皆で遊ぼう!
黒雲「そんな皆さんのためにここに割り箸を準備しました。」
そうして私は持ってきた鞄から5膳の割り箸を取り出す。
透真「割り箸?」
時雨「割り箸って縦に割るときれいに割れやすいんですよ。」
彩姫「いやそれ今関係なくない?」
弥一「とりあえずそれで何をするんだ?」
黒雲「この割り箸に王冠と1~4の数字をそれぞれ書きます。」
弥一「あーあれか。」
彩姫「前もやった気がするね。」
黒雲「そしたら、王様ゲームをしよう。」
王様ゲーム、以前3人でやったことがあるが、人数が少なすぎてあまり面白くなかった。ただ今は5人だからリベンジである。
透真「王様ゲームか。」
弥一「それなら時間だけ決めとくか。ずっと続けるのもきついゲームだし。」
彩姫「そうね。まあ30分くらいでいいんじゃない?」
弥一「そうだな。じゃ、タイマーかけとくから。」
黒雲「オッケー。」
時雨「あの、王様ゲームってなんですか?」
黒雲「ルールを説明するね。まず最初に王様だーれだっていう掛け声と一緒にこの割り箸で作ったくじを引くの。そして、王様のくじを引いた人が特定の番号を指示してその指示した番号の相手に何でも一つ命令をすることができる。それを繰り返すのが王様ゲームだね。」
時雨「ちょっとイメージがつかないです。」
黒雲「そっか。透真はわかる?」
透真「もちろん。」
黒雲「じゃあ一旦お手本としてやってみようか。」
彩姫「オッケー。」
弥一「了解。」
透真「どんな命令を仕掛けようかな。」
割り箸を数字と王冠が見えないように筒の中に入れて
黒雲「それじゃあいくよ、せーの」
「「「「王様だーれだ!」」」」
黒雲「私が王様か。」
弥一「命令はどうする?」
黒雲「それじゃあ、2番が3番にビンタで!」
彩姫「ちょっと待って!いきなり飛ばしすぎじゃない?」
黒雲「まあちょっとぐらい良いでしょ。それに彩ちゃんなら思いっきりされても大丈夫でしょって思ったから。」
彩姫「信頼が変な方向で厚いんだから。ところで2番と3番は誰?私は1番だけど。」
透真「俺は2番だけど。」
黒雲「4人でやってて1、2番が出たって事はつまり、」
弥一「どうして俺なんだよ。こういうのっていつも透真がされる側だろ!」
黒雲「王様の命令は〜」
「「「絶対!」」」
弥一「絶対だけど!絶対なのはわかってるんだけど!」
黒雲「二人とも立って〜」
透真「先輩、行きますね。」
弥一「腹くくるしかないか。来い。」
バッチーン
弥一の頬が赤く染まると同時に弥一が床に倒れこんだ。
弥一「痛い!」
黒雲「ドンマイ」
彩姫「ま、こんな感じのゲームだね。」
時雨「な、なるほど。結構怖いですね。それで、命令した相手が誰になるかわからないんですね。ちなみに、命令っていうのはなんでも良いんですか?」
黒雲「そうそう、相手が誰になるかわかんないから王様ゲームって面白いんだよね。命令については基本はなんでも良いよ。ただ、きつい命令をするとそれが後から自分に返ってくるかもしれないから気を付けてね。」
時雨「了解です。」
弥一「黒雲、後から覚悟しておけよ。」
黒雲「はいはい、王様になってから言ってね。それじゃあ今から雨ちゃんも含めた5人でせーの」
「「「「「王様だーれだ!」」」」」
弥一「俺が王様だな。黒雲は最初から飛ばしてたし、黒雲に復讐してやりたいから、最初っから少し飛ばすぞ。」
黒雲「そんなに言われるほどかな?」
弥一「1番が3番に秘密を一つ言ってもらう。」
時雨「それってなにか意味あるんですか?」
弥一「3番の反応を楽しむ。」
時雨「なるほどです。」
弥一「それで、みんな何番だ?」
時雨「私は2番ですね。」
黒雲「私が3番ってことは透真と彩ちゃん、どっちかの秘密を知れるってことか。」
透真「俺が4番ってことは、」
彩姫「私が黒雲に秘密を一つ言うのか。」
