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プロローグ
しばらくぶりに会う彼は、温度のない目でこちらを見ていた。
「父が薦める縁談を受けることにした。こうして会うのは今日が最後だ」
彼の言葉が、現実を否応なく叩きつける。
二人が釣り合わないことなどわかりきっていたはずだ、と。
彼がくれた真摯な言葉も、自分だけに向けられた柔らかな表情も、今すぐ忘れてしまえたらこの胸が痛むことはないだろうか。
今の彼の瞳には、悲しみも、申し訳なさすらも浮かんではいない。
リゼは彼にだけは泣き顔を見せまいと堪え、そして懸命に微笑んだ。
「わかりました。ギルベルト様、どうかお幸せに」
もう叶わない想いを胸のうちに閉じ込める。今にも壊れそうな心を抱えて、リゼは遠ざかる彼の背中を目に焼きつけた。
──泥にまみれた川原、すべてが手探りだったあの頃。
彼との出会いが全ての始まりだったのだと思う。
よろしくお願いします。




