第十三話 【二人√】
俺は家に帰らず漫画喫茶にいった。
そこで夜を明かした。
俺には春子も冬子も大切だった。どちらかを切る事なんてできない。同じぐらい大切な二人だ。二人共欠かすことのできない存在だった。
それこそが俺には必要不可欠だと思った。
俺は逃げるように漫画喫茶でジュースを飲みながら漫画を読んだ。久しぶりに来たこの場所。サービスの充実に驚いた。学生時代以来久しく読んでいなかった漫画だったけど、それはとても面白かった。
俺はその世界観に没頭した。漫画の中の主人公は何でも自分が欲しい物を手に入れていく。何一つ失わずに自分が欲しい物を全て手に入れていく。その姿に俺は憧れたのかもしれない。俺は貪るように読んでいた。
その表面的な「楽しい」気分が春子との出来事のショックを紛らわせていく。俺の中の心の不安定さを「楽しさ」で塗りつぶしていく。一時的な効果しかないだろうと分かっていながらも俺はその気分に浸った。春子の泣き顔を思い出さないようにした。何も考えないようにした。
俺は会社に通ってから春子のいる家に帰った。
一日たったのか、春子は落ち着いていた。
泣き晴らしたのか、彼女の目元は晴れていた。化粧で隠しているが良く見れば分かる。
俺は春子に謝った。もう二度としないと。冬子との関係は切ると。その言葉を話す俺の中には不安も動揺も無かった。ただ反省している雰囲気は出した。それは今は必要だろう。
春子は予想通り許してくれた。
でも、俺がいった言葉は本心ではない。
俺は冬子と切れる気なんてなかった。
春子は許してくれるだろうと予測していた。それに冬子とのことがばれてもまた謝れば春子は許してくれると思った。
俺はその次の日。冬子とあっていつも通り性行為をした。
それは俺には必要なものだった。冬子の手触り、存在を忘れる事が出来なかった。
冬子と春子、俺には二人が必要だった。
その二人がいれば他の事はどうでもよかった。彼女たちの気持ちさえ気にしなかった。
◆◆
数か月後
俺はアメリカにいった。会社の海外勤務だ。
春子は日本に残った。俺の勤務は二年間の予定だった。
俺のために春子が仕事を辞めるのは気が引けた。
俺はアメリカで冬子とルームメイト。
日本でいたときと同じように冬子と抱き合う。
いや、春子がそばにいなくなったからそれはあからさまになった。
春子とはスカイプを通して週に何度か連絡をとりあった。
◆◆
二年後。
俺は海外勤務の期間を終了して帰国した。
期間通りの仕事だ。出世することも無かったが、大きな失敗をすることもなかった。
冬子は出世してニューヨークに行った。
それで別れた。
俺は春の子のいる家に戻ってきた。
でも、二年間の間にできた溝は大きかった。
春子と間にできた決定的なずれ。
二年ぶりにあった時、俺はそれが解消できない程の大きなものだと直感的に悟った。
それから一か月後、俺と春子は別れた。
【二人√ END】
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