第十二話 【ルート選択】
【ルート選択画面】
俺は絶望の中にいた。打ちのめされていた。心が荒んでいた。
音も光もない暗闇の中にいた。
その中では何も感じない。
ただ空虚な空間中で俺はぽつりと立っている。
でも、時間は進んでいく。俺が止まったら世界も同時に止まる訳じゃない。俺の状況に関わらず時は進んでいく。春子も冬子も進んでいく。世の中はそうやって回っていく。立止まっている人を救ってくれるわけではない。
俺は決断をしなければならない。
自分自身で決めなければならない。何を決めても自分の責任だ。時間が解決してくれるわけではない。
俺は春子が泣いている姿を見て逃げた。
初めて見た春子の泣き顔は俺の心をえぐった。春子の涙はそれ程俺にはショックだった。
それほどの衝撃を受けるとは思っていなかった。俺は春子にある種の理想を見ていたんだと思う。それが崩れたから俺は強い衝撃を受けた。俺自身が壊したその理想。俺はそれを受け入れる事が出来なくて走って逃げた。
春子が泣くと俺の世界が暗闇に包まれる。
ゲーム機とみかんが飛び散ったあの部屋。
以前は俺の心のよりどころだった温かい空間。
今ではそれが俺を苦しめる。
たから俺はその場から逃げだした。
あの場にいることができなかった。春子の姿を見ていると心が痛んだ。俺が原因で春子を気付つけてしまった。いいや、ずっと緩やかに傷つけてきたんだと思う。
春子は俺のしていたことに気づいていたのだ。春子は人の心の機微を読むのが上手い。そんな春子が気づかない訳はない。少し考えれば分かること。春子より劣る俺でも自分の変化に気づくぐらいなのだから。春子はずっと俺の変化に気づきながらも胸の中にそれをしまっていた。俺が言いようのない居心地の悪さを感じていた時、春子も同じように感じていたんだと思う。
だが、俺はそれに気づくことができなかった。ばれていない、春子には隠せていると信じ込んでいた。そんなことはないはずなのに。
そうして走っているといつのまにか夜の公園にいた。
俺はベンチに座る。
いつのまにか体から汗が出ていた。全身から湧き出るそれ。俺が生きていることを示すその発汗現象。
体は熱い、でも心は冷えている。その反対の感覚が俺の心を落ち着かせる。荒れている心が、乱れている心が僅かに整理されていく。
そして冷静に考える。俺の今後について。
俺はどうするべきか?
どう行動すればいいのか?
俺は誰を選べばいいのか?
選択しなければならない。
今すぐに。
これまで選択してこなかったことの罰だ。
どんな結果になろうと俺はそれを受け止めないといけない。
選択肢は限られている。
どれを選べばいいのだろう・・・
「やっぱり俺は夢を追いたい。そのためには冬子が必要だ!」 (冬子√)
「俺には春子しかいない。夢よりも刺激よりも、春子が大事だ!」 (春子√)
「春子も冬子も、二人共大事だ。お前たちは俺の翼だ!」 (二人√)
「俺には彼女達と付き合う資格はない・・・」 (無人√)
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本日23時、全ての√を同時投稿します。