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読むな危険

好きだけど嫌い。……だけど好き

作者: 紫乃咲

お題:ピアニッシモの本音・ここでクイズです




「さて、ここでクイズです。俺は何を食べるでしょう?」


 昼休み。

 俄かに賑わいを見せる学食のメニューの前で、篤志が爽やかな笑顔を浮かべながら綾香に向けて声を弾ませる。

 綾香はうんざりした表情で篤志を睨みつけた。


「別に何でもいいわよ。さっさと決めなさいよね」

「なんだよ。機嫌悪いな」

「当たり前でしょう。二連敗で、しかもお昼奢らされるなんて」


 綾香は、吐き捨てるように言うと、そっぽを向いた。



 中学の頃から、学年首位を不動のものにしていた綾香は、高校に入ってもその位置をずっと保ってきていた。

 とりたてて容姿が良いわけでもなく、運動神経があるわけでもない、いわゆる地味な存在の綾香にとって、勉強だけが唯一自慢できる取り柄だった。

 なのに、高校二年の二学期。その中間試験で事件が起きた。

 綾香の首位が陥落したのだ。

 綾香の首位の座を奪った人物。それが篤志だった。

 篤志は運動神経が良く、性格も明るい。クラスの輪の中心にいるような人間だ。綾香と接点があるはずのない、まるで別の世界の住人。

 綾香は、そんな篤志に密かに想いを寄せていた。憧れのような、そんな存在だった。


 なのに。


「あんたなんか、だいっきらい」


 結果を知った綾香は篤志に言い放った。

 思わず口を突いて出た言葉だったけれど、その時は本当にそう思ったのだろう。

 篤志は少し傷付いたような表情をしていた。

 ズキン……。その表情に、綾香の胸が痛んだ。


「絶対、次は勝つから」


 胸の内を隠すようにそう言って、綾香が篤志から立ち去ろうとした時


「じゃあ、負けたらお昼奢ってよ」


 綾香の背中に、声が投げられた。

 綾香は、顔だけで振り返る。


「いいわよ。そのかわり、私が勝ったらあんたが奢りなさいよね」

「良いよ。負けないけどな」


 そう言って、篤志は笑った。


「──むかつく」


 綾香は、小さくそう言うと走り去る。


 大嫌いなんて嘘だ。そんなこと綾香自身が、良く知っている。

 だけど、許せなかった。それも事実だった。


 そうして綾香は、期末試験までの間、猛勉強をした。いつにない集中力だと自分でも思っていた。


 なのに。



 目の前で、篤志が日替わり定食を食べ終える姿を、綾香は憮然とした表情で見つめていた。

 結果は、負けだったのだ。しかも一点差。

 あの一問さえ間違えなければと、綾香は悔しさに唇を噛む。


「ホントに、腹が立つ」


 ボソリと。

 綾香は小さく呟いた。


「え? なんか言った?」


 ごちそうさまと満足げに手を合わせた篤志は、綾香を覗き込んだ。

 綾香は篤志を睨みつけると


「大嫌い」


 ハッキリと。聞こえるように篤志に告げた。

 篤志は、その言葉にわざとらしく肩を竦めると


「俺。綾香に見てもらいたくて、勉強頑張ってるんだけどな」


 そう言って、綾香に笑みを向けた。


「え?」


 思わぬ言葉。

 綾香の鼓動が急に高鳴った。


 篤志は、笑みを向けたまま、言葉を続ける。


「大嫌いなんて、嘘だろ?」


 先程と変わらない笑み。

 なのに、何故かその瞳だけは真摯に見えて、思わず綾香は瞳を反らす。


「ち……ちが……。本音だもん。本心だもん」


 顔が火照る。

 恐らく、篤志にも分かるほどに高揚している。

 綾香は慌てて頬を両手で隠した。

 篤志は、楽しげに小さく肩を揺らすと立ち上がり


「次も、奢ってもらうから」


 そう言うと、綾香を置いたまま、立ち去った。



 綾香は、篤志の後姿を目で追いかける。

 不意に出た言葉は、小さな……小さな声。


「嫌い」


 その、ピアニッシモのように小さな声に隠された本音は、学食の雑音にかき消された。


フリーワンライ二回目


相変わらずお題なぞるだけで精一杯でした。

一時間では何も出来ない(笑)

凄く素敵な物語を書かれる方がいらっしゃって

いつか追いつけたら……。

その分先に行っちゃうんだろなあ。

よし!

頑張ろう。

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