依頼*2
ルナは鬱蒼とした森の中を軽々と歩きながら、ルナの昔話をしてくれた。
「前に、七賢人の1人って言ったの覚えているでしょう?」
「はい。だけど、七賢人の1人と言っても、遠い存在すぎて、ほとんどわかりません。」
「あら?すぐ近くにいるのにね?」
ルナはふふふ、と笑いながら現れたモンスター、歩くのに邪魔な草、木々を次々と薙ぎ倒していく。
「七賢人って、それはもう強いのよ、今は私も十分強いけど、師匠がまだまだ現役だった時は、師匠が化け物のように見えたわ。七賢人って、“1人で国を滅ぼし、みな集まれば世界を滅ぼす”と言われているの。」
「滅ぼしちゃうんですか?」
ミアは少し恐ろしくなって聞いた。
「それはしないわ。だけど、1人の七賢人が暴れたら、その他の賢人が抑えるのがルールだし、七賢人みんなが暴れ出したら、それは神の意向だった、ということになるわね。実際、師匠が生まれるよりももっと前の頃、そういうことがあったらしいわ。」
「だから、七賢人の発言力が高くて、高すぎるが故にどんなことを言われるか分からないと恐れている国から命を狙われるんでしょうけど。そこのところは、七賢人になる前から覚悟するべきことだし、逆に、これくらいを躱わせないと、七賢人の座を担っている資格はないと言われるわね。」
「七賢人の強さはそれぞれどのくらいなんですか?」
「それ、聞いちゃう?結構、野暮だと思うけど。」
ルナは楽しげに笑った。
「七賢人はもちろん七人、それぞれ役割みたいな、席によって扱っているものは違うけど、比べようとすれば比べられるわ。」
「1人目は預言者、通称星詠。2人目が戦士、紅蓮、3人目が私、魔導士、深淵の魔導。4人目は盗賊、影刃、五人目は聖騎士、聖盾六人目は錬成師、創造、7人目は鑑定士、真理眼」
ルナは一人一人指で数えながら言っていった。
「戦闘系で1番強いのはもちろん戦士の紅蓮、同じくらいに聖騎士の聖盾、次に盗賊の影刃で私の順番かしら。私は戦闘も裏方も両方のタイプだから、戦闘狂達と正面から張り合ったら負けるわ。ただ、その戦闘狂にも無敗なのが預言者の星詠ね。あいつは自分が勝てる戦いにしか乗ってこないから、それも作戦の内なんだろうけど、捉え方によっては卑怯よね。錬成師の創造と鑑定士の真理眼は双子なんだけど、全ッ然似てないから、真偽のほどは私にはよくわからないわ。」
「じゃあ、総合的に見ると預言者の星詠が1番強いの?」
ミアは首を傾げて聞いてみた。
「そうね。星詠を除いて相性も考えたら、私、聖盾、影刃、紅蓮、創造、真理眼の順に勝つと思うけど、双子ペアでかかってきたら、聖盾か私くらいの強さになるはずよ。」
「なるほど。相性が悪くても勝つことってできるんですか?」
「難しいと感じがちだけど、出来るわ。戦力差が開きすぎると不意打ちをしても気付かれていて攻撃が防がれることもあるけど、大した差がなければ奇襲攻撃で片付けた方が楽だものね。」
今までズカズカと歩を進めていたルナが、急にピタッと立ち止まる。
「実践をやってみましょうか?」
ルナがこちらを向き、ニコッと笑った。
ミアが前方をよく目を凝らしてみてみると、そこにはオークの群れがいた。
「私に倒せますか?」
「あら?やってみないと分からないじゃない。それにあなたくらいなら魔法や魔術を使わなくても持ち前の身体能力で大丈夫でしょう。」
ルナは案外スパルタ指導だったらしい。ミアは覚悟を決める。
「潜伏魔法だけはかけておくから、行ってらっしゃい。」
ルナはいつもと変わらぬ様子で、どこからか魔法の杖を取り出しミアに魔法をかけると、ミアを送り出した。
ミアは物音を立てないように、気配を悟られないようにオーク集団から三メートルほどまで近づく。
オーク達は他の魔物の痕跡を追っていたようなので、ミアもそれを見て先回りし、木に登って上からオークの背後を確実に狙える距離になるまで待つことにした。
その最中に、ルナからもらった魔導書で見た初級の地雷魔法を仕込み、木の枝を折って簡単な武器にすることにした。
そうしているうちに、オーク集団のうちの一体がミアの前を通り過ぎる。オークは合計5体。一体でもC級冒険者がまともに張り合えるくらいだから、この全てを相手にするには少なくとも場慣れしたA級冒険者2人は必要だろう。
(私に出来るか出来ないのかではない。やるしかないんだ。)
残りの2体が、ミアの真下の辺りに来た。
(3、2、1)
ミアは歯を食いしばってオークの真上に飛び込んだ。
そこからはあっという間だった。
ミアは一体のオークの頸髄に雷魔法を撃つ。そして、もう一体の方に体を向けると肩を踏みつけ正面に回り込み、目玉を狙って木の棒を突き刺した。
残りの3体はと目線を巡らすと2体は地雷魔法に引っかかっていて足元がおぼつかない様子で、残りの一体が私にこん棒を振おうとしていた。先ほど雷魔法を撃ったオークは運良く絶命していた。
ミアはこん棒を避け、オークの懐に潜り込み、腹に爆撃魔法を撃つと、地雷魔法に掛かっている最後の2体に焦げた匂いがするまで炎魔法を撃ち続けた。
「貴方、空気中にある魔素を自分の魔力に還元したのね。すごいじゃない。私が感じた以上の才能があるわよ、ミア。」
そう言ってルナはミアの頭を撫でる。
「ありがとうございます。命をかけた戦闘は初めてだったので、魔法を使ちゃいました。」
ミアはされるがまま、俯きながら言った。
「で?どうだった?」
ルナは優しい顔つきで、ミアの頭を撫でている。
「魔法を使っていなかったらもう少し戦いが長引いたと思いますが、素手でも勝てる相手だったと思います。」
ミアはルナの顔を見上げて言った。
「少し自信が持てました。」
ルナは笑って応える。
「そう、よかった。私たちの命を狙ってくる奴らは、大体がA級冒険者程度の強さだから、そのくらいまで強くならないとね。でも、自分の強さを過信しないで今までの自分を昇華していけばすぐに強くなれるから、応援してるわよ?」
そう言ってミアと目があったルナは、またもやウインクをした。
その変わらぬ様子に安心したミアは、安心して、笑った。
「ありがとうございます。」




