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第45話 なんか印象違くない?

「えっ!?」


 口に手を当て驚きの声を上げる橘さん。

 あまりの声量に周囲の人々が何事かと振り返っていた。

 慌てて口を押さえ、辺りを見渡し「なんでもない」と言うように頭を下げている。


 めっちゃ驚いてる……。

 それにしてもさっき見た、なんか見たことある人たちは橘さんと山口さんだったのか。

 どうりで見覚えあるわけだ。


「お、阿宮君じゃん!」


 橘さんを見て、何事だと困惑していた山口さんが俺に気付き、大きい声を上げた。

 そして手を大きく振ってこっちへ向かってくる。

 

 え、ちょっ。


 突然の行動に驚き、動けないでいた俺を柊さんが引き寄せてくれる。

 山口さんは目標を見失い、勢いを殺しきれず静止したことで転んでしまった。

 そこまで距離離れてないのに勢いよくダッシュするからだよ……。


「ちゃんと避けてくださいよ。知っている人だからといってセクハラをしないとは限らないのですから」

「ごめん、突然で身体が動かなかったよ」

 

 ……ごめん。正直、受け止めるのも有りだとは考えた。

 それが頭をよぎったせいか動くのが遅れちゃったのもある。

 

「ありがとう」

「いえいえ、当然のことをしたまでです。それにしても……」


 起きあがろうとしている山口さんに向けて柊さんは


「あなたは警察でしょう? こんな公共の場で……。それに過度な接触は駄目なのでは?」


 と、冷静に問いかけた。

 

「今日は有給だから仕事じゃないぞ?」


 そう返す山口さん。


「なんか前と違ってハイテンションじゃない?」


 遥も疑問に思ったことがあったのか、山口さんへ向けて聞いていた。

 

「そりゃぁ、働いてる時はちゃんとしとかなやろ?」


 確かに違う気がする。

 それになんか口調も違うような……?


「ちょっと待ってくださいよー!」


 橘さんが遅れてやってきた。


「お久しぶりです」


 その様子を見て柊さんが声をかけた。

 

「えぇ。病院で会ったのが最後……でしょうか」

 

 思い出すように、顎に手を当てて言った。

 確かそうだった気がする。


「そうだね」


 遥が疑問に答えてくれる。

 

「やっぱりそうでしたか。お久しぶりです」


 丁寧な挨拶をする橘さん。

 山口さんとは対照的だ。

 

「まさかここで会うとは思っていませんでしたよ……」

「ええ、私も思っていませんでした。同人誌とか好きだったんですか?」

「もちろん!」


 突然、転倒から復活した山口さんが会話に入ってきた。


「今回のコスプレは有名な作品に出てくる警察やからね!」


 なるほど、だからその格好をしていたのか。

 コスプレしている理由を知り、有給と言っていたのに警察の格好をしている謎が解けた。


「それにしても阿宮君も興味あったんやなぁ……知らんかったで」


 笑いながら言ってくる山口さん。

 その様子は俺の知っている印象と違い、返答が遅れてしまう。

 なんか……慣れない。

 結構お世話になったと思うし、関わってきたと思うんだけど……印象が違いすぎて。


「わかるよ、海が困惑するの。ボクも驚いている」


 俺に聞こえる声で遥が話しかけてきた。

 遥も驚いているのか……。


「あれ、どうしたんや? 固まっちゃってさ」

「あなたに驚いているんでしょ……。いつもと印象違うから」

「ああ〜! そっか。仕事だし、それも固っ苦しい職やから標準語やしな」

「うん、知ってる山口さんと違いすぎて……」

「しゃーないな。慣れてくれ」


 頑張る……。


「それにしても何があったのですか?」

「ん? なんのこと?」

「さっきの人混みだよ。そこから出てきたでしょ?」


 柊さんの問いかけを捕捉するように遥が言った。


「ああ、あれ。ちょっと熱中症で倒れた人がいてな。私ら救護の訓練もしとるからスタッフ来るまでの間、応急措置しとったんよ。なっ?」


 あってるよね、と確認するように橘さんに問いかける山口さん。

 

「だね。目の前で急に倒れちちゃいましたからびっくりしましたよ」


 おお、柊さんの予想的中だ。


「危ないね〜」

「ですね。あなた方も水分補給はしてくださいね。特に阿宮さんは」

「……はいっ。さっきしたよ」


 突然話を振られ、つい裏返った返事をしてしまった。


「それなら良かったです。気をつけてくださいね、あなたが倒れたら一人だと連れ去られるかもしれませんし、無闇に男性の体を触って、というのはできないんですから」


 あれか? 痴漢と間違えられないように……とか、救命ではなく故意に触ったとか。

 そういう事件もあったのかもしれないな。気をつけておこう。


「やっぱり熱中症だったんだね」

「うん、そうみたい」


 遥の呟きに俺は肯定の返事を返した。


「それで、三人はこれからどこか見る予定?」

「うーん……まだ決まってない」

「そうですね。二人はここに来るの自体初めてですし……」

「なるほど。……それなら企業ブースに行ったらどうやろか」


 山口さんが場所を提案してくれる。

 企業ブースか。

 いいかも。

 この世界、どんなゲームがあるのか知りたい。

 

「企業か! 気になるし行ってみたい。二人ともどう?」

「いいのではないでしょうか」

「うん、いいと思うよ」


「なら決定、ですね」


 だね、いい情報を教えてもらっちゃったよ。

 ありがたい。


「そうだ、橘さんたちも一緒に行く?」


 俺はふと思いつき、二人にそう提案した。

 しかし————

 

「いや、私たちは少し見たら、屋上のコスプレエリアに行く予定なんだ」

「なので少しの間なら大丈夫です」


 と、これから向かう場所を決めているようだ。

 だが、見て回るようでその間は一緒に行動することに。


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