第2話 合流したらトラブル続き(前編)
或未品様の『取扱説明書 製品名:蒼瀧 潤【劇物指定】』http://trackback.syosetu.com/send/novel/ncode/498942/
よりユストゥスさん、龍之介くん。
佐竹三郎様の『三匹が!!!』
http://ncode.syosetu.com/n3992ch/11/
より、義盛さん、ヘルメスさん、サツキさん、ヴィシャスさんをお借りしております。台詞回し等オカシな所がありましたらご一報お願いします。
「うわ~派手に集めてきたな~」
10体程のモンスター 人食い草をトレインして来たreiは、
「連れて来たよ~」
立ち止まって、2枚の盾を構えて 人食い草をアンカーハウルで惹きつける。
「ちょっと多いぞ」
私は文句を言いつつ、ライトニングステップで踏み込みワールウィンドでreiに惹きつけられたら草を刈り取る。数が多いので少し取りこぼした草はreiがバトルコマンドで再行動支援したので、ヴァイパーストラッシュをブレードオペラにのせて斬りつけて行くと片付いていた。
散らばるドロップアイテムと金貨……毎度拾うのが面倒なのだが、これから先何かと金は必要になるので集めておく。
「拾い終わったよ~」
reiが集めた金貨を鞄に入れながら、こちらに来る。
「これが鞄に入らない。もういっぱいになったよ」
鞄に入らなくなった中級の秘伝書を渡した。
「そろそろアキバに戻ろうか…」
戦闘訓練はまずまずなので、後はそれぞれのギルドでやって行くしかないだろう。
ただ、漠然とした嫌な予感はするのだが…。
不意に念話の呼び出し音が鳴る。レザリックさんからだ。珍しい事もあるもんだと思いつつ出る。
「はい、レザリックさんどうかしました?」
「キリーさん、一度もギルドホームに戻っていませんが、何か不都合でもありましたか?」
「心配してくれて、ありがとうございます。今のところ不都合はないですよ。やっと、この体にも慣れて来たので戻ろうかと思っていたところです」
「治安が悪くなってきたので、気になって念話したのですが、アキバに戻る際には十分気をつけてください」
「連絡してくれてありがとうございます」
念話を切って、ため息をついた。治安が悪化しているのか…
「reiアキバにそろそろ戻ろうか?」
気は進まないが、鞄もいっぱいになった事だしアキバに戻らないと、私が所属する黒剣騎士団とreiの所属するD.D.Dのギルメン達が心配しているだろう。
襲撃には備えて置いた方がいいだろう。瞬時に師範システムを切り装備を変更出来る様にしておく。とは言っても、意志の関連づけして、簡単に切り替えをするだけなんだが……。
そそくさと帰る準備をしているreiを見ながら、漠然とした不安を感じていた。
「よぉ、姉ちゃん達ぃ~有り金とアイテム置いていきなっ、神殿送りになりたくないだろう?」
どこかの世紀末マンガのモヒカン達並みの三下台詞に溜め息を付いて、
「うわぁ~、三下台詞を恥ずかし気も無く言えるなぁ」
揶揄してやると、
「んだと~コノアマ神殿送りにされてぇのか?」
テンプレートの様な返事にツッコム気力もなかったので
「断ると言えば、どうなる?」
聞くまでもないが、reiにPTチャットで退路の確認をする様に言い時間を稼いでやる。人相手に戦闘が怖くない訳ではない。1対多数なら尚更だ。だが、この手の輩は下手に出るとつけあがり、こちらを痛めつけるだろう。ならば、戦って突破口を開くしかない。
「優しく言ってやれば、つけあがりやがって」
襲って来る奴らに手加減無用と師範システムを切ると同時に装備も換える。秘宝級の装備を目の当たりにした奴らは一瞬怯んだが、たった1人と侮り襲いかかってきた。
「(対人戦のシロートみたいだな…パーティー全員が姿出してどうするんだか?)」
と思いつつ、手持ちの毒で前衛2人を麻痺させ、動きを止め、妖術師の男と森呪遣いの男の喉の辺りを狙い斬りつけ、出血と惑乱、沈黙のバステ付与して、一時的に無力化する。
頭に血が登った守護戦士と暗殺者がこちらに向かってくると、後ろからアンカーハウルをreiにかけられ後ろを向いた隙に、ヴァイパーストラッシュをブレードオペラに乗せて放ち、ダンスマカブルで追い討ちすると、後衛の2人は先程の攻撃と出血によるダメージでHPは消し飛び倒れる。前衛の二人も毒使いの特性で強化された衰弱の効果でHPがみるみるうちに減っていく。
「まだ、やる気?」
残った2人の男に訪ねるが、手負いの奴ほど何するか分からないので気は抜かない。
