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ルナ

「ここよ。入って。」


 お姉さんは教会を出た後、一言も話さずにお姉さんの自宅であろうこの家に、連れてきてくれた。

 街の高級住宅街を抜け普通の住宅街に入り少し歩いたところにある、他の家とは一,ニ回りくらい大きい家だった。

 家の横半分くらいの大きさの庭がついていて、庭に生い茂っている木やら蔦やらが原因で家の全貌はほとんど見えない。ただ、隙間から見える家の外壁はとても綺麗なので、最近建てたものか、保護魔法をかけてあるのだろう。




 お姉さんは、魔法師ローブをポールハンガーにかけ、ロッキングチェアに深く腰掛けた。

 ミアも、暖炉の前の地べたに座る。


 絨毯がとてもふわふわで気持ちよかった。生まれてこの方、ミアはそういうものに触れてきていない。布がゴワゴワ、ぎしぎししているのは当たり前だった。


「さて、何の話もせずにここまで来ちゃったからね。話をしましょう?」


 ミアは首を縦に振る。


「はい。」


 お姉さんは、側で暖炉の火が消えかけているのを、魔術で火力を強めた。


「ミアと言います。14歳。生まれも育ちもロス島で、父はもう、多分この世にはいません。」


 お姉さんはロッキングチェアをゆらゆらとさせている。


「そう。14歳ねぇ。」


 お姉さんはしばし考え込むような様子を見せている。


 パッと視線がミアの方へ戻ってきた。


「私は“ルナ”。24歳。丁度10歳差。父、母、兄、姉、妹、生きている弟がもう一人いるの。」


 ミアはそっとルナの名前を呼んでみることにした。


()()()()ですか。」


「ええ。何だか小さい子に呼ばれると、私の名前もいい響きね。」


 ルナはにこ、と優しい微笑みをミアに向けてくれた。


「ずっと気になってたんだけど、ミアのステータス欄、見てもいいかしら?」


 ルナは前屈みになって聞いてきた。ロッキングチェアに座っているため、何となくキツそうな体勢だ。


「はい。いいんですけど、どうやって見るんですか?」


「ああ。ステータスって、言葉に魔力を込めて発すればいいのよ。」


「わかりました。()()()()()。」


 すると、ミアの視界の真ん中に、白い、透明な面が現れた。

 ミアが、急に現れた白い面にびっくりしていると、ルナが口を開く。


「ステータス開示って、言ってちょうだい。言うだけでいいのよ。」


 ミアは頷いた。


「はい。」

「ステータス開示。」


 すると、ミアとルナの両方から見えやすい位置に、ステータス欄が大きくなって移動した。


「やっぱり白よねぇ。」

「あのね、白って多分、ミアに白の聖霊が宿っているからなのよね。ほら、欄にも『聖霊の加護』って、書いてあるでしょう?」


 「はい。」


 ミアはぼーっと答える。自分のステータス欄を隅から隅までよく見ていた。

 名前、性別、生年月日、職業、ミアは職業選択をしていないので、職業適正の欄もあった。その他にも、攻撃力・防御力、魔法攻撃力・防御力、魔法適正、精霊魔法適正、聖霊魔法適正、そして、何も書かれていない欄には、“精霊の加護”そして、“聖霊の加護”と書かれていた。他にも何個か書かれていたが、大したものではなさそうだった。


 ルナは、ため息をついて言った。


「あなた、すごいわねぇ。鍛えたら鍛えた分だけ能力は上がりはするものの、ミアくらいの年頃で、ほとんどがAランクの人なんていないわよ。でも、魔法が少し、苦手なようね。」


「はい。制御がうまくいかなくて、苦手です。」


 ミアはルナの方を見ると、ルナはミアのステータス欄に惚れ惚れしているようだった。


「どう?私に魔法、教わってみない?あなた、これから世界を見て回るようだけど、資金がないでしょう。資金が貯まるまで、しばらくここに住まわせてあげる。」


 ミアに断る要素は一つもなかったが、一旦状況を整理するために考えてみた。


 おそらく、ルナはミアのステータス欄を見て、今後の可能性に目を光らせて、今後ミアが成長するまで見ていたいと思い、どうせなら自分が教え、自分の家に住まわせたいと思っている。そして、私は勇者になる、その経過のお金が足りないから、それを稼ぐ間、お姉さんの家に住まわせてもらう。

 こう思うと、確かにWin-Winな気がするが、圧倒的に私しか得していない。これは後々関係が崩れそうになった時、足元を掬われる羽目になるだろう。


 ミアはこれじゃダメだろうと思いながらも、私はルナさんに何もしてやれることはないと思い、本人に直接聞くことにした。


「私に何かできることはありますか?」


「うん。特にないのよね。私、結構強くて、結構強いからいろんなところから案件が来るの。だから、私の自宅って言っても今年はここにいられるの今から三ヶ月間だけだし・・・そうね、強いて言えば、私がいない間のお留守番かしら?来年の3月で私はここを出て、東の方に行くの。それで、9月の頭に従姉妹がここに来るから、その間の5ヶ月間、お留守番よろしくできる?」


 ルナは終始ニコニコしていた。私の返答が、ルナの提案に乗ったということだからだ。

 ルナは、才ある者が好きらしい。


 ルナ自身、とても魔法の才能がありそうだ。


 ミアは立って、ルナに手を出した。


「これから3ヶ月間、よろしくお願いします。師匠。」


 ルナは、ミアが差し出した手に、そっと包み込むように触れ、にこ、と微笑んだ。


「ええ。よろしくね。」

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