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# 34. 白と黒3

 ここでようやく僕はあのとき感じた違和感の正体に気付いた。


 王都で死んだときのことだ。オートマタを壊して、僕は上空に浮かぶローブの男を見た。〔魔術王の左脚〕をつけていた彼を見たとき、彼はアムレンだと思った。


 そのとき感じた違和感は、本当にアムレンなのかということだった。

 双子である二人のかすかな違いに気付いたのだと思う。

 そして、別のだれかなのではないかと思ったのだ。

 思えばアンジェラがアンヌヴンでアムレンに会ったとき言っていたではないか。


 ――誰かに似ていましたが、誰だか思いつきません。


 アンジェラはロッドの顔を憶えていた。そのうえでアムレンの顔を見た。ロッドは常に目に布を巻いている。それに髪も長い。すぐに気づけなかったのだろう。




 第二ループでアンジェラに渡したはずの〔魔術王の左脚〕が敵の手に渡った理由もはっきりした。アンジェラはロッドに手渡した。そして彼が装着した。僕の中で点だった要素同士が繋がっていく。




 マーガレットは顔を上げて、ドロシーに尋ねた。


「アムレンは白なのか?」


 ドロシーは下唇を噛んだ。


「それが、わからないのよ……。白なんじゃないかと私は思う。でも白と言い切れない要素があるの」


 ドロシーはまた、羊皮紙を入れ替えた。


「アムレンは、父親が『魔術師に戻りたがっている』と言っていたのよね。そして何世代も魔術師と決別して隠れて暮らしてきたとも。そうなると、もともとアムレンの家系は、つまり、マーガレットの家系は、〔魔術王〕の血族ではあるけれども、魔術師ではない、という立場をとってきたのではないかしら? そして、アムレンの父親と妻の裏切りがわかって、アムレンは二人を殺した」


 僕は言った。


「そうだね。そうなると白なんじゃないの?」


 ドロシーは羊皮紙に目を落とした。


「ただ……ただね、アムレンはティンバーグから〔魔術王の左脚〕を奪ったのよね?」


 僕は頷いた。


「うん。デイジーがそう言っていた」

「そこが引っかかるのよね。ティンバーグから奪ったなら、それはもう魔術師と言っていいと思う。それに、ロッドと協力関係にあるとしたら、アムレンも黒ってことになりそうだし。ああ、もうわからないわ。どっちなんだろう……」


 ドロシーは頬に手を当てた。

 しばらくそうしていたが、彼女は首を横に振った。


「こればかりは直接聞かないとわからない」


 僕は尋ねた。


「じゃあ、この先どうしたらいいかわからないってこと?」


 ドロシーは言った。


「いえ。そうじゃないわ。いくつか手はある。一番簡単なのは、王都に行って、オリビアから〔魔術王の左脚〕を言い値で買って、私たちが保管するって方法。ただ、これだとアムレンが白か黒かは結局わからない。それはつまり、あなたたち二人の父親が、どちらの陣営かわからないまま終わるってことね。それに、私たちで〔魔術王の左脚〕を保管するのも、危険が伴う。もしアムレンかロッドが、オリビアを見つけたら、彼女の記憶を頼りに私たちを探しにくる。きっとね」




 マーガレットは僕の手を取った。

「私は、真実を知りたい。アムレンが本当はどちら側の人間なのか。魔術師陣営に落ちたのだとしたらどうしてなのか、知りたい。スティーヴンはどう思う? 自分の父親がどちらの人間か知りたくないか?」




 僕は頷いた。

「僕も知りたいです。それに、どちらにせよ、アムレンやロッドとは決着をつけないといけない気がするんです」




 それを聞くとドロシーが頷いた。

「ええ。そうなのよね。私たちを探しに来るってことはこの街を襲いに来るかもしれないってことだから。……決着はつけておきたいわ」


 ドロシーはマーガレットを見た。


「まだまだ分からないことは多い。でもこれは言えると思う。マーガレットはアムレンには殺されない。だから、あなたが頼りなのよ、マーガレット。アムレンと交渉できるのはあなたなの」



 マーガレットはうつむいた。彼女は多分自信がないのだと思う。それは彼女の中に今まであった絶対的な自信が一度揺らいでしまったからだろう。


 僕はマーガレットに言った。


「何かあっても、助けに行きます。必ず」




 マーガレットは少し顔を赤くして、頷いた。



「まずはどうする?」僕はドロシーに尋ねた。




「リボンの回収よ」


 ドロシーは言った。


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