「すんません、もう二度とやりませんので」
「悪かったよ、もうやらないから、見逃してほしい」
彼らは土下座するように懇願しているのを見ながら、ステータス画面で付与した衰弱の効果を確認していたら、いつの間にか消えているので、こっそり万能薬でも飲んだようだ。
「さっさと去れば追わないよ」
「ありがとうございます、先に倒れてしまった仲間を復活させてもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わない(仲間思いな面もある…ん?何か雰囲気が怪しいな)」
後衛の2人の方に向かいアイテムを使って復活させる素振りを見せたとたんに
「仲間の敵とらせてもらうぞ」
と暗殺者が襲いかかった時に割り込んだ黒い大きな影
「よぉ、黒剣騎士団の者に挑むとは、いい度胸してんじゃねーか。だが、騙し討ちは気に入らねえな」
黒剣騎士団のギルドマスター、アイザック。彼は私と暗殺者の間にロングレンジカバーで割り込んだのだ。しかも、彼の後ろにはreiもいる。二人でタイミング合わせてロングレンジカバーをしてくるとはね……
「団長?こんな所に何故居るんですか?また、勝手に抜け出したんじゃ…」
割り込まれたことより、他の団員が居ないことに疑問を感じ、彼ならやりそうな事を訊ねてみる。
「ちげーよ、これから戦闘訓練すんだよ。俺は海洋機構に用があったんで、一旦アキバに戻ってたんだよ。近くに数人の一緒に来てる奴らは居るが、お前が近くに居るのに気付いてな、少し驚かしてやろうと思えば襲われてるじゃねぇか。これから訓練組に合流するんだが、お前も行くか?」
「reiも一緒で良いのなら、行きますけど?その前に連中は?」
すっかり忘れられてしまった世紀末の三下モヒカン達(髪型はモヒカンじゃないけど(笑))私からは大きな黒い鎧の所為で連中の姿は見えない。
「あいつらなら!俺を見た途端に怖じ気づいて逃げ出したぞ。倒れた仲間見捨てやがって、胸くそ悪りぃ」
アイザックは吐き捨てる様に言いながら、カバンの中から何か布の様な物を出して私に渡す。首を傾げた私に、
「あ~気付いてねーようだが、お前返り血で凄い格好だぞ。向こうに湧き水があるからそいつで拭き取って来い」
素直に受け取り、湧き水で顔を洗おうとして水に映った自分の姿を見て絶句する。頭から返り血で汚れていて、今更ながら自分が人を斬った事を痛感した。reiを守る為に夢中だった……
「おいっ。お前は仲間を守る為に人を斬ったが、間違ったことをしたと思っているのか?」
不意にアイザックから声をかけられて、振り向いて、思わず彼の顔を見ていた。
「らしくねぇ顔だな。さっさと顔洗えよ」
不器用な彼らしい励ましに内心苦笑し、顔と手を洗い、濡れた布で髪を拭いて返り血を拭き取る。
「付き合いが長い方だから、その不器用な物言いでも心配しているのは分かるけど、もう少し言葉を選ばないと人が離れるぞ」
「うるせー、俺について来れない奴は何処へでも行けばいいんだよ」
「あぁ、私が留守にしてる間に脱落者が出たのか。それで多少ふてくされてる訳か。主な脱落者達は女性でしょ?」
「俺は別にふてくされてる訳じゃ……てめぇ、何て事言わせやがる」
話している間に私の腰のあたりにreiがしがみついて来た。
「怖かった。お母さんが殺られるかもしれないと思った」
抱きしめて頭を撫でながら
「reiに怪我が無くて良かった。reiのアンカーハウルのおかげで助かったよ」
「何か見覚えのある坊主と思ったが、こいつ、お前の息子か?あの時のチビ助かぁ」
「そうそう、団長を見て大泣きした子供がこの子だよ」
「慣れたら俺をジャングルジム代わりによじ登ってきたな……」
「アイザックさんって、オフ会の時に遊んでくれた大工のおじさん?」
「おじさんは止めてくれ」
もの凄く苦い表情をした彼を見て、私は笑ってしまった。
アイザックと海洋機構に同行していたメンバーと合流してカンダ用水路に到着すると、どうやら初戦闘を経験してモンスターとの対峙した時のプレッシャーに耐えきれない者達が出たようで、幹部や古株のメンバーが対応していた。
私はちょうど手頃にポップしたモンスターをアイザックと数名の同行者達に押し付け、状況を確認するためヘルメスちゃんと義くん達と話していると
「何、義盛兄さんに馴れ馴れしく話してんだよ、あんた?」(因みに義盛くんは中身は女性なんだが)
