第4話 対面
「へへへいい女みつけちゃ…」
道路の端に座っていた二人の前にチンピラが飛び出してきたが、一瞬でクレイジーがレーザー・バーストで射殺した。犀子とクレイジーは亡骸を気にも留めず、今後の計画を話し合っている。
「野望を持ったはいいものの、マフィアの王になんてどうやってなるの?」
「うーむ。現実的なのはどこかのマフィアの組に所属して、成り上がっていく方法じゃな。出世を重ねていつしか組のドンとなり、さらに勢力を拡大させてヘルグリッジの全マフィアを統一。お前の腕っぷしなら夢ではないぞクレイジー」
「なるほどーどっかの下っ端から成り上がるかー。やっぱそれしかないね。でもさ、どうやってマフィアに所属すればいいの?」
「確かに言われてみれば分からん」
犀子がそう言った後、また物陰からチンピラが飛び出してくる。
「身ぐるみ剥がさせてもら…」
が、ご多分に漏れずクレイジーが射殺。襲い掛かるチンピラ、反撃され死ぬチンピラ。ヘルグリッジの日常風景。
「求人広告でもあればいいのにね」
「はははは、まあそんな都合のいいマフィアなんて…」
クレイジーの冗談に笑いつつ、犀子はふと後ろの建物に目をやった。
『手下募集中!犯罪しまくりたいヤツ強さを磨きたいヤツはリンクルタウン3-21まで来い!イーグルヘッズファミリー幹部メボロ様が直々にこき使ってやる!もちろん討ち入りも大歓迎!』
「都合のいいのがいたーァ!!」
《次の日、リンクルタウン、メボロの事務所前》
「ほんとに良いのかクレイジー。求人出すなんてまともなマフィアじゃないと思…」
「すいませーん。張り紙の求人見たんですけど、ここでマフィアデビューできますかー?」
「いや聞け!」
犀子がツッコんで間もなく、扉がゆっくりと開き、肩からキノコを生やした女性が出てきた。
「えーと、入門希望者ですね。ボス!求人見たお客さんでーす!」
キノコのワカの女は大声で上司を呼んだ。すると事務所の奥の部屋から、身長2メートルはあろうかという男がのっそりと出てきた。腕が翼になり、短いが鋭い嘴、羽毛に覆われた顔。上半身にフクロウの特徴の出たワカ。彼こそが『月光のメボロ』である。
「求人…?ああ、酔った勢いで作ったやつか。まさか本当に来るとはな」
「こんにちはメボロさん。クレイジーと申します」
「さ、犀子です。よろしくお願いします」
「あのなあ、冷やかしは勘弁してくれよ。ジジイと女のガキがマフィア入門だと?ふざけてんのか!」
(まあそりゃそうじゃろうな)
犀子が心の中で思う。
イライラした顔で二人を見つめるメボロ。あたりの空気がピリつく。すると何かを思ったのかクレイジーが口を開いた。
「爺さんは知らないけど、私ならそれなりに戦えます。なんならここでソイツでもぶっ殺しましょうか」
クレイジーは眉一つ動かさず、砲身状にした右腕でキノコ女を指した。
「え、わ、私!?」
我関せず状態だったキノコ女の顔がひきつる。
「ハハハハ言うじゃねえか」
メボロはクレイジーを見つめて大声で笑った。
「でも生憎コイツは俺の秘書代わりなんだ、殺されちゃあこまる。しかしなるほど。なかなか面白いガキだな。おい、あの写真持ってこい!」
メボロは翼を動かしてキノコ女に何やら指示を出した。
「はいはい、どうぞ、ボス!」
「なあお前ら、この写真の男を知ってるか」
二人に見せられたモノクロ写真にはサングラスをかけた舌の長い男が写っていた。
「まったく知らんのぉ」
「コイツはベタリートって言ってな、かつての俺の部下だった男だ。」
またメボロの顔が険しくなる。
「でも奴は俺を、ファミリーを裏切ってエチゼン組の連中に情報を売りやがった。とんだクソ野郎だ。今俺の他の部下達が血眼になって探してる。」
「なるほど。ワシらもその男の捜索を手伝えと」
「ああその通り。見つけ次第殺してくれたってかまわん」
「いいよ分かった。殺すのはもう慣れた」
クレイジーが心なしか楽しそうに言う。
「ガキとジジイに何ができるか知らねえが精々頑張ってくれよ。言うなればそれはお前らのマフィアへの入試試験だ!」
メボロの事務所から繰り出した二人はベタリートの写真を見てニヤリと笑った。
「裏切者ベタリート、こいつを始末すればきっとメボロに気に入られるね」
「ああ。ヘルグリッジ5大マフィアの1つのイーグルヘッズ。その幹部に好かれておいて損はないじゃろうな」
つづく