# 41. 少しの差
僕たちは王都を出た。
あの後、僕はアムレンに、すべての《マジックボックス》のパスワードを変えるように言った。オリビアがずっと見ていたからだ。
オリビアはオートマタの部品を売れば相当な金になるから〔魔術王の左脚〕の代金はいらないと言って、アンヌヴンに戻っていった。人騒がせな奴だったが、まあ、彼女のおかげでロッドに〔魔術王の左脚〕が渡らなかったと言えばそうなのだった。なんだかんだ裏で最も活躍していたのだった。
アンジェラとレンドールは王都での守護者の組織改変に追われているだろう。
ソムニウムにたどり着くと、すでに夜も遅かった。
僕たちは解散してそれぞれの宿に戻ろうとする。
そのとき、ドロシーが僕とマーガレットを呼び止めた。
「まず、スティーヴン」
「何?」僕は首を傾げた。
「ソムニウムから出て行くなんて言わないわよね?」
ドロシーの言葉にリンダが反応した。
「出て行くのかにゃ!?」リンダは僕の肩をつかんだ。
「いや、出て行きませんよ。あれは、何というか……」僕は苦笑いして続けた。
「僕は全部自分でなんとかしないといけないと思っていたんですよ。でもわかったんです。悩んだり、辛かったり、自分一人ではどうしようもないときは誰かを頼ってもいいんだって。僕はドロシーもリンダさんも、マーガレットさんも、それからテリーさんも、みんなを頼ることにしたんですよ。だから、僕一人で抱え込んでソムニウムから出て行くなんてことはありません」
リンダは微笑んだ。
「どんどん頼ってくれにゃ!」
「あー、そうだな」マーガレットが言いにくそうに口をひらいた。
「私も同じだ。みんなを頼るよ。今まで見たいにひとりで猪突猛進したりしない。もう少し、仲間を頼って戦う。それに、〔魔術王〕の血族だからと言って、魔術師ってわけじゃないからな。父さんみたいに」
僕は頷いた。ドロシーも頷いて、微笑んだ。
「全部元通りね」
「少しの差はあるけれどね」僕が言うとマーガレットが言った。
「ああ、そうだな」
「じゃあ、また明日」
誰かが言って、僕たちは宿に戻った。
平穏な毎日が戻ってきた。
第二章完結です。第三章は準備中です。
来年もどうぞよろしくお願いします。