第1話 爆誕
道路に転がるゴミ、注射器、人の死体……
燃え上がる建物、湧き上がる腐臭、聞こえる悲鳴……
犯罪発生率87.7パーセント、年間殺人事件数6万件、ハダヨークタイムズ世界最低都市ランキング20年連続1位で殿堂入り……
……その街の名はヘルグリッジシティ。
そんな最低の街にある一人の年老いた男がいた。名を犀子八郎という。
〈ヘルグリッジ三番通り地下、犀子研究所〉
床に散乱した謎の機械の山に、唯一の光源である天井からぶらんと吊るされた電球。そんな陰鬱な研究室の中で白衣の犀子は何やら叫んでいた。
「はぁはぁ、ついに完成させたぞぉ!完全自立式破壊兵器ヒューマノイド!その名も『COOL零―Z』!!!」
犀子の前の台の上に一応の服を着せられたヒューマノイドが置かれていた。見た目は肩まで伸びた紺色の髪の少女。大量のコードで怪しい機会に繋がれ仰向けにされている。
「さあ目覚めよCOOL零―Z!ワシをこんな所まで追放した祖国に今裁きの鉄槌を下すのじゃ!スイッチON!」
そういうと犀子は手元にあったボタンを勢いよく押した。ヒューマノイドと機械を繋いでいたコードが一斉に外れ、その体からバチバチと電流があがった。
「よし!いいぞいいぞ!もうすぐじゃ!」
とその瞬間あたりが眩しく光った。
どかん!という音と共に爆風がして犀子の体が後ろに思いっきり吹っ飛ばされた。
「いてて…」
犀子はもぞもぞと体を起こし、置かれていたヒューマノイドの方にゆっくり目をやる。
「……ここ、どこ?」
そこには人間と見分けのつかないヒューマノイドの少女がじとっとした目を開け体を起こしていた。どうやら犀子の開発は成功したようだ。
「やった!やったぞぉ!やっぱりワシは天才じゃ!」
博士は大急ぎでヒューマノイドの元に駆け寄った。ヒューマノイドは何が起こったのかよくわからずまだ辺りをきょろきょろしている。
「えーっと、どちら様でしょうか」
犀子に気づいたヒューマノイドが話しかけた。
「ワシは犀子。君の開発者じゃ」
「開発者?爺さんが?」
ヒューマノイドはそのジト目で博士の顔をまじまじと見つめた。
「ああそうとも。君はワシの手によって生み出された破壊兵器!その名も『COOL零―Z』だ!」
「くーるぜろぜっと?なんかしっくりこない名前。長ったらしいし、最後がZなんて旧時代的。もっとセンスあるのがいい」
出会って間もない自分の生みの親にヒューマノイドはいきなり毒をはいた。
「そ、そうか?かっこいいと思うんじゃが」
「んじゃさゼロをれい、ゼットをジィーと読んで『くーるれいじぃー』、略してクレイジーなんてどう?」
「なるほどクレイジーか。ふふ、まあ悪くないんじゃないかのう」
そう言って犀子はニヤリと笑った。
つづく






