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お題小説

きりりと縮める

作者: 水泡歌

今日、せきがえをした。


おれは村田ととなりのせきになった。


あたらしいせきにすわると、村田がつくえをうごかして、せきのあいだにすきまをつくった。


おれは「なんだよ」って思った。


村田はおれの方をぜんぜん見ないで、まっすぐに前ばかり見ていた。


前と後ろのせきはぴったりくっついているのに、おれたちのところだけぽっかりすきまがあいていて。


おれはやっぱり「なんだよ」って思った。



それからきゅうしょくの時もホームルームの時も村田はおれとせきをくっつけなかった。


後ろのせきのやつとはくっつけるくせにおれとだけせきをくっつけなかった。


おれの「なんだよ」はどんどんどんどんおおきくなっていった。


こんなことならせきがえなんてしたくなかった。


そう思ったから、「先生、あのね」にかいてやった。


『先生、あのね。村田さんはぼくとせきをくっつけません。村田さんはぼくのことがきらいなんだと思います。だから、はやくつぎのせきがえをしてください』


次の日、かえってきた「先生、あのね」にはこうかいてあった。


『そう思っているのはあなただけかもしれませんよ』


おれは先生はなにをいっているんだろうと思った。


ちらりと村田を見ると村田もかえってきた「先生、あのね」を見ながらむずかしいかおをしていた。


村田も先生にへんなことをかかれたんだろうか。


そんなことを思っていると村田がこっちをむいた。


「これ、よんで……」


昨日のページをひらきながら、じぶんの「先生、あのね」をわたしてきた。


おれはあたまが「?」でいっぱいになった。


でも、村田がなんだかなきそうなかおをしているから、それをうけとってやった。


つくえにおいてよんでみる。


そこにはこうかいてあった。


『先生、あのね。わたしは健太くんとせきをくっつけることができません。なぜかというと、健太くんとせきをくっつけるとドキドキするからです。健太くんとせきをくっつけるとドキドキがうるさくてなにもきこえません。健太くんとせきをくっつけるとドキドキがうるさくてなにもたべられません。なにもできなくなってだめだめな子になってしまうので、健太くんとせきをくっつけることができません。先生、こんなわたしは健太くんにきらわれてしまうでしょうか』


そのあとに先生の赤ペンのことばがかいてある。


『そのきもちを健太くんにおしえてあげてはどうでしょう。しらないからきらわれてしまうのはもったいないことですよ』


おれは村田を見た。


村田はまっかなかおをして下をむいていた。


おれは村田のつくえに「先生、あのね」をおいた。


それから――


ガタッ。


せきを村田のつくえにくっつけた。


村田はびっくりしたかおでおれを見た。


さっきよりもっとまっかなかおをした。


ばくはつしそうなかおをしているから、おれはちょっとわらって、ちょっとだけすきまをつくった。


村田はすこしうれしそうにわらっていた。


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