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第二十四章+夢

「祐平、あのさ・・・・」

「ん?」

美波は緊張した趣で俯いた。


―5月24日―


祐平の誕生日だ。


「・・・・おめでとっ・・・・!」


美波は赤面するのを必死に抑えながら言った。

小さな紙袋。

「あ、ありがとう。そういえば今日だったね。」

祐平は何時もの様に微笑みながら美波の掌から紙袋を受け取った。

「中、見ていい?」

「良いよッ!?」

美波は緊張の余り声が大きくなってしまった。

「え・・・と・・・ね・・・指輪なんだ・・・」

「へー、綺麗だね。」

「お・・・男用だから!安心して!?」

「美波はセンスが良いね。」

「・・・・・。」

褒められた。

やったぁ!

美波は幸せだった。

祐平も幸せだったんだろう。



―――――――――それから、たった二ヶ月後。




美波は絶望していた。



祐平が微笑んでいた。


祐平の葬儀は蝉の声が五月蠅い日に行われた。


―――――すなわち、晴天。


涙さえ出なかった。


感情が消え去った。


苦しい


祐平が其処に居るのが。


もう会えないのが。


凄く


怖い


あの微笑みも


あの優しい髪も


あの穏やかで白い手も


も、触れる事も、見る事も出来ない。



叶う事の無い


    夢


儚い 


    望み


悲しい


    運命


「美波ちゃん・・・・。」

祐平のお母さんだ。

やっと祐平の名前を思い浮かべても苦しさを抑える事が出来るようになった。

葬儀には男子が多かった。

多分、祐平の友達。

「あ、はい。」

美波はどう反応していいか分からなかったので、慌てて言った。

「お母さんは?」

「あ、今外で電話してます。多分――――お父さんと。」

お父さんは夜、帰ってくるのが遅い。

多分、夕飯とかのことだろう。

でも、正直お父さんは嫌いだ。

私立に入学した私の成績をやたら重視するのが。

好きじゃない。

「美波ちゃん?」

「あっ、はい!」

ボーッとしてたらしい。

何で関係無いこと思ったんだろう。

「大丈夫?寝てないの?」

「あ・・・まあ・・・・。」

泣けない

もう何も思い出せない。

祐平の言葉も

祐平の微笑みも

祐平の顔の色も


何も、思い出せない。


そんな絶望感で眠れなかった。


お母さんが


「大丈夫?無表情だよ。」


そう少し笑って言った。


励ましなのかもしれない。


でも、今はその励ましさえ祐平と一緒に居た記憶を抉る事になる気がして嫌だった。


一人になって、祐平の記憶を辿る。


軌跡


出会えた


奇跡を


振り返って、戻っていく。


セピア色の記憶。


微笑みの絶えない祐平の表情。


もっと、祐平の表情が見たかった。


泣いてほしかった。


私の前で。


怒ってほしかった。


私の為に。



思い出す


フラッシュの様に眩し過ぎて


触れる事は出来ないけど。


その眩しさの中に


祐平の微笑みが見える。


苦しい


全ての物を閉じてしまいたい。



私の全てを祐平の記憶を蘇らせる事に費やしたい。



出来るならば


祐平の傍に―――――――



駄目


駄目だよ



祐平はそんな事望んでない・・・・


危なかった。



自分を失う所だった。



そうだよ


大丈夫・・・・



きっと、大丈夫・・・・。

最終回じゃないですからね!!

まだまだ(?)続きます!!

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