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#5. 訪問

「ってことがあったんだよね」僕は教会の礼拝堂でドロシーにことのすべてを話した。夜も遅く、子どもたちは眠っていた。


 ドロシーはため息を吐いた。


「〔白の書〕と〔黒の書〕ねぇ。聞いたことがないわ」ドロシーは考え込んで続けた。「それがどんな方法なのかにもよるわよね。もしかしたらものすごい犠牲を払わないと取り戻せないとか」

「〈魔術王の右腕〉みたいに?」


 ドロシーはうなずいた。それは確かに問題外だった。


「直し方……スキルの直し方ねえ……。普通のスキルならもう一度取得し直すとか色々方法はあるんだろうけど……」ドロシーはまた呟いて続けた。「そもそも()()()()()()()ってなんなんでしょうね?」


「え?」僕は驚いて尋ねた。「どういう意味? ユニークスキルっていっぱいあるんじゃないの?」


「ないわよ。生まれながらにスキルを持っている人はいるけど、それは先天性スキルとか遺伝スキルとかってだけでユニークスキルって呼び方はしないわ。そもそもそういうスキルは『ユニーク』ではないわね。……でも、ユニークスキルって言葉自体には違和感はないんだけどね、ある人のせいで」


「ある人って?」

「あるSランク冒険者がいたのよ。ユニークスキルを持った冒険者ね。その人がいたからユニークスキルって言葉が広まったのよ」

「その人ってどんな人?」


 ドロシーは肩をすくめた。


「さあ、知らないわ。知っているのはどんなスキルだったかってことだけ。ああ、そういう意味ではスティーヴンににているのかもね」

「どんなスキル?」


 ドロシーは言った。

「その人はね、不死身だったのよ。いくら傷つけられようと腕が取れ、足がもげ、首をへし折られようと生き返った。伝説の人ね。でも死んだって聞いたわ」

「どうして?」


 ドロシーはまた肩をすくめた。


「で、あなたはどうしたいの?」ドロシーは尋ねた。

「え?」

「〈記録と読み取り〉を取り戻したいのかってことよ」

「それはもちろん取り戻したいけど……」僕は思案した。「どうやって?」

「やり方は色々あるんじゃない? 例えば、王子を人質にとって方法を聞き出すとか?」


 僕は顔をしかめた。


「横暴だ」


 ドロシーは片方だけ口角を上げた。


「あら。今までだってエレノアを誘拐したりとかリンダを誘拐したりとか、色々やってきたんでしょ?」


 うっと僕は口をつぐんだ。ぐうの音も出なかった。


「何にせよ、今ソムニウムにスキルを取り戻す方法があるのは確かよ。どうにかして手に入れたいわね」ドロシーが思案していると、教会の扉がノックされた。ドロシーは僕と顔を見合わせると、いそいそと扉に向かって、開いた。

「誰?」ドロシーは尋ねた。


 そこにいる人物をみて、僕は目を見開いた。


「アールという。この国の第二王子だ。……どうか入れてほしい」


 ドロシーが驚愕して、僕を振り返った。

 アールはメイドを二人連れていた。彼はドロシーの視線を追って僕を見ると、言った。


「スティーヴン。……君に話さなくてはいけない事があるんだ。ローレンスには話すなと言われたけど……それは僕の心が許さなかった。どうか入れてほしい」


 僕は頷いた。

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