後日談
ギルドでの仕事は大忙しだった。
ダンジョンの成長はエヴァによって引き起こされており、その総数がいくらになるのか全く分からなかった。ギルドのメンバーたちは他のクエストそっちのけでダンジョンをしらみつぶしに攻略していった。
うれしいことに、他の街から冒険者が多くやってきて、ダンジョンの攻略を手伝ってくれた。彼らがやってくることで街の景気が良くなった。
冒険者を相手にする商人たちがぞろぞろとやってきたのだ。
街は活気であふれ、人でにぎわうようになった。
スティーヴンは大わらわでマップを作り、提供していった。スティーヴンのマップはよく売れた。日に画くマップの数は増えたが、それでも以前よりずっと毎日は充実していた。
◇
スティーヴンは薄暗い蛍光石のランプを頼りにして羊皮紙に線を引いていく。ユニークスキル〈記録と読み取り〉を使って原本であるマップを記憶して、後天的スキル『空間転写』によって羊皮紙の上にそれを表示する。オレンジ色の文字と図が羊皮紙の上に描かれる。その線をなぞっていく。均一な線はまるで後天的スキル『転写』によってひかれたかのように美しい。
壁の近くに置かれた魔力時計は時刻が22時を過ぎたことを示している。
「これで10枚だ」
彼はマップの最後に自分の名前を書き込んだ。いそいそと荷物をまとめ、蛍光石のランプをもって彼は写本係の部屋を出る。
「おうおう、スティーヴン。遅かったにゃ」
リンダたちパーティが待っていた。
「先に酒場に行っていてもよかったんですよ?」
「そんなことできないにゃ」
「ああ、そうだぞ、スティーヴン」
彼らは微笑んでスティーヴンを迎えた。
「ありがとうございます。じゃあ、行きましょうか」
「おう」
スティーヴンたちは酒場へ向かった。
彼らの日常は幸福であふれていた。
少し遅れましたが、これにて第一章完結です。読んでいただきありがとうございました。
第二章につきましては準備中です。お待ちください。