黒雲「さーて、彩ちゃんはどんな秘密を私に教えてくれるのかな。」
彩姫「そうだな〜何を話そうかな?」
弥一「何を言うかは任せる。」
彩姫が唸っている。そんなに隠していることが多いのか少し不安になってしまうがそうではないことを祈る。
彩姫「じゃあこれにしようかな?」
黒雲「なになに〜」
彩姫「◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯」
黒雲「えっ!」
透真「副会長なんて言ったんですか?」
特に何てことないような表情で秘密を打ち明けた彩ちゃんと、その彩ちゃんの言葉に思わず鼓動が早くなる私に対し、透真が言った内容について追及する。
弥一「彩姫、まさかあれ、言ったのか?」
彩姫「そのあれがどのあれなのかわかんないけど多分言ってないよ。」
時雨「え、えっと何が何だかわかんないんですけど、」
黒雲「ちょっと感情の整理がつかないよ。え、彩ちゃんそれ本当のこと?」
彩姫「うん、本当のことだよ。」
大慌ての私と弥一、その反応に動じる透真と特に動じてない彩姫、置いてけぼりの時雨、現場はまさにカオスそのものだった。
透真「ちょ、ちょっと会長いったん落ち着いて。深呼吸ですよ深呼吸。ほら、吸ってー」
黒雲「すー」
透真「吸ってー」
黒雲「すー」
透真「吸ってー」
黒雲「吸わせてばっかじゃん!ちょっとは吐かせてよ!」
そんな漫才みたいな会話をして少し落ち着くことができた私はゲームを再開させようとする。
黒雲「それじゃあ王様ゲームを、」
弥一「なあ黒雲、彩姫がなんて言ったのか教えてくれよ。」
黒雲「ちょっと弥一まで、反応を確かめるって言ってたのに何で聞きたがってるの!?」
弥一「それもそうか。黒雲の反応からなんて言ったのか気になったけどやっぱり聞くのはやめておこう。だから彩姫も言ったのかもしれないしな。」
時雨「私もやっぱり少し気になりますけどそれはそうですね。」
透真「気になるからいつかは言ってほしいけどな。」
彩姫「いつかは言うよ。そんなに面白い話じゃ無いけど。」
黒雲「ってことでそれじゃあ再開するよ。」
一つの命令でここまで事態が大きくなったがいったん仕切りなおして音頭を取る。
黒雲「せーの」
「「「「「王様だーれだ!」」」」」
弥一「また俺だな。」
黒雲「運いいね。二連続じゃん。」
透真「でも成りすぎても命令思い浮かばないからな。」
弥一「まあ俺の場合は結構思い浮かぶぞ。」
彩姫「それじゃあ、どんな命令を出すの?」
弥一「命令が罰ゲームに近いやつが多いからな、ここは少し違う感じの命令を出そう。」
時雨「罰ゲームとはちょっと違う感じのやつですか?」
透真「どういうことだ?」
弥一「4番が特技を一つ披露してもらう。」
彩姫「特技?」
弥一「そう。特技なら何でもいい。」
黒雲「私が4番だね。」
透真「会長の特技ってなんかあったっけ?」
黒雲「知られてないだけで実は秘密の特技があるんだよね。」
弥一「俺と彩姫は知ってるけどな。」
彩姫「そうね。」
黒雲「でも他の人は知らないから。」
時雨「特技って聞いてどれのことか断定できるんですか?」
彩姫「黒雲の秘密の特技って言ったらこれ一択だからね。」
時雨「そうなんですね。」
黒雲「それじゃあ、音楽をお願い。」
彩姫「音楽って、どれ?」
黒雲「それじゃあ、いつもの曲の編集してる方。」
彩姫「オッケー」
透真「音楽?」
黒雲「そ。音楽。」
彩姫がスマホを操作して一つのファイルを準備する。
彩姫「それじゃあ、ミュージック、スタート!」
そんな掛け声と同時に少し昔に流行った音楽が流れ出す。私はその音楽に合わせて踊り始めた。ジャンルはよくあるヒップホップやロッキンなどではなくタップダンス。あまり有名ではないジャンルだが私はこのタップダンスがまるで作曲に参加しているみたいでとても好きだった。そうして私が全力で踊ることおよそ2分、音楽が鳴り止む。
