第2話 復讐
「それでさ爺さん。なんで私を生み出したの?」
先ほどまで仰向けになっていた台に腰かけたクレイジーが犀子に話しかけた。
「いい質問じゃのう。ワシの目的はただ一つ、祖国への復讐じゃ」
「復讐…。なるほど、だから私の体内にこーんな物騒な兵器を備え付けたワケかぁ」
クレイジーはすんなり納得したようだった。
「ああその通り。クレイジーの体にある108の秘密兵器。これらをぶっ放して地図からあの国を消すのがワシの長年の野望なのじゃ」
「すっごい強い恨み。よっぽどの事をされたんでしょうね」
「ああそうとも。」
犀子は待ってましたと言わんばかりに自分の身の上を語り始めた。
「時は40年以上前、軍の特別チームの科学者じゃったワシはお国のために何でもやった。人体実験や大量殺戮兵器の製造!全ては勝つために!」
「ふむふむ」
「だがしかし!軍の上層部は私の行いを国への反乱の危険があると認定し、私をこんなロクな研究設備もない街に追放したんじゃ!」
犀子の顔に激しい憎しみの相が浮かぶ。
「その頃から最低最悪の街だったヘルグリッジ!一度入ったら出ることすらままならないこの世の地獄!ワシは何度も死にかけた!」
徐々にヒートアップしていく犀子。齢70にしてまるで雄弁な政治家のようにクレイジーに向かって話す。
「だからワシは心に誓ったんじゃ。私を裏切った祖国に復讐してやるとのう!」
「へぇ」
「そこからはとても大変じゃった!この地下にまともな研究設備を設けるのに何十年という年月を…」
「なるほどねー。爺さんの身の上はよーく分かったよ」
クレイジーが犀子の言葉を遮ってそう言った。犀子の話が自分の質問の趣旨とは関係ない部分に入ったからだ。
「物分かりのいい子じゃのう。流石は私の自信作じゃ」
犀子の先ほどの憎悪の表情は収まり、毎度のニヤつき顔に戻った。
「それで結局爺さんの祖国ってどこなの?そんじゃ私今からでもぶっ放しに行くんだけど」
とっとと生まれ持った使命を果たしたかったクレイジーが単刀直入に尋ねる。
「ククク……いいとも!教えてやろう!その国の名前は『ジャナナ』!ヘルグリッジから西に一万キロ先のキラバ海に面した国じゃ!」
「ジャナナ…?あれその国ってまだあったっけ」
殺る気満々だったクレイジーの顔がきょとんとした。
「は?何を言うとるんじゃ」
「私の脳内データベースには25年前に海龍皇国に統合されたってなってるんだけど」
「え、嘘じゃろ」
「いや間違いない。海皇に敗戦して統合され現在名は『海龍皇国蛇奈々府』だよ」
つづく