良くしたい。
困りながら勇者と話してみるといい奴で、お互いに同年代ということもあり割りとすぐ親友みたいな立ち位置になった。
村には同年代の男が少なかったから新しい知り合いって新鮮だ。
弟は「兄さんの弟は僕だけですけどね!」と勇者に対抗意識を燃やしているが恥ずかしいからやめてほしい。
思春期が闇歴史になるぞ。
そうこう話をしたりして弟が勇者パーティーに戻るためにあれこれ画策しているうちに、村人の俺がかなり強いことを知った勇者がスカウトしてきた。
戦士のポジションは診断で他にいるらしいから勇者補佐ということで同行してほしいと申し出た。
勇者は適正診断で勇者の結果が出てから王城で騎士相手に訓練していて実践経験が不足していることが不安らしい。
弟を連れていくためでもあるし、自分がそこそこ強いなら足手まといにはならないだろうと、途中までならと承諾した。
そんなこんなで適正が発覚したばかりの弟と、実践経験がない勇者を連れて魔王城への旅が始まった。
「賢者くらいかわいい女の子がいい」
「わかる~!ボンキュッボン!!なら、なおとのこと!」
「賢者も男ですよ。兄さんに毒牙がかかってはいけないので。僕、毎朝晩祈ってますから!」
弟の兄シールドが今日も元気でこわい。
かくして、次の仲間の賢者も弟の毎朝晩の祈りが通じたのかなかなかイケメンの男であった。
弟よ。大魔道士としての祈りの力をそういうことに使うのはやめなさい。
兄として、弟の実行力がこわい俺は勇者補佐としてやっていけるんだろうか?
そしてかわいい女の子が仲間になることはあるんだろうか…。
弟を見るに、多分無理だなと悟った俺だった。
ちなみに迎えに行った戦士も男だった。デスヨネー。
勇者(男)、戦士(男)、大魔道士(男/弟)、賢者(弟)、勇者補佐(男/俺)という男100%のパーティーになった紅一点というか彩りに欠ける。
素直に言おう。
かわいい女の子と吊り橋効果でいい感じになってみたかった!
こちとら思春期男子だぞ!
女の子とちょっといい感じになりたい欲があってもいいじゃないか!
しかも無駄に俺以外は顔がいいから村や街に行ったらモテるのは俺以外。
不公平な世に物申したいから常日頃の言動で俺に惚れてくれるかわいい子がいてくれたらとても嬉しかった!!悲しい!!でも女の子に過酷な旅や魔物退治なんてさせられないから男だらけのパーティーでも良かったかもしれない。
そう思おう。そうじゃなきゃやってられない。俺だって女の子にキャーキャー言われたい旅だった。
途中までならとの約束だったが、なんだかんだでこのメンバーで旅をするのが楽しくて、魔王四天王とやらを倒し勢いで魔王も倒した。
魔王が勇者に夢中になっている間に村人の俺が存在感なしを活用して後ろからボコってやった。
世間には、魔王を倒したのは勇者ではなく俺の最後の一撃だったことは秘密にしておいた。
補佐がトドメを刺したなんて物語にはならない。
勇者様が魔王を倒した美談が求められるのは常である。
事実は俺達だけが知っていればいいけど、弟の俺自慢でバレそうになりその度に俺は弟を叱っている。
でも、そんな日々も村に居た時と変わらず平和だなぁ、と思った。
そんな平和な日々の一端を担ったのは誇らしかった。
大魔道士にはなれなかったけど、それ以上に大切なものを手に入れた気持ちになった。
彼女は出来なかったけどな!!!




