表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/46

第44話 突然の遭遇

 さっきの人達、どこかで会ったことあるような……。

︎︎気のせいかな?


「どうしたのですか?」


 俺が振り返っていたのを疑問に思ったのか、柊さんが問いかけてくる。


「いやなんでもないよ」


 柊さんは「そう、ですか」と、言葉に含みを持たせるような返答をしてきた。 


「ん? 昨日の奴でも見つけた?」

「いや、あのヤバい人は居なかったよ」

「ならよかった、安心だよ。ところでさ、あそこのサークル見にいってみない?」


 が壁際で列を作っているサークルを指して言った。


「いいよ」

「いいですね」


 俺たちは承諾し、一緒に向かう。


「ここはどんなものを扱ってるんだろう?」

「少女漫画描いてる作家さんが出してるんですよね」

「そうそう! 最近電子で読んでハマちゃってさ〜、さっきカタログ見たら居て来たくなったんだ。いい?」

「いいんじゃないですか? 私もちょうど買いたいと考えていたサークルさんですし」


 柊さんも行きたそうに言う。

 反対する理由もないしな、俺も見てみたいし。


「うん、いいんじゃない? なら早速ならばないと買えないかもしれないね」

「そうですね」

「だね!」


 三人で列に並ぶ。


 しばらく待っていると、俺たちの番が回ってきた。


「いらっしゃいませ」

「こんにちは、えっーと、新刊と……これとこれ一部ずつください」

「はい! ありがとうございます!」


 柊さんが買い物をする様子を見つつ、ポスターのお品書きが気になり視線をそちらに移す。


 へぇ、魔法少女モノなんだ。

 イラストが可愛い……原作は漫画なのかな。


「おっ、これは!」


 ポスターのお品書きに何かを見つけた遥さん。

 何買うんだろう?


「このアクリルキーホルダーください」

「はい、ありがとうございます!」


 アクリルキーホルダーか! 

 好きなキャラだと欲しくなるよね〜。


「目当てのものは買えた?」

「買えました。ありがとうございます!」

「ボクも好きなキャラのグッズ買えたよ!」


 ホクホクの表情で袋を抱える柊さん。

 遥は早速、スマホにアクリルキーホルダーをつけていた。

 早っ!?


 そして俺たちはその場を離れ、会場を見回る。


「あれ、なんの騒ぎだろう?」


 遥が人集りを発見した。

 慌ただしく出入りしている。

 程なくして担架を担いだスタッフが二名走ってやってきた。

 救護スタッフって書いてる? 誰か倒れてしまったのだろうか……。


「急病人かな?」

「おそらく熱中症ではないかと」



 俺の呟きに柊さんが考えられる出来事を教えてくれる。

 熱中症か……。

 無事だといいけど。


「確かに、ここ結構暑いもんね」

「だね。ボクたちも運ばれないように水分補給しとかないとだよ」

「それにしても大丈夫かなぁ」

「救護スタッフが来ていたし、一先ず安心っぽい感じじゃない?」

「ですね。何より私たちができることは道を塞がないことでしょう」

「そうだね」 


 そして真ん中では邪魔になると思い、時間もちょうどいいので壁際で休憩することに。

 カバンからスポーツドリンクを取り出し、喉へ流し込む。


 そうしつつ、先ほどの行く末を見守っていると……人が捌け始めた。

 人を乗せた担架を担いで、スタッフが去っていくのが見える。

 どうやら終わったみたい。


 大事には至っていない様子で安心し、次どこのサークルを見ようか考えていると————


 見知った顔触れが人集りの中から出てきた。

 橘さんと山口さんだ。


 え、あの二人……何してるの?

 橘さんと山口さんだよね?


 こちらへ向かって歩いてくるが俺たちには気がついてない様子だ。


 ちょっと手を振ってみる。


 気が付かない。

 なんか違う人に振り振り返されちゃった。


「何してるのですか……無闇に視線のあった人へ手を振るなど。勘違いさせますよ」

「そうだよ、お母さんから教えられなかった? 『愛想を振り撒く悪い男はサキュバスに連れて行かれるよ』って」


 なにそのエロ漫画みたいな展開は。

 こっわ。

 ……でも、お化けよりはマシ? いわゆるえっちぃお姉さんが迎えにくるんだもんね。


「あれ、聞いたことない?」

「ピンと来てないようですね」

「うん、聞いたことないな。『鬼に連れ去られるよ』とかはあったけど」

 

 二人と話しつつ、視線を戻す。


「あっちに誰かいるの?」

「そうそう、初めて会った時に居た警察官の二人がそこに」

「……あー! 見つけた! 服装まんま警察官じゃない?」

「いえ、ところどころ違うのでコスプレのようですよ」

「本職が本職のコスプレをするの……?」


 そんなことがあるのか? と疑問を呟く遥。

 俺もそう思う。

 勝手な想像だけど、普段と変わらなくて落ち着かなそう。


 あれ、こっちに向かってきてない? でも気が付いては……いなさそう。

 汗を拭いながら、こちらに向かってくる二人の姿が見える。

 ……驚かそうかな。


 いや、こっそり行動するとなると一人で動かないといけない。

 流石に危ないか。


 そうこうしていると、キョロキョロしどこに行こうか悩んでいる様子の橘さんと目が合った。

 その場に立ち止まり、フリーズした橘さん。それを見て「何があったんだ」と言わんばかりに、橘さんの視線の先——俺を見る山口さん。

 二人してフリーズしてる。

 言っちゃあれだけど、ちょっと面白いね。

 驚いた表情で口をパクパクさせフリーズしてるのは。


「やっと気が付いたね」


 まさかこのイベントで橘さんと山口さんと再会するとはなぁ……驚きだよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