同期の佐原さんのことを俺は。
「立花くん休憩にいくの?」
デスクから離れ、廊下にたどり着いたところで茅先輩に声を掛けられた。今日もいい胸をされている……のだが、今日は結構エロめだった。最近、寒いせいだろう。
「たばこっす。それよりカーディガン着始めたんですね」
清潔感がわんさか漂う白カーディガン。それにスーツって……茅先輩最高ッ!
「あーそうなのよ。最近、また寒くなったからね。風邪には気を付けてね」
「茅先輩もっすよ」
同僚の男からは羨まれるくらいには会話したな。
てか、廊下出てから感じる……。
「さむッ」
ポケットに手を入れて喫煙所に向かう。
「お、立花じゃないか。今日も元気なさそうだな」
喫煙所でたびたび会うこの先輩は、去年までプロジェクト一緒だった上司。
「お疲れ様です、四之宮先輩。四之宮先輩も元気なさそうですけど、何かあったんですか? 彼女と」
「立花……あんまり適当なこと言うと胸ぐら掴むぞ」
タバコを片手に眉間にシワを寄せてこちらを睨んできた。
「それは勘弁してください」
「それより最近どうなんだ? 佐原と。めちゃくちゃ仲がいいって聞くけど、お前ら付き合ってんじゃないのか?」
四之宮先輩はタバコを食わせながら訊いてくる。
俺は思わずタバコの箱を握り潰してしまった。
「そう見えるんですかね? 冗談でもきついっすよ……」
「ご、ごめん……じょ、冗談っだって」
四之宮先輩は焦って話題を転換させる。
「今日の茅見たか?」
周りに誰もいないのに小声で訊いてきた。ひそひそ話のよう。
四之宮先輩から茅先輩の話しがくるのは、驚きでタバコを吸った瞬間にむせてしまった。
「きッ、きょ、今日の白カーディガンは最高っすよね」
「エロ過ぎて、流石の俺でも会話できなかったぞ。部長とかずっと外見ながら、茅と話してたからな」
どんだけ影響力が高いんだ……茅先輩は。
「まぁ俺は声かけてくれたんで話しましたけど」
「は? 立花……胸ぐら掴んでいいか?」
四之宮先輩……どんだけ羨ましいと思ってんだよ。
一呼吸おいて、四之宮先輩に尋ねてみた。
「もしかして四之宮先輩……茅先輩のこと」
「それ以上言うなよッ!」
これは……察し。
「本人に言うわけないじゃないですか」
「立花こそ、佐原のことどう思ってんだよ?」
切れ気味な四之宮先輩にはもう呆れてしまう。タバコを深く吸った。
ネクタイを少し緩ませ、タバコの先端がだんだんと灰に変わっていく姿を眺めた。
「実際どうなんすかね。確かに可愛いとか思いますけど。付き合うとか以前に釣り合ってないように思えます。性格も実はいいし」
「聞く限り、佐原のこと好きって言ってるように聞こえるぞ」
唖然とした。
好きとは思ったことなど一度もない。カワイイ、性格いい。でも不釣り合い……この3つで俺が、佐原のことを好きだと証言しているところは1つもないと思うのだが。
「きっと好きにならな――」
「頑張れよッ! じゃあな」
俺の背中を叩いて四之宮先輩は休憩を終えた――
「さむッ……」
「よ、佐原。寒そうだな」
出勤時、エスカレーター待ちでたまたま佐原に出くわした。
コートを着て、マフラーし、手袋まで。
「スカートから出てる足って寒くないのか? ってふと思った」
「は? それ私以外に訊いたら引かれるわよ」
マフラーで顔を隠すようにしている佐原は、手袋を外し始める。
「マジか。佐原に訊いてよかった。まぁ答えはまだ聞いてないんだが」
「あー寒いっちゃ寒いけど、足が寒いくらいで風邪は引かないし、実際寒いとか思わないかな。立花こそ寒くないの? マフラーとかしてないけど」
防寒着としてはコートのみの俺に佐原は心配を寄せてくれているらしい。
「マフラーも手袋も持ってない。電車通勤だし、駅からここまですぐだし」
「風邪引いたらヤバくない? マフラーはした方がいいよ」
佐原のマフラーは大きめのマフラー。顔を覆えるくらいにはデカい。ひざ掛けかな? ってレベルだ。俺がこれを付けると……うん、キモいな。
「いや、俺はいいよ」
「いいならいいけど、風邪は引くんじゃないよ」
風邪かー。風邪引いたら誰にも見てもらえないし、飯もないからな……結構大変じゃん!
気を付ければ何とかなると思う。でも、今日電車内で、咳をしてる人結構いたような……。
「まあ風邪ひいても佐原が看病してくれるだろ」
エスカレーター内で黙り込むより、冗談を言ったほうが和むだろう。
「え、い……いや、いいけど……」
「えっ!? あ……そ、そんとき、は……よろしく、お願いしようか……なあー」
まさかオッケーが出るとは。こいつ彼氏いなかったのか?
取り敢えず風邪ひいてみようかな。
「ワザと風邪ひくのは無しだからねッ!」
……。
「は、はい」
ありがとうございます。
下手ながら執筆いたしました。
楽しんでください。