FILE2:フェリス
第二話での主人公は18歳。
異端者ゆえ、軽く虐めの表現が出てきます。
MS XXX年、冬季。
一人の天使が異端なる子をこの世に産み落とした。
その子供は片翼だけが漆黒で、生まれた時も産声をあげない赤子だった。
天使と天使の間から産まれたのに、理由のわからぬ突然変異の出来事。
悪魔の持つ特有のそれに、人々は畏怖した。
誰もが口々に殺せと唱えた。
しかし母親は決してその子供を手放さなかった。
彼女は子供の決して明るくない将来を見越し、少しでも楽になるようにと願いを込めて名付けた。
『聖なる心の導標』という意味合いを含めて、
フェリス と…―。
色とりどりの花が咲き誇り、地を華やかに染める。
大層美しいそれは、人々が足を止めるほどだ。
緩やかな風が緩く編み込んだ髪を撫で、気持ちよくさせてくれる。
だが、聞こえてくるのはその場にそぐわぬモノばかりだった。
「悪魔だ!悪魔がきたぞ!」
「いつまでいるつもりだ!さっさと出て行け!!」
「お前がいるだけで気分が悪いわ。天使の面汚し…!」
罵倒が構うことなく飛び交う。
そんな言葉が降り掛かるのはいつものことだ。
今やその言葉はエスカレートし、死ねという言葉も使われる。
ついには石やモノが投げられる。
町を横切る度にこの様だ。
だがこれは幼い時からのことで、もう慣れた。
皆が恐れていることも、自分が異質である事も全て理解していた。
だが、それ故に言い返したり、やり返したりという事はしない。
彼らもこうすること以外、僕の扱い方がわからないのだ。
それに、たとえ抵抗したとしても、この人数では敵わない。
何せ此方はたった一人なのだから。
最初は辛かったが、この世に生まれてから十六年。
今なら何をされても耐えられる。
たった一人の理解者がいてくれるから…。
歩みを止めて振り返ると、彼らの動きも止まった。
息を呑む声が聞こえる。
そんなに怖いなら近付かなければいいのに、とも思う。
僕は彼らの言動と、自分の思いに苦笑した。
その笑いに畏怖と怪訝そうな視線が集まる。
僕は表情を変えて、薄く微笑んだ。
「すみませんが…。僕はまだ死ねませんし、出て行きません。此処にはまだ僕にとって大切な人がいますから…」
そう、大切な人が――。
彼らは僕の行動に驚愕の目を向け、固まっていた。
それを無視し、一礼するとまた歩き始めた。
その日はもう罵倒もモノも飛んでくる事はなかった。
第二話の主人公は、推定18歳。
主人公出てきたので、人物紹介致します。
名前:フェリス=ハーヴェリー=ディヴァイン
歳:0〜21 / 種族:天使族 / 性別:男
髪:空色 / 瞳:蒼 / 身長:182
突然変異で天使から産まれた堕天使。
片や純白の翼、片や漆黒の蝙蝠羽を持つ。
名の意味は古代オルフェニス語で「聖なる心の道標」
悪魔を連想させる漆黒の片翼から、同族に忌み嫌われる。
唯一の生活の望みで、自分を愛してくれたのは母のみ。
実は長ったらしい名前な奴です;
こんな奴でも気に入って下されば幸いです。