依頼*1
「これで、立派な冒険者だね。どこでも行けるわよ。」
ルナがミアの顔をにっこり笑顔で覗き込んで行ってきた。
ミアは3日経ったので、ギルドで身元証明書とギルド員証明書を貰った。
「ミア、身元証明書持ってなかったの?」
ルナはただ気になったことを聞いた。
「はい。私も島から出るとは思っていなかったし、必要なかったので。」
「そう。」
ミアがそう言うと、ルナは顔を引っ込め不憫な顔をする。しかし、ルナはパッと気持ちを切り替え、外を指さした。
「せっかくだし、私も依頼を受けてるから一緒に討伐してみない?」
ミアはルナから思わぬ提案をされたので驚いた。
「そんなことして良いんですか?私は師匠のレベルまで到達していないのに、低いレベルでは受けられない師匠のレベルの依頼は受けられないと思います。」
その言葉を聞いて、ルナは目を丸くし、プッと吹き出して笑った。
「はははは!ミアは子供にしては少し頭が硬いんじゃないの?そんなの、私くらいの人が一緒に受けると言ったら脳死で大丈夫と言うだろうし、逆になんでそんなことを確認してきたのか聞き返すわよ。」
「え?」
今度はミアが目を丸くする番だ。
「私って、多分、あなたが思っているよりずっと、すごい人よ。なんでもできちゃうわ。」
ルナはそう言ってギルドにある転移ポータルの側まで行く。
「この話はまた後でにしましょう。これで街の外まで出られるから、使い方を覚えておいて。」
「はい。」
ルナは転移ポータルに向かい、ギルド員証明書を掲げ、詠唱を唱える。
すると、緑色のポータルが開いた。
「さ、行くわよ。しっかりついてらっしゃい。」
ルナはミアの手を掴み、転移ポータルの中に入った。
♢♢♢
転移ポータルは、くぐった瞬間頭がキンと痛くなり、耳鳴りがするようだった。
「ミアは転移ポータルは得意じゃないのね。これからは私の転移魔法で行きましょうか。」
「すみません…。」
ミアはポータルを出てすぐ、遠くの方に森がうっすらと見える大草原のど真ん中でダウンしていた。
ルナが回復魔法をかけてくれる。
「ミアは魔力干渉に身体が追いつかないようね。こればっかりは慣れと経験でしか改善できないから、それを緩和する魔道具でも身につけましょう。」
ルナは少し体調が良くなったミアを立たせ、言った。
「自分の魔力が底をつくくらいの魔法を放ってみなさい。そうしたら良くなるから。」
「はい。」
ミアは言われた通りに、自分の持っているすべての魔力を注ぎ込み、大草原に花を咲かせてみた。
すると、自身の体には干渉された魔力が残っていないため、必然的に気分もよくなる。
「すごい強引な良く仕方ですね。」
ミアはじとっと他にやり方はなかったのかとルナを見上げた。
ルナはその目線を気にも止めずにミアを褒めた。
「なぜ良くなるのかが分かってすごいわね。これ、私の裏技だから、困っているお友達に教えて、私の技だって教えてあげてね?」
ルナはお茶目にウインクをしたが、スルーを決めることにした。
「師匠の依頼は何なのですか?」
ルナは何も思っていないらしく、無視をしたのにも関わらず普通に答えてくれる。
「オーク集団の討伐依頼。普段は群れることはないんだけど、最近は魔物が活発化していってるから、こういうこともしょっちゅう出てくるのかしらね。」
ルナは森の方を見つめているようだった。
「今日は森の中で野宿をしてみるから、覚悟しておいてちょうだい。」
ルナは森の方向へ歩き始めた。