第32話 美味しい昼食と観光の旅路
メニューはどこだろうとテーブルを見渡すが、それらしきものが一切無い。
あれ、ファミレスってテーブルの上にメニュー表あるもんじゃなかったっけ。
「あ、ここはタブレットで注文するんだよ」
成瀬さんがそう教えてくれ、タブレットを見せてくれた。
「へぇ」
最先端っぽいな。
画面にはジャンルごとに分かれ、朝食セットやパスタ、オムライスなど、バラエティに富んだ料理が並んでいる。
どれもいいなぁ。目移りして悩むよ。
ただ朝から食べてないし、ガッツリ食べたい気分でもある。
うーん……お、ハンバーグもあるのか。
「俺はチーズインハンバーグにしようかな。みんなはどうする?」
俺はハンバーグセットを注文カゴに入れつつ、タブレットを渡した。
「うーん……」
「ねぇ、カルボナーラはある?」
涼さんが悩みつつ画面を見ていると、成瀬さんがそう問いかけていた。
「あるよ。それにする?」
「うん、お願い」
「りょーかい」
「あ、私もカルボナーラが欲しいです」
「はいよ」
画面を操作し、追加している。
「オレはオムライスにしようかな。遥はどうする?」
「そうだなぁ、ボクはミートソーススパゲッティにしようかな」
遥はそう言い、画面を操作して追加した。
「オムライス、カルボナーラ二つ、チーズインハンバーグ、ミートソーススパゲッティ、と。じゃあ、これで確定だね」
成瀬さんが全員の注文を確認して、タブレットで注文を確定させた。
タブレットを元あった場所に戻し、箸などを先に準備しておくことにした。
しばらくして、個室の扉がノックされる。
「はーい」
「料理をお持ちしました」
扉を開け入ってきた店員さんは、注文した料理を次々とテーブルに並べていく。
「ごゆっくりどうぞ」
あれ、てっきり驚かれるものかと思ってたが、普通の反応だったな。個室だからいること分かった上で来ているからかな?
そんな考えがふと頭をよぎった。
「お待たせしました。こちらがチーズインハンバーグ、カルボナーラ二つ、ミートソーススパゲッティ、オムライスです」
店員さんが料理をテーブルに並べると、素早く去っていた。
そしてみんなで「いただきます!」と言って手を合わせる。
「うん、美味い!」
俺はチーズインハンバーグを一口食べる。
ジューシーな肉とチーズが絶妙でとても美味いな。
そして、みんなもそれぞれの料理を楽しみ始めた。
「美味しいですね」
柊さんもカルボナーラを口に運び、満足そうに微笑む。
「オムライスもすごくふわふわで美味しいよ。やっぱり定番は間違いないね」
成瀬さんが満足そうに言うと、遥もミートソーススパゲッティを楽しみながら同意する。
「うん、ミートソーススパゲッティもすごく美味しい。こんなに美味しい朝食が食べられるなんて、最高だよ」
みんながそれぞれの料理を楽しむ。
「ねぇ、阿宮くん。それ、一口貰えない?」
成瀬さんが俺のチーズインハンバーグを見ながら、問いかけてくる。
「いいよ」
俺は一口台に切り分け、成瀬さんの取り皿に置こうとした。しかし、それは止められた。
「あ、ちょっと待って。こっちにお願い」
口を指して言う成瀬さん。
「え? ここに?」と俺は驚いたが、成瀬さんが頷くので、そのままフォークでハンバーグを成瀬さんの口元に運んだ。
「ん、美味しい!ありがとう、阿宮くん!」
成瀬さんが笑顔で言うと、お返しにとカルボナーラをくれた。
……もしかして、俺もあーんで食べるやつ? ちょっと恥ずかしさがあるんだけど。
しかし、一向にお皿に置く気配が無い。
観念し、俺は成瀬さんのフォークへ口を運ぶ。
「どう?美味しいでしょ?」
成瀬さんが笑顔で聞いてくる。
美味い! カルボナーラもいいね。
「うん、美味しいよ。ありがとう、成瀬さん」
「どういたしまして。ふふ、間接キスだね」
少し照れた様子で微笑みながら呟く成瀬さん。
そんなやりとりを見ていた涼さんが、笑いながら言った。
「なんか二人、恋人みたいだね」
ニヤニヤと揶揄うように言う涼さん。
その言葉に成瀬さんが照れ笑いを浮かべ、俺も思わず赤くなった。
……羨望、嫉妬の視線を感じる。
「ちょっと、涼! からかわないでよ」
成瀬さんが少し恥ずかしそうに言うと、遥もニヤリとしながら会話に混ざってくる
「恋人なら名前で呼ばないとだぞー?」
成瀬さんは顔を赤くしながら、「そ、それはちょっと…」と照れくさそうに答えた。
「じゃあ、海ちゃんって呼んでみたらどう?」と遥が笑いながら提案する。
「海ちゃんって…ちょっと、それは違う気がするよ」と俺は慌てて言う。
「それなら普通に、呼び捨ての方がいいかな」
「揶揄うもんじゃないですよ。タイミングってのがあるんですから」と柊さんが口元を拭きながら言う。
そして続けて、
「ただ、シェアして食べるのは賛成です。私のも一口どうぞ」
柊さんはそう言って、フォークを差し出してきた。それに続いて他のみんなにも一口ずつシェアしてもらうことに。
涼さんからはオムライス、柊さんからはカルボナーラ、遥からミートソーススパゲッティを、それぞれ美味しい料理を味わいながら、和やかな時間が続いた。
食べる量が増えてお腹いっぱいだよ……。
これ車乗って酔わないか心配になる。
◆◆◆
食べ終え、少し休憩をした後。
どこへ向かうか話すことにした。
観光地とは決めていたが、明確な場所は決めていないしな。
「さて、どこに行こうか?」
と成瀬さんが呟くと、みんなはそれぞれ考え込んだ。「観光地と言っても、たくさんありますよね」と涼さんが言う。
「例えば、歴史的な場所や、ちょっと自然の中でリフレッシュできるスポットとか、どうですか?」
「自然公園とか? あとは寺院とかかな?」
「良さそう、神社とか行ってみたいな」
と話し、神社を中心に様々なところを巡ることにした。
そして会計を済ませ、車へ戻る。
「じゃ、行きましょうか」
柊さんがエンジンを入れ、車が動き出す。