透真「会長凄いな。」
時雨「はい、音がたくさんあってすごかったです。」
弥一「今も習ってるんだっけ?」
黒雲「いや、今はもう習ってないね。」
透真「もったいない。そんなに上手なんだったら続ければいいのに。」
黒雲「上には上がいるものなんだよ。」
彩姫「世知辛い世の中だよね。こんなに黒雲は上手なのにそれ以上に上手い人が世の中にはいるんだよ。」
黒雲「まあそんな辛気臭い話は一旦おしまい。次のくじ引きやるよ。」
透真「その前にちょっと教えてほしいんだけど、他のダンスとかも踊れたりするのか?」
黒雲「それは作品の話?それともダンスのジャンルの話?」
透真「ジャンルの話。」
黒雲「ジャンルなら踊ったことはないけどリズム感覚とか表現力とかは多分共通してるから頑張れば踊れるよ。」
透真「そうなんだ。思ってたよりも応用が効くんだな。」
黒雲「そうだよ〜。それじゃあ改めて、せーの」
「「「「「王様だーれだ!」」」」」
時雨「私ですか。」
黒雲「雨ちゃんか。雨ちゃん、どんな命令下すかわかんないんだよね。」
彩姫「まあどんな命令でも王様の命令は絶対だからね。」
時雨「でも、命令の度合いが良くわかんないので次に王様になった人に対して全員番号を伝えるってことでどうでしょう。」
彩姫「これ次に王様になった人絶対命令考えるの大変でしょ。」
黒雲「だね。番号で命令だったから多少無茶振りとかもできたけど誰が何番かわかってると無茶できないからね。」
弥一「とりあえず次の王様を決めるために引くか。」
黒雲「そうだね。せーの」
「「「「「王様だーれだ!」」」」」
彩姫「私だね。」
弥一「さて、彩姫はどれくらいの命令を誰に出すんだろうな。」
黒雲「その前にみんな番号を言おうか。私が4番だね。」
弥一「俺が2番だな。」
透真「俺は1番だ。」
時雨「私は3番です。」
彩姫「それじゃあ、どんな命令にしようかな?」
黒雲「あんまりにもひどいのはやめてよ。」
彩姫「そんなことを私がすると思う?」
黒雲「いや思わないけど。」
そんな会話をしながらも彩姫は命令を考え続けている。
彩姫「それじゃあ、うーん、1番が今日から夏休み最終日まで」
透真「ちょっと待って長くない!?」
黒雲「一日あたりとかもっと具体的な方が良くない?」
彩姫「じゃあ一日30分毎日ってことで、ベースの練習でもしてもらおうかな。」
透真「ベースってやったことないし持ってないんだけど。」
彩姫「押し入れに一本あるからそれ持って行っていいよ。」
透真「そもそも練習するのはいいけど何でそんな命令出したんだよ。」
彩姫「まあ、時間が過ぎればいつかはわかるよ。」
弥一「秘密の多いやつだな。」
彩姫「全部いつかわかる内容だから安心してちょうだい。」
時雨「もしかして私に言ってた内容も関係してますか?」
彩姫「そうだね。関係してるよ。」
黒雲「今回の命令は比較的まともなやつだったね。」
透真「ビンタとか秘密の暴露とかやばいのが多かっただけでこれも比較的きついだろ。」
黒雲「それは一旦置いといて、次のくじ引きに移ろうか。」
弥一「そうだな。」
黒雲「せーの」
「「「「「王様だーれだ!」」」」」
透真「やったーー!」
透真がいきなりガッツポーズをする。
透真「やーっと王様になれた。さっきからずっと王様になれなかったし。」
黒雲「うげ、」
透真「会長、うげってなんですかうげ、って!」
彩姫「黒雲の言うことも一理あるからね。透真はどんな命令するかわかんないから。」
透真「そんなかな?」
時雨「正直怖いです。」
透真「みんなひどいじゃん。」
弥一「これまでの行いだぞ。」
透真「そっか。それで、命令なんだけど、」
黒雲「強引に話題変えたわね。」
透真「うるさいっすよ会長。それで、弥一先輩以外物理的なダメージがないから、面白くないなって。」
時雨「どんな命令出すんですか?」
