表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/46

第36話 喫茶店でのひと時と新たな誘い

 しばらくゲームなどで遊び、窓から差し込む日が明るくなる。

 時間を見ると昼頃だった。

 ちょうど腹の虫もなったことだし、何か食べようかな?


 冷蔵庫を開けたものの、中身はほとんど空っぽだった。野菜が少しと、期限切れ間近の牛乳があるだけだ。

 しまった……旅行から帰ってきたばかりでまだ買い出しに行けてなかったんだ……。


「うーん、これは困ったな……」


 仕方ない、コンビニにでも行って何か買ってこようかな。

 お昼ご飯を適当に済ませるには、それが一番手っ取り早いだろう。俺はスマホを手に取り、近くのコンビニの場所を確認する。


「確か、前に行ったところが近くに……お、あったあった」


 徒歩5分圏内にコンビニを見つけた。

 『外出は控えて』って言ってたけど……まぁ、このくらいなら大丈夫だろ。

 ということでレッツゴー!


 

 マンションから少し進んだところで前を歩く涼さんを発見した。

 ん? あれ、涼さんじゃないか? 今から成瀬さんの喫茶店に行くのかな。

 ちょっと声かけてみよっと。


「涼さーん!」

 

 涼さんに声をかけると、彼女は勢いよく驚いたように振り返った。


「えっ、あ、阿宮ッ!? なんでここに居るんだ? それに警護官の二人はどうした?」


 矢継ぎ早に質問が飛んでくる。


「ちょ、ちょっと待って順番に答えてくから!」

「あぁ、ごめんよ。動揺しちゃってよ……」

「いいよいいよ、俺も急に声かけちゃったから。で、昼ごはんを買いに来たんだよ。家に食材が無かったから」


 涼さんは安堵の表情を浮かべて、少し肩を落とした。


「そうだったのか。てっきり何かあったのかと思って、驚いたよ」


「ごめん、驚かせちゃって。でも、涼さんこそどうしたの? これから成瀬さんの喫茶店に行くところ?」


 涼さんは頷いてから、周囲をちらりと確認し、俺に近づいて声を潜めて話し始めた。

 おそらく周囲でチラチラ見てくる女子たちが着いて来ないように、ということだろう。

 なんかさっきから視線を感じていたんだよね〜。

 やっぱり警護官がいた方が楽ではあるな。チラッと見られることがあれど、一人よりはワンチャンを狙う人が減るから。


「そうなんだ。ちょっと成瀬さんと話すことがあってね。今は昼時だから、もし良かったら一緒にお昼食べないか? 喫茶店でランチを奢るよ」

「え、いいの? それならぜひご一緒させてもらおうかな」


 涼さんの提案に、迷わず返事をした。

 一人で食べるより、みんなで食べた方がいいしな! 何より奢ってくれるってさ。


「じゃあ、行こうか」


 二人で並んで歩きながら、成瀬さんの喫茶店へ向かう。

 道中、涼さんが最近ハマっていることなどついて話してくれる。

 彼女は普段は男勝りな雰囲気だけど、こうして話すと柔らかい一面も感じられるよ。

 喫茶店に着くと、成瀬さんがカウンターで作業をしていた。そして入ってきたことに気がついたのか、視線をこちらに向け目が合う。


「やっと来た……ね……。なんで、阿宮くんがいるの?」

「いやー、来る途中で会ってさ。昼ご飯を買いに行くらしいから、ならここで一緒に食べないか?って誘ったんだ」


 なぜか呆れたような反応を返された。

 

「はぁ……また一人で出歩いていたってことですか。何度言ったら危機感を持ってもらえるのか」

「まぁ、何も無かったからいいじゃないか。とりあえずなんか昼ご飯用に作ってくれよ」


 涼さんが軽く流しつつ、カウンター席の成瀬さんの正面に座った。そして隣に座るよう促してくる。


「分かった。オムライスでいい? 阿宮くんはどうする?」

「ああ、それでお願い」

「俺もオムライスでお願いします」

「了解、ちょっと待ってね〜」


 成瀬さんは軽く手を挙げて、厨房に入っていった。

 カウンター越しに見える彼女の手際の良さに感心しながら、涼さんと並んで座って待っていた。


 しばらくして、成瀬さんがオムライスを二つ持ってきてくれた。

 ふんわりとした卵に包まれたオムライスが目の前に置かれ、見た目からして美味しそうだ。

 涎が出てきそう。


「お待たせしました。特製のオムライスです。どうぞ召し上がれ」


 成瀬さんの声に促され、俺たちはさっそくオムライスを一口。ふわふわの卵とトマトソースの絶妙なコンビネーションが口の中に広がり、一瞬で幸せな気分になった。


「美味しい!」

「うん、美味い!」


 成瀬さんは微笑んで、再びカウンターの方へ戻っていった。俺たちは静かにオムライスを食べながら、時折目を合わせては笑い合う。


「こうやってのんびりできる時間、大切だよね」


 涼さんがポツリと言う。


「もうすぐ忙しくなるからね」

「だな」

「何があるの?」


 二人の会話が気になり、問いかける。


「あー、阿宮くんはオタクコンテンツに理解がある方?」

「最近はあまり見れてないけど、そうだね」


 転移前はよくアニメとか漫画とか読んでいた思い出。


「実はね、今度同人誌即売会があるんだけどね。私がそこで出店することになったの。で、涼が売り子として手伝ってくれる予定なんだ」


 この世界にもあるんだ、同人誌即売会。

 興味はあったけど、結局行けなかったイベントだ。


「それで、興味があれば阿宮くんも売り子してみない?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