ヘルグリッジシティ
――――1度入れば2度と出れないこの世の地獄!
そうそれがヘルグリッジシティ!!!
〈概要〉
ヘルグリッジシティはタウエル合衆国トラクトン州西部に位置する都市である。
面積は1700㎢(うち30%はゴミ山)、総人口は60万人以上と言われている。
〈特徴〉
この都市の最大の特徴は、後述の理由により外部の都市から独立状態である事である。街の内部では殺人、違法薬物、誘拐等犯罪が尋常でないほど蔓延し、犯罪発生率は87.7パーセントとも言われている。これはだいたい10人中9人が犯罪者という驚異的な割合であり、このレベルの無法地帯の都市はここの他にはただ一つも存在しない。
もちろん警察も存在しておらず、街を支配しているのはマフィア達である。
〈ゴミ〉
街の30%を埋め尽くしているのが各国から送られ、投棄されたゴミ達だ。毎日ゴミを運んでくるトラックはヘルグリッジの数少ない外部との接点である。タウエル合衆国はヘルグリッジをゴミの最終処分場として認めており、場所の提供代金として毎年約6600億オウルもの利益を生み出している。なおタウエル政府は処分場設置に至りヘルグリッジ住人に一切の断りをせず、出た利益も1オウルも渡していない。
〈歴史〉
約1000年以上前からヘルグリッジは独立状態の危険地域として存在しており、タウエル大陸の原住民達からは『地獄の門』として一種のタブーとして扱われていた。
ヘルグリッジという名称がついたのはタウエル合衆国独立後であり、初代大統領が現住民の言葉をもとに名付けた。
名誉大戦までは5万人程度の人口の地であったとされるが、大戦時、大量の難民が流入。人口爆発を起こし現在の人口になった。
〈白髭土〉
ヘルグリッジが独立した無法地帯たる最大の原因が、地球上でヘルグリッジの大地にのみ含まれている成分不明の土、白髭土である。
白髭土には人間の覚醒作用を持ち、ヘルグリッジに入りそこに住んでいるだけで代謝能力の超向上、身体能力の高度発達、異形化など通常の世界ではありえない肉体変化が起こる。こうして超人化した人間は『ワカ』と呼ばれる。ヘルグリッジで1年以上過ごすと人は完全にワカになる。
どの程度の恩恵を受けるかは体質によって左右され、特に白髭土に適合した人間は一国を滅ぼしかねないほどの強さのワカになるという。
また白髭土は肉体だけでなく精神にも作用する。影響を受けた人間は次第に狂暴で残忍な性分になっていくのだ。この性格の変化もヘルグリッジの無法化を招いている理由である。
ではなぜヘルグリッジの犯罪者達が街外部に流出しないのか。その理由は白髭土の中毒性にある。ワカが外部に出て白髭土の影響を受けなくなると、その肉体はいっきに衰えていく。たった一日で10歳もの年を取ってしまうのだ。白髭土をその効能を保ったまま運搬する技術は未だになく、ヘルグリッジにワカは繋ぎ止められる。そしてそれがヘルグリッジと外界の断絶を作っているのだ。
出典:世界の街図鑑⑥タウエル大陸