急に後ろから言われたので、少しムカッとしながら振り返り相手の顔を見ると知らないので、ヘルメスちゃん達の様子を目の端で伺うと顔面蒼白で言葉に詰まった様子から新人と判断した。私は黙ってそいつに平手打ちをしようとし彼は避けた……が、
「殴らせ…ぶへっ、ぐはっ」
ズゴッ、スパーンとハリセンの音がダンジョン内に響いた。私は手に持ったハリセンを後ろに放り投げ虚空に消した。
「黒剣騎士団はあまり序列はないけど、目上の者には最低限の礼儀と敬意を持てよ」
先程、ムッとした時に殺気にあてられて、放心してるヘルメスちゃんに、
「こいつの事お願いするよ」
と肩を叩いて、 朝右衛門ちゃんとサツキちゃんに撤収の準備を始めるように指示する。
「キリー姐さん、どうしてですか?」
朝右衛門 ちゃんの素朴な疑問に
「団長がこの状況見たら、ぶち切れて暴れる確率が高く、 シズメた 後は訓練にはならないからさ」
私の言葉に不穏な意味が隠れているのを感じてか、2人共そそくさと動き出した。その後、レザリックさんやゼッカ、ドン達とも相談して、同様の見解しか出なかったので、撤収の準備を始めて貰うよう頼んでから、ちょうどポップしたモンスター相手にストレス発散とばかりに戦闘していた。
「先輩、あの青い髪の女性 〈盗剣士〉面白いスッね。平手打ちのモーション途中でハリセンを装備して攻撃するんですから」
「あれは装備してないんじゃないかな?しかし、なかなか痛そうな往復ビンタだね」
「音からして痛そうスッ」
元シルバーソードの猫人族の暗殺者の龍之介は思わず、頬をさすり、狼牙族の盗剣士のユストゥスはそれを見て苦笑いしていた。
「おいっ、これはどういうことだ?」
案の定アイザックが激怒して怒鳴り出したので、私は戦闘を終わらせる為に、師範システムを切り、(技の連携や試してみたい事の為レベルを下げていた)本来の装備に一瞬で戻して、一撃で倒した後、ミスティカルパスでアイザックの背後をとる位置に瞬間移動して毒を投げつける。投げ付けた毒は全部命中したが、発動した技に疑問を感じたが、今はアイザックを大人しくさせるのが優先させた。
「おいっ、キリー何しやがる」
「あら~、沈黙の毒に抵抗されたかぁ~」
「くそっ、ウォー&★●……ゴクッ」
「団長が話すとややこしくなるから黙ってね」
団長の口に沈黙の毒のビンを押し込み、中身を飲み込ませる。流石に直接摂取したら抵抗は出来ないだろう。
「一応、麻痺と石化のバステも付与しているけど、暴れると面倒なので縛り付けておいて」
手が空いてるメンバーに頼み、この戦闘訓練の教官の二人に挨拶とお詫びに行く。
「はじめまして、ユストゥスさん、龍之介さん。本日は指導して頂き、ありがとうございます。」
私は深々と頭を下げた。
「はじめまして、キリーさん。先程のハリセンや投擲技についてお話を聞きたかったのですが、難しいようですね(ストリートベッドと似たような技が同時発動している様なんだよなぁ?)」
ユストゥスは少し残念そうな感じだった。
(同じ盗剣士だから毒を投げた時にストリートベッドだけでなく、ミアズマイズ(毒使いの技)も同時に発動したのに気付いたのか、流石だな)と私は感心しつつ、
「そうですね。私もお話を聞きたかったですが残念です。今日のところはこの辺でお開きにしたいのですが、どうでしょうか?」
「分かりました。後日、先程の技の事を聞かせて下さい」
「えっ、あぁ、良いですけど?」
あまりの食いつき振りに唖然としていた。
少し離れた場所から事の始終を見ていた、
「随分久しぶりに見たな、キリー女史の実力行使」
「えっ?そんな事があったのですか?」
死神に幻獣憑依した ヴィシャスと僧兵姿の神祇官の義盛(中身は女性)が緊張感もない会話をしている。
「嬢ちゃん達が入団前にな、 あの馬鹿が大規模戦闘中に 暴走して突っ込んで戦線崩壊してな、立て直しの為にキリー女史が毒を使って動きを封じて、連れ戻したのが事があったんだよ」
そんな昔話をしていると、
「義お姉ちゃん?とシドさん?お母さんが手伝って欲しいから来て下さいと言われたんだけど……?」
死神と 神祇官の男性の前で戸惑った、reiに
「君のお母さん?……キリー女史の息子さんか?」
「そういえば、キリ姐は息子さんと一緒に狩りしていたんでしたね」
「キリー女史が呼んでるなら早く行かないとな、後が怖いからな……」
「そうですね」
二人とreiはキリーと合流して、思った以上に戦えないメンバーが居た為、モンスター等の襲撃に警戒しながらアキバのギルドホームへと帰還した。
まだまだ、2日目の話は続きます。