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その後のギルド『グーニー』2

 冒険者たちはマップを重要視している。どこに魔物が出現しやすいか、どこに素材が隠されているか、どこに鉱物があるかを知るためだ。それは迷宮ダンジョンに迷わないために重要な役割も担っている。


 彼らは新しいマップの完成を楽しみにしていた。なぜなら今までのマップを作っている人間は平民で、文字の読み書きができないという体たらくだということをしっていたからだ。冒険者たちは以前のマップ係――スティーヴンがギルドから追い出される様を見て大笑いし、新しいマップ係を歓迎した。


 その日、新しいマップが完成した。10枚しかないそのマップは飛ぶように売れた。Sランク冒険者が優先的に買うことができた、といってもこの辺境のギルド『グーニー』にSランク冒険者など一人しかいない。ギルドマスター、アレックが「我がギルドにはSランク冒険者がいる」という見栄を張るために無理やり連れてこられた冒険者。名前をマーガレット・ワーズワースといった。彼女はマップを手に取り開いた。マーガレットのパーティメンバーである男がマップを見ると言った。


「おお、今までとは全然違うな、これが正しいマップか」


 彼は後衛でAランク冒険者だったが、最近はマーガレットにただついてくるお荷物でしかなかった。髪をいじって女遊びばかりしている男だった。名をレニーといった。


 彼女がマップを持つ手は震えていた。


「なんだこのマップは……」


 マーガレットは歯ぎしりをして、声を漏らすと、マップを引き裂いた。周りにいた冒険者たちが驚いて彼女の方を見た。マーガレットはマップを販売していた受付の女性に向かって叫んだ。


「なんだ、このマップは! ギルドマスターを呼んで来い!」


 マーガレットの叫び声に気づいたのか、アレックが自室から出てきた。


「何をお騒ぎになっているのです? マーガレット様」

「このマップは何だと言っている。元のマップ係に戻せ!」

「それは無理なご相談です。彼は1週間も前にここを解雇しましたから」

「なに!」


 マーガレットは知らなかった。ポールがスティーヴンのあごを殴っていた時、彼女はダンジョンに潜っていた。


 歯抜けのアレックは取り乱して尋ねた。


「どうしてそれほどまでにお怒りなのですか? 以前のマップ係は『空間転写』という下位スキルしかもっていなかったのですよ。『転写』スキルの方が正確なマップを書けるに決まっています」


「原本を持ってきて確認すればいい。どれだけ違うかがわかるはずだ!」


 マーガレットはボロボロになったスティーヴンのマップを大事そうに触りながら、ギルドを後にした。


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