同期の佐原さん。
「立花くん、この資料お願いね」
「了解っす」
俺は上司に仕事を貰う。今回貰った仕事は、まぁ楽と言えば楽。今日中に終わるくらいである。チェック期間が3日後なので、2日間暇できるわけだ。
「あら、立花くんじゃない」
「あ、どーもっす。茅先輩はもしかして、これからお昼ですか?」
この美人でスレンダー。しかも胸が発達している絶体的人間は、ちょくちょく仕事柄絡むくらいの上司だ。俺が茅さんと会話していると、背中に殺意の帯びた視線が刺さってくる。
「そうそう。立花くんも一緒にどう? まだ食べてないんじゃない?」
胸元あるほくろが溜まらなくエロい。俺は誘惑されているのでは? なんてバカなことを考えてしまえるほど……。
「いえ遠慮しときます。今日中に終わらせたい仕事があるんで」
「んー……そっかあー。わかったわ。仕事がんばってね」
「ありがとうございます。また機会があれば」
お昼を食べに行く茅さんの背中は少し曲がっているようにみえた。
腕時計で時間を確認した。
作業を始め2時間が経過。14時30分を回るところだった。定時まで残り時間はわずか。
「立花くん」
作業を再開させようとしたところに上司がやってくる。
「ごめんけど、この資料もお願いできるかな? 期間1日伸ばすから」
こういう後からゴメンタイプは多い。実際今やっている仕事と合わせても2日間で終わる。余裕だった。
「わかりました」
引き受けた矢先に最速で1個目の資料を完成させていく。
「あれ立花くんじゃない」
俺が集中しているにも関わらず声を掛けてきたのは、やたらと絡んでくる同期の女性。負けず嫌いだとか……そのため仕事上で何かと絡んでくる奴だ。
「どうした、佐原さん。俺は見ての通り仕事をしているんだ。君みたいにコーヒー片手に暇を過ごせないんだ」
「へえー。どんな資料作ってるの?」
モニターを見ながら手にある資料を渡した。
「はあ!?」
資料を読み始めて終えるまで約2分。
「いまどのへんまでいってるのよッ」
佐原は俺の画面を無理やり覗き込む。その姿勢に俺は椅子から離れた。
「早すぎでしょ……」
「そうか? こんなもんだろ。佐原さんと同じくらいのペースだと思うんだが。言ったら、佐原さんより遅いけどな」
「そ、そ、そうね……まだまだかな、立花君は」
コーヒーを持つ手が震えている。負け嫌いというのは、この辺の態度で見て取れる。
「あの、佐原さん……」
「あ、あんた……佐原くん……まぁ、なかなか……ね」
「いや、佐原さんコーヒー……」
佐原は手が震えコーヒーをちょびちょびと溢していた。
「ああああ!! ごめんなさい!! 資料があ……どうしよ……どうしよ」
慌てだす佐原を見て唖然としてしまえる。今の佐原……めちゃくちゃ弱そおー。
冷静になっていない佐原だが、どっからか台拭きのタオルを取ってきて、一生懸命にコーヒーを拭きとっていった。
「ほんとうにすまない事をした」
佐原って誤れるんだ。などと感心してしまった。
「上司の元には私もついていく」
「そんなことはやらなくていい。一人でいくから問題ない」
「いや、これは私のケジメである」
何そのセリフ……かっけえー。
「先ほどは……その……すまなかった」
「別に気にすることも無いだろ。まぁコーヒーは机に置いて話をした方がいいぞ」
佐原がついてくるとのことで二人で上司の元へ行き、資料を再発行して貰った。佐原も頭を下げた姿で上司も納得。上司は怒るような人柄で無かったため怒られるようなことも無く、無事今に至る。
「立花は怒らないのか?」
「なんで?」
「面倒なことが出来て……」
「そのくらいで怒ってたら人生お手上げじゃね」
俺の言葉がしっくり来たようで佐原は黙り込んだ。
腕時計の時間確認すると……15時。
「俺は仕事に戻るけど佐原は?」
「私もそうする」
佐原は、二人きりの時は基本静かだ。変に威張ったりするが、今の感じで可愛らしく見える。
小柄で肩は華奢。ハグしたくなるような身長の低さ……たぶん150後半とか? 顔も可愛い系に寄っている顔立ちだ。
簡単に言うとモテモテ女子だな。
「じゃ、俺デスク戻るわ」
「あ、うん」
「あ……定時に帰れなさそうだったら、佐原の事恨むから」
「やっぱり怒ってんじゃん!!」
佐原とのやり取りは面白い。ダル絡み以外であればだけど――
お読みいただきありがとうございます。