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インプ会議

すっかり日は陰りを見せ僕はインプを連れて図書館から家に帰ってきた。

トントンとリビングから包丁の音が聞こえてくる。

僕が帰ってきた事に気づいたように包丁の音がなりやむ。

母親がリビングから出てきた。

僕の肩の上にいるインプを凝視し目がほほ笑んだ後にクスリと笑う。

「ジェム、あなたにそっくりよ」

僕は全力で否定した。

「こんな赤ん坊みたいな悪魔と一緒にしないでよ!」

すると耳の横から声が聞こえてくる

「こっちも一緒にされたくないな。彼是150年生きてる僕からしたらお前らは赤子同然だぞ。」

母親がまたしてもクスリと笑う。

「そういうところもとっても似てるわ」

僕とインプはお互いに横を向いて顔を見合わした後フンッと反対方向に顔をやった。

インプと僕は怒りながら階段を上がっていく。

母親はそれを見守るように微笑んでいた。

部屋に着き持っているバックを机の下に投げ込むとベットに寝転び途中まで読んでいた漫画を読み始める。

漫画の絵がアニメーションのように動いている。

魔術師の漫画家はインクに魔法をかけてインクが動いてアニメーションのような絵を見せているのだ。

漫画家が想像した世界観のアニメーション漫画は子供たちに大人気だ。

僕はゲラゲラと笑いながら読み進めているとインプが頭を下に向けて僕の顔と漫画の間に入ってくる。

「お楽しみ中、悪いのだけどマンドラゴラの宿題はいつやる気だ?」

僕は自分の体を横に倒しインプを無視したがインプはしつこく僕が漫画を読むことを妨害してくる。

無視を続けると悪戯がなぜかピタッと止んだ。

漫画を読み終わり机の下に投げ込んだバックからマンドラゴラの宿題を取り出す。

マンドラゴラの資料を横に置き宿題を始める。

僕自身も関心するほどの集中力だ。

宿題が終わりしばらく時間が経つとインプがどこにもいない事に気づく。

僕は辺りを見渡しながら大声で「おい、インプ!」と叫んだ。

だが返事はない。

時計を見ると11時を回っていた。

さっきまであんなにしつこく僕にチョッカイや嫌がらせをしてきたのに消えるなんてあまりにも不気味すぎる。

すると壁の奥から笑い声と甲高い声が混じった声が聞こえる。

「僕を呼ぶって事はそんなに寂しかったのかい?」

壁に目を向けると壁から頭がニョキッと出てくるのがわかった。

「それと僕はおい、インプと言う名前じゃないぞ。ガゼルだ。」

「名前なんてどうでもいいじゃないか!どこに行ってたんだ?」

僕は必死に問おうとするがインプは首を45度傾かせる。

「名前なんてどうでもいい?ならお前の事をケツが青い糞ガキと呼ぶがいいか?」

僕は顔を真っ赤にする。

「ほんとにいちいちうざい奴だな!どこに行っていたか教えろ!」

インプは溜息をつく

「確かに僕がお前の秘密を探っているという点では敵同士だけどそれ以外の情報を共有するという点ではフェアにやろうと思って貴重な情報を持ってきたのに命令系とは残念だな」

僕はインプを見つめながら答える。

「貴重な情報?」

「そう、貴重な情報だ。お前が態度を改めれば教えてやるつもりだけどな」

あまり意気地な態度を取って貴重な情報を教えてもらえないというのも嫌なので僕は観念してベットの横に座った。

「わかった、ならお前の事をこれからガゼルと呼ぶ事にするし無視することはやめにする」

ガゼルは勝ち誇ったような顔をする。

「素直じゃないか。お前が全然無視できていなかったというのは置いといて、貴重な情報を教えてやろう。」

僕の肩にそっと乗ると蝙蝠のような羽を閉じた。

「まず僕たちはインプ会議と言われているものを初日を含め1ヵ月に一度開催しているんだ。なぜ初日を含めるかは魔術師としてのレベルが低い奴は初日で秘密が見つかりやすいって理由からだろう。」

「で、本題はお前が求める貴重な情報の事だが、今日の会議でロットというインプがベガッサという太った小僧の秘密を見つけたらしい。」

僕は驚いた。

「ベガッサが秘密を探られたの?」

「そうだ、簡単な秘密だったらしいな」

僕はベガッサには気の毒だけどどんな秘密か興味が沸いてきた。

「ベガッサの秘密ってどんな秘密か教えてよ」

ガゼルは笑いを堪えながら答える

「ママと一緒に寝ないと眠れなくてトイレも行けないらしいぞ。一生懸命無理して一人で寝ようとしていたらしいが我慢の限界が来たらしくママのベットにすぐさま入っていったとか。」

それを聞いた僕は大柄で太った暴力的なベガッサとのギャップに思わず噴き出してしまった。

僕は気が付いたようにガゼルに質問する。

「あ、そういえばインプって秘密を見つけた場合は役目は終わりでしょ?その後はどうなるの?」

ガゼルはあきれた様子でこちらを見る。

「秘密を探る事に成功したインプは悪魔教会に送られるんだよ。」

「悪魔教会って?」

「そんなこともしらないのか。最近の人間の魔術師のレベルは随分落ちたんだな。悪魔教会というのはインプ達の仕事場みたいなもんだ。人間を含めて他の生物の秘密や情報を収集したりするのが主な目的になっている。

100年前に人間の魔術法第13条の改正で魔術師の魔術教会とインプの悪魔教会は友好関係を築く事が可能になり、互いに優秀な魔術師や優秀なインプを育成しようと動きになっただろ」

僕はガゼルの方へ顔を向ける

「人間にとってもインプにとってもいい条件ってことだね」

ガゼルはキリッとした目に変わる。

「いい条件?それは魔術師にとってはいい条件だろ。魔術師は力関係では上だからこういう不利な条件をインプに押し付けているんだぞ。」

「不利ってどういう事?」

僕が問うとガゼルの表情が真剣になっていくのがわかった。

「悪魔教会に行くインプは優秀なインプという名目だが実際は優秀な奴なんて一握りで無能な奴が大半を占めている。だってそうだろ?無能な奴が運だけで秘密を探る事に成功すれば悪魔教会に送られるんだからこのシステムは破綻してんだ。」

ガゼルの目はどこか遠くを見ているような気がした。

「お前さっきベガッサという小僧の事で笑っていただろ?だがな、お前の秘密を探られた時もこうやって情報が行き来することを忘れるなよ」

ガゼルのその表情を見ると同時にハッと思い自分の顔が青ざめていくのがわかった。


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