長雨は遠き記憶とともに
『暑いねぇ……』
などと少女は言う。
『そうだねぇ…』
なんて私も返した。
あの頃の記憶は、今も私の中にあり続けている。
『また遊ぼうね』
などと少女は言う。
『うん、遊ぼう』
なんて私も返した。
今はもう、遊ぶことはできなくなってしまったけれど。
今年もそう。あの頃のことを思い出す。
今までは、失った彩を嘆くばかりで。
振り返ると、重く暗い雨雲が空を覆う。
けれど、今は。
その灰も、暗い景色も。そのすべてが。
新たに訪れた彩とともに、空を覆い、輝く。
あの頃はもう要らない…なんて、そんな事も思わない。
長雨の、遠き記憶もまた
私の彩なのだ。
ねぇ、あの頃の私。
今のこの私が見ている景色を、想像していたかな。
ねぇ、あの頃の君。
君は今も、あの頃のように笑ってくれているかな。
そんなふうに、また私は振り返る。
雲間からは、陽の光がさしている。
長雨は、遠き記憶とともに。
この雲ひとつない空に、彩を添えて過ぎていく。