透真「これがアリなのかわかんないからあれだけど、みんなにじゃんけんしてもらって最下位の人が番号の数だけ、大さじ一杯分のタバスコを飲んでもらう。」
弥一「アリだけど嫌!」
命令を聞いた瞬間や一の迫真の叫び声が響く。
彩姫「弥一辛いもの苦手だったもんね。」
弥一「その通り。」
透真「でも王様の命令は絶対だからそんなに叫んでも意味ないいんだよね。」
弥一「だとしてもなんだよ。」
時雨「4人でじゃんけんをして負ける可能性とかさっきビンタされたりとかで結構低いと思いますよ。実際に計算してみても一人だけ負ける確率は1/12でおよそ8%くらいですし。」
弥一「それなら安心だな。」
黒雲「それじゃ、じゃんけんしようか。」
「「「「さーいしょはグー、じゃんけんポン!」」」」
弥一「どーしてだよー!」
弥一の迫真の叫び声が再び部屋に響く。
じゃんけんの結果は弥一がグーを出して私たち三人がパーを出した。つまり弥一がいきなり一人負けしたのだ。
時雨「で、でも、1番ならまだまし、じゃないですかね?」
弥一「でも4番なんだよな。」
彩姫「うん。なんというか、どんまい。」
そう言って彩姫は部屋から出て行った。
黒雲「透真、」
透真「会長、わかってますよ。後で謝りますから。」
黒雲「そうした方がいいよ。絶対。」
彩姫「取ってきたよ。」
彩姫がタバスコと大さじ、それとコップをもって部屋に戻ってきた。
弥一「本当に飲まないといけないんだよな?」
透真「王様の命令だからね。」
弥一「はあ、覚悟を決めるか。」
黒雲「随分あっさりと覚悟を決めるんだね?」
弥一「いくらあーだこーだ叫んでも結果は何にも変わんないからな。」
時雨「頑張ってください。」
弥一「それじゃあ、飲むぞ。」
そう言って弥一弥一は大さじ四杯分のタバスコが入ったコップに口をつけ一気に飲み干した。
弥一「……………死ぬ。」
弥一はそう小さく呟いてうずくまった。
透真「せ、先輩大丈夫?」
弥一「大丈夫じゃねえよ。」
時雨「で、でも、思ってたより叫んでない?」
彩姫「弥一は昔から辛い物を食べたときは静かに呻くだけだったからね。」
弥一「ひどい目にあった。今も舌が若干ひりつく。」
黒雲「治癒早くない?」
弥一「多分一般人から見た場合タバスコはあんまり辛くない部類だからだろうな。」
黒雲「なるほど。」
時雨「それでも人によっては結構辛いと思うから透真君はしっかりと反省してくださいね。」
透真「わかってるよ。先輩、ごめんなさい。」
弥一「大丈夫だよ。どっちかというと運の方を恨んでるから。」
透真「運か。」
弥一「確率的にこの結果はかなりひどいからな。」
彩姫「まあそんなこともあるでしょ。」
弥一「まあな。」
黒雲「それじゃあ気を取り直してまたくじを引こうか。せーの」
「「「「「王様だーれだ!」」」」」
ピピピ、ピピピ、ピピピ
弥一「アラームが鳴ったな。」
彩姫「それじゃあこれでラストにしよう。」
黒雲「それで王様は誰?少なくとも私じゃないけど。」
時雨「私ですね。」
透真「それじゃあ、どんな命令を出すんだ?」
時雨「ラストということなので、2番と3番にはこの後に使うつもりの確認テスト作成を手伝ってください。」
黒雲「私1番だけど、その間何したらいい?」
時雨「自由に何しても良いですよ。」
弥一「俺が3番だから手伝うわけだな。」
透真「俺も2番だからテストを作るのか。作ったことがないんだけど大丈夫か?」
時雨「はい、大丈夫ですよ。」
彩姫「それじゃあ、勉強するなら元の部屋に戻らないとね。あーでも、問題を見るのは良くないから私たちはこの部屋で待ってたほうがいいかも。
時雨「確かにそうですね。」
黒雲「それなら私達はこのの部屋で適当に過ごしとくから完成したら言ってね。」
弥一「わかった。」
そうして時雨たちは元の部屋に移動する。
まだまだ勉強会は続きそうだ。