エピローグ
前日まで続いた雨はぱたりと止み、ルースライン領の空は清々しく晴れ渡っている。
ゴウゴウと音を立てて流れるルース川を、川原に新設された公園から眺める一団があった。
「以前ならこの水量だとどこかしらが決壊したと思われます。この護岸のお陰で、私たちは洪水に怯える暮らしから解放されました。地方調整室そして技師団の皆さん、これ以上ないご支援を頂戴しありがとうございます」
「子爵、どうか頭を上げてください。式典の日に護岸の有用性を目の当たりに出来て、僕も王都から来た甲斐がありました。この厳しい自然から領民を、国民を守ってこられたあなたに、僕は尊敬の念を禁じ得ません」
アルフレートとロランツが固く握手を交わす。
見守る領民や他領から訪れた客が、拍手と歓声でその功績を讃えた。
その後、川に程近い一角に広葉樹の苗が植えられた。
この木々が大きく枝葉を広げるのは、それほど先のことではないだろう。
洪水に怯えて川原を荒れ地にするしかなかった日々は、こうして終わりを告げた。
川原の公園は広い。
これまで泥濘に覆われることの多かったその場所が、今では領民の憩いの場として整えられ、今日は合同記念式典という名のお祭り騒ぎが行われている。
様々な軽食の屋台が立ち並ぶなか、一層の人だかりで賑わっているのが『ルースの祈り』のコーナーだ。
自分で磨いた木の化石を買い取る石磨き体験の他、隣領の職人が加工した根付けやブローチといった宝飾品も販売されている。
アルフレートは木の化石を『ルースの祈り』と名付け、領の特産品として打ち出した。
木の化石が最も多く見つかる一帯への立ち入りを有料化し、ただし子どもは自由に出入りできるよう定めた。
これまで石磨きを副業にしていた者たちは有料で原石を仕入れることになるが、磨き上げた『ルースの祈り』を領が買い取ることで収入を安定させ、不満を抑えた。
公園に集まる人々は、皆めいめいに笑みを浮かべている。
弾けんばかりの子どもの笑顔と、それを見守る大人の優しい微笑み。寄り添う恋人たちも、活気溢れる屋台の店主も、誰もがこの先の幸せを信じ、希望に満ちていた。
「たくさんの方が領のために力を貸してくださって今がある。それをこれからも忘れずにいたいです。最初の調査に来られたのがギルベルト様だったことは、私たちにとって本当に幸運でした」
「あなたは私のおかげだと言うが、リゼの思いが私や室長を動かしたんだ。私からすればあなたに会えたことこそが幸運だったよ」
侯爵とアルフレートから結婚を認められた二人は、共に手を取り歩んでいく。
みなからの祝福と、そして互いの祈りと願いに違うことなく、もうその手を離すことは決してないだろう。
(終わり)
お読みいただき、ありがとうございました。
たくさんのお話の中から拙作に目を留めてくださったこと、本当にありがたく、嬉しく思います。
良かった、悪かった、面白かった、退屈だった……どんなことでも構いませんので、感想及び評価をいただけますと驚きながら喜びます。
アルファポリス様でサーシャとローラ、ロランツ、ライナスが出てくるお話を書いています。いずれこちらにも転載するかと思いますので、その際にはまた読んでいただけると幸いです。




