少女
村についた時、俺は違和感を感じた。勇者の気配がない。
それに村の周りにいるという魔王様の配下、といっても下級モンスター程度の者達がいないのだ。
「おかしい…」
顎に手を当て考える。冷静である俺は、周りを観察した。
村の周りにはたくさんの焦げ付いたあとがある。
きっと下級モンスターと勇者が戦いあったのだろうと思われる。
今頃下級モンスター達は村の中で暴れているに違いない。
そう判断した。
俺様には配下といえる配下はいないが魔王様の配下、鳥人の王ガードンには負けられない。
ちなみに俺は獣人の王ダブラ様である。
下級モンスターと呼ばれるのは配下ではない。ただの雑魚だ。魔王様のほんの1パーセントの力を分散させただけのものだ。
だが例え下級モンスターであっても人間などには負けはしない。
人間など恐るにに足らん。
そう思い村の中に入った。
だが俺の目の前に写っていたのは、たった一人の魔法使いを相手に下級モンスターが次々と倒されている有様であった。
光が飛び交い下級モンスター目がけて飛んでいく。
その姿は、まさに神々しかった。
「うつくしか・・」
一瞬だが、その女神のような人間の魔法使いの少女に見とれてしまった。
「俺様としたことが」
そう思ったが、その姿は目に焼き付いて離れない。
勇者達四人のうちの一人だろうか。
彼女の放つ魔法はとてもではないが下級モンスターでは相手にならない。
「おのれ・人間風情めが・・」
唇を噛み血が口から顎へと流れ落ちる。
いくら見とれようとも、それは錯覚にすぎないと思い、奇声をあげ魔法使いの少女に叫んだ。
「きさまぁー」
俺は怒りに狂い魔法使いの少女に突進した。
魔王軍が敗退してはならない。まして獣人の王たる自分がいかないで何になる。
魔法使いの距離を詰めるように突進する。
「また変なのがきたわね」
少女がそう言いと魔法の詠唱をはじめた。
そうはせないとわたしは勢いよく突進したのだった。
だが彼女の放つ魔法はことごとく俺様のからだ目がけて飛んできた。
「たかが人間一匹に俺様の一撃が届かないとは…」
そう思い俺は、魔法の中で消滅したはずであった。