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教会

 スティーヴンたちはいくつかのダンジョンを攻略した。


 スティーヴンの働きにリンダたちパーティ以外の冒険者から称賛の声が上がった。


「マップ係なのにあんなことまでできるのか」

「あの防御魔法異常だろ」


 スティーヴンのうわさは広まっていた。


 数日後。


 ギルドに若い騎士が慌てた様子でやってきた。


「スティーヴン様というマップ係はいますか!?」


 またもやグレッグに呼び出されて、スティーヴンは受付まで歩いて行った。


「ぼくですがなんでしょう?」

「騎士に負傷者が多数出ていて大変なのです。今すぐ来てください! クエスト申請ももちろん行います。ただ緊急事態なのです」

 ラルフを見ると「行ってやれ」と頷いた。


 スティーヴンは彼についていく。若い騎士はスクロールを取り出した。


「〈テレポート〉を行います。向こうにいる騎士に話しかけてください」


 そういうと彼はスクロールの封を切り、言った。


「アクティベイト」


 スティーヴンは懐かしい感覚を味わう。

 転移した先はどこかの村だった。足元でスクロールが消失していく。

 そこで初めてスティーヴンは気付いた。

 〈テレポート〉は二枚で初めて成立するものだということに。


 行先と、手元の二枚が必要で、だから、あのとき〈テレポート〉を発動できなかったのだと彼は気付いた。


 スティーヴンは慌てふためく村人の間を通っていく。負傷した騎士が運び出されてくるのは教会だった。教会は屋根の中心が崩れ落ちていた。


 スティーヴンは騎士の一人に言った。


「ギルドから来ました。スティーヴンです」

「ああ。君か。待っていたよ。負傷者を治してくれないか?」


 地面に横たわる騎士たちは12人、腕がないものが数人、皆が呻いている。


「わかりました」


 連続詠唱。スティーヴンは目の前に次々と〈エリクサー〉を出現させる。さすがに〈エリクサー〉ほどの長さになると同時に出現させるのは難しい。出現させては「activate」を書き込んでいく。


 12人の騎士はすぐにケガが治っていく。腕のなかった騎士も腕が戻り、泣いている。


「ありがとう! これで仕事を失わずに済む」


 彼らはスティーヴンを取り囲むと口々に感謝を言った。

 と、騎士の一人が崩れた教会から出てきた。


「崩れた天井の下敷きになっている騎士がいる。助けてくれ」


 スティーヴンは感謝する騎士たちを抜け、彼とともに教会に入った。古い教会だった。屋根が崩れ、その影響で、地面まで崩れ落ちていた。血の匂いがした。


 スティーヴンは地面の穴を避けて、騎士についていく。教会の奥に地下に続く階段があって、崩れかけていたが、そこを下っていった。


 水の滴る音がした。


 地下室の壁は棚のようになっていて、何かが燃えた後のように黒くなっていた。崩れ落ちた瓦礫の下にはベッドのようなものが黒く残っていた。

 スティーヴンはそれに見覚えがあった。


 彼は騎士に尋ねた。


「ここは……【コレクター】の……」

「ええ。そうです。彼女が何かを隠しているとの通報があって、ここに来たのですが、彼女はスクロールを使って自害しました。その結果がこれですよ。〈ファイアストーム〉を使ったと思われます」


 ――これは〈ファイアストーム〉ねえ。もってるわあ。


 彼女の言葉を思い出す。スティーヴンが書く前から彼女はそのスクロールを所持していた。あの最期のとき使ったのもそのスクロールだろう。


「こちらに負傷者が!」


 騎士が言ったので、スティーヴンはついていき、〈エリクサー〉を使った。


 心にドロシーのことが渦巻いていた。


 自分が関与しなくても彼女は死ぬ運命だったのか? 

 あのとき来た謎の男、「アクティベイト」を唱えた低い声の男は、自分を助けに来たわけではなかったのか?


 地上に戻り、騎士たちの感謝の言葉を投げかけられる中で、スティーヴンはもやもやとした考えを払えずにいた。


 彼女の最期を記録した。


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