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【コレクター】との日々1

「調べたのわたしい。あなたスクロールぜんぶ暗記してるわねえ?」


 スティーヴンはぎょっとした。


「あ、なんでわかったのかって顔してるう。あなたあの領主の娘も救ったんでしょお? 確かエミリアってお。騎士たちが噂していたわあ。スクロールもないのにスクロールを使ったってえ。私しってるのよお。スキルの『空間転写』使えば何度もスクロールを使えることお。わたしは残像使ってやってみたことあるわあ。じいっとスクロール見てから白紙の羊皮紙見ると文字が浮かんで見えるのお。でもあなた本当にスクロール持ってないんでしょお? っていうことはあ、記憶してるってことじゃないい? ただの予想だったけどさっきの反応は本当ってことねえ。すごおい」


 彼女は恍惚な笑みを浮かべ、スティーヴンの額にキスをした。


「この中にどんなスクロールが入ってるのか見てみたいわあ。解剖しようかしらあ」

「――――!」

「なあんて、嘘お。でもわたしのために書いてくれないとお……」


 彼女はナイフを取り出した。


「痛いわよお」くすくすと彼女は笑う。

「――――!」

「わたしの言うこと聞くう?」


 スティーヴンは大きく何度も肯いた。【コレクター】は体を起こすと両手を広げた。


「ここはねえ。誰にも知られていない場所お。街の中にもないのお。だからゆっくりスクロールが書けるわよお。それにい」


 【コレクター】はまた顔を近づけた。


「貴方、可愛い顔しているから食べてしまうかも」


 口調が変わった。スティーヴンは背筋が凍り、肌が粟立つのを感じた。


「ふふふ」そう言って彼女はベッドから降りた。

「ついてきてえ。作業場に連れて行ってあげるう。これからずっと過ごす場所お」


 にっこりと奇妙な笑みを浮かべて彼女はいった。


 薄暗い部屋だった。机と大量の羊皮紙が置いてある。蛍光石のランプが天井から吊り下げられていて、机の上を照らしている。


「座ってえ」


 言われるがまま、スティーヴンは座る。白紙の羊皮紙が準備される。


「まずは〈エリクサー〉を書いてえ」


 〈エリクサー〉はこの羊皮紙では足りない。もっと長くなければいけない。そう伝えようとしたが声が出ない。ためらっていると勘違いしたのか、【コレクター】はナイフを取り出した。


「ねえ? 聞いてるの?」


 また口調が変わる。目が鋭くなる。スティーヴンは両手を広げて羊皮紙に当てた。


「ああ、長さが足りないのねえ。いいわあ。後でつなげるからあ」


 そう言うのでとにかく必死になって『空間転写』を行い、〈エリクサー〉を書き上げた。羊皮紙は5枚必要だった。


「ああ愛しの〈エリクサー〉。こんな術式だったのねえ。難解すぎてわからないわあ。でもきれいねえ」


 【コレクター】はそう言ってしばらくうっとりと羊皮紙を眺めていた。

 スティーヴンは早く帰らせてほしかった。パクパクと口を動かして「帰らせてくれ」と伝えた。【コレクター】は微笑んだ。


「だめよお。まだこの中にはたくさんスクロールが詰まっているんでしょう? 全部吐き出すまで帰らせないからあ。あ、そろそろお薬の時間だあ」


 そう言うと彼女はまた口に薬を含み、スティーヴンに口づけをした。


「ぷはぁ。これ癖になりそお」ふふと笑うと解毒薬を飲んで彼女は言った。

「次はなんでもいいから書いてえ。なるべく高価なやつねえ」


 いわれるがまま書き続けた。マップ作製で慣れているとはいえ、細かな文字をこう何度も写すことはなかったから目が疲れてきた。

 それでも、彼女は次々にスクロールを書かせた。


「〈アンチマジック〉! すごいい!」

「これは〈ファイアストーム〉ねえ。もってるわあ」

「〈ウォーター〉くらいもってるわよお」


 5本の長いものと10本の短いものを書かされた。


「今日はこのくらいでいいわあ」


 彼女はそう言うと、また、口移しでスティーヴンに薬を飲ませた。


「おやすみい」

 意識が薄れていく……。


ブックマーク、評価ありがとうございます!!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 拉致監禁なんてどうも見ても犯罪者だけど、背景に何かあるならコレクターも善人なのかも……あるいはここから復讐劇的な展開に? 予想できる幅が広すぎて先が読めない。続きが気になります。
[一言] せっかく面白い作品なのに一気に最悪になった。 秘匿する内容は解明されて高額な作品産む? なんてくそ展開。主人公陥れたいだけの駄作を 量産するのはマジやめて欲しい。 18話まで良作だったのにす…
[気になる点] まさかのサイコパス系魔女っ!そして急展開! [一言] 弱点ってこのことですか? 面白いです。これからもがんばってください!
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