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2章:人の子と神器、壊れる日常

ここはいつもの夢の世界だ。


見たことの無い広大な草原で俺は登場しない夢。


いつものように美しい女性が出てくる。


しかし、男のほうは出てこない。


女が近づいてくる。


その美しく、吸い込まれそうな唇から言葉がつむがれる。


“やっと・・・会えたね”



 リクが再び目を開けるとあたりは光で包まれていた。すさまじくまばゆく、目を開けているのもやっとな光の中に、先ほどの少女と共にいる。


 次第にその光が収束していき、一つの形を作り出す。


「まさかこの光は!・・・そうか!少年よ!貴様も数奇な運命の申し子なのだな!」


 光が完全に収まるや否や、リクは目の前に突き刺さっているあるものを発見する。自分の身の丈ほどもあるであろうその存在は、確かにリクのことを欲していた。遥かな時の中で主人の出現を待ち望んでいたのだ。


「クレイヴ・ソリッシュ・・・」


 リクはその大剣の名前を読んだ。初めて見るもの。しかも剣なんか触ったことも無い。だが、それは確かにリクの為に現れたのだ。

 不思議と違和感は無かった。気づいたらその柄を握っていた。まるで自分の手足のようにしっくりとくるその剣。『クレイヴ・ソリッシュ』とリクは確かにその剣の名を呼んだ。


「なんか不思議な気分だ。こんな剣見たことも無いのに、俺は確かにこいつを知っている。

こいつの使い方が体の中に滲みこんで来る。すごいな。・・・俺・・・こいつと戦える。」


 リクは朦朧としながらも、次第にはっきりしてくる意識の中で言葉を紡いだ。


「人間の子供には過ぎた玩具だ。その女と共にこちらに渡したほうが懸命だと思うがね。」


「うるせいやい。こちとらピチピチの華の大学生だぞ。空飛ぶ変態中年男性になんか負けてられっかよ。」


 自信がつくと超がつくほど調子に乗るリク。少女も心配半分と言った表情を見せる。


「心配すんな。これも何かの縁だし、お前のことちゃんと守るから。……でもちょっと怖いから、もし助かったらデートくらいしてくれよな。」


「こここ、こんなときに何言ってるのよ。ちゃんと前見なさいよ。ていうかデートくらいいしてあげるから……て、デート!?何言ってるのよ。ななな、なんで私があんたみたいな変態と……デデデ、デートしなくちゃいけないのよ」


 少女は顔を紅潮させている。純な子なのだろう。リクは勝手に自分なりに解釈した。

 

「茶番はもうやめてもらおうか。貴様は初めて会った少女を無謀にも守ろうとして、あえなく死亡。なんと簡単なストーリーだろうか。」


 初めて会った子に対して体を張って守ると決めた。そんな考えは誰が考えてもおかしいと思うだろう。相手は空を飛んでいる明らかに人外の強敵。一歩間違えれば、即死亡である。


「なんていうんだろうね。本能?この子を守れって俺のハートが叫んでる気がするんだよね。……それにこんなかわいい子見捨ててたら、男としてお日様の下を堂々と歩けないでしょ。」


 叫ぶと同時剣を振るう。大剣であるクレイヴソリッシュの非常に重い一撃。刹那の攻防。

 受け流すヘイムダル。斬り付けるリク。両者一進一退の攻防。繰り出されるリクの更なる一振り。たまらずヘイムダルはその場からはじけるようバックステップ。


「なるほど。確かにこれは伝説だな。貴様のような小僧にここまで押されようとは……我もそれなりに力を出さねばならぬというわけか」


 瞬間、リクを包む空間の空気がすべてヘイムダルに集まっていくような感覚を感じた。まるですべての力がヘイムダルを祝福しているかのような。しかし、その力がリクを襲うことは無かった。


 急にいぶかしげな表情を見せるヘイムダル。なにやら一人でぶつぶつとつぶやいている。


「聞け小僧。貴様は運が良い。我らが大義のため貴様の命はこの場は見過ごすらしい。しかし、我は貴様の侮辱の言霊を忘れはせぬ。いつの日にか貴様の首を我が聖なる太刀にて切り落としてくれよう」


 突如、ヘイムダルの体が光り輝く。目を開けることも耐え難い、眩い閃光。


「その日までせいぜい力を磨くが良い。己の運命を呪いながらな」


 


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