第29話 土産屋、そして旅行の夜といえば……
次はどうしようか。
結構回り切ったと思うんだ。
深海から黒海まで、そしてイルカショーに餌やりと……。
そろそろ足が疲れてきたなぁ。
「疲れたねぇ……」
「ですね〜」
「どうしますか」
「お土産とか見に行く?」
「いいかもね。それ見て今日は帰るとするか」
こうして、みんなでお土産屋へ向かうことにした。
お土産屋に入ると、色とりどりの海洋生物グッズが並んでいて、店内は賑やかな雰囲気に包まれていた。
イルカやペンギンのぬいぐるみやキーホルダー、Tシャツなど、様々なアイテムが目を引く。
「わあ、これ可愛い!」
成瀬さんが手に取ったのは、ふわふわのイルカのぬいぐるみだ。
触れる手が沈み込んでいる。
結構もふもふなのか? いいなそれ。
「イルカのぬいぐるみ買おうと思ったんだよ。いいなそれ」
俺は成瀬さんが触れるイルカのぬいぐるみを見て、そう呟いた。
「ほんと? じゃあ、一緒にお揃いにする?」
成瀬さんがにっこりと笑って言った。彼女の笑顔はまるで太陽のように明るく、思わず心が温まる。
「お揃いか……うん、いいかもね!」
俺も笑顔で応えると、成瀬さんはぬいぐるみを抱きしめたまま、お店の中をさらに見て回る。
「あ、これ良くない?」
遥が何かを見て聞いてくる。
近くに行くとそれは小さなイルカのキーホルダーだった。
赤、青、黄色、白————など多くのカラーを取り揃えている。よりどりみどりだな。
「どの色にしようかなぁ……」
これだけ沢山あると悩むよな。でも、俺は迷わない。好きな色があるんでね!
「俺は水色にしようかな」
「そうなの? じゃあ、ボクはピンクにする!」
遥がピンクのイルカキーホルダーを手に取った。その様子を見て俺も似合ってるなと思った。
そして、柊さんと涼さんの方を見ると、それぞれ思い思いの物を選んでいた。
「柊さん、それってもしかして……」
柊さんの手に持っているものが気になり声をかけた。
「これですか? これは、ぬいぐるみのストラップですよ」
「それはわかるんだけど……もしかして、ダイオウグソクムシ?」
「はい、今見つけたのですが……ぬいぐるみで見ると何故か「可愛い」と思ってしまいまして……」
「見る目があるね〜」
仲間を見つけたような気分になった。
「俺も欲しいし、お揃いで買う?」
「いいのですか?」
「うん、柊さんがいいのであれば、買おう」
「そうしましょう!」
ということで柊さんとはダイオウグソクムシのストラップをお揃いで買うことになった。
いやー、にしてもこんなグッズまであるとはね。好きな生物のは書いたいから嬉しいよ、それに柊さんともお揃いにできたし。
そう考えていると、涼さんが何かを持って駆け寄ってきた。
「ねぇねぇ、これ良くない?」
手に持つのはマグカップだ。
青い海のイラストが描かれ、イルカが跳ねる姿がデザインされている。
「おお、いいじゃん。そのマグカップ、海の感じがすごく出てるね。」
俺がそう言うと、涼さんは嬉しそうに微笑んだ。
「そうでしょ? 一目見て気に入っちゃったんだよね」
涼さんは続けて何か言おうとする。
「それでさ、これ、ペアマグカップなんだよ。一個貰ってくれない?」
「いいの?」
「オレは阿宮くんに貰ってほしいからな」
「ありがとう」
続けて「オレだけお揃いのが無いのも嫌だったしな」とボソッと呟いた。
「じゃあ、これでみんなお揃いになったね」
成瀬さんがそう言うと、みんなが嬉しそうに頷いた。お揃いのアイテムを持つことで、今日の思い出がより一層特別なものになった気がする。
「じゃあ、お会計しに行こうか」
俺たちはレジに向かう。
あ、あれ。何? ここで待っとけ?
みんなにそう言われ、レジの外で待つことに。
レジを見つつ、俺は他にも何かあるのかと店内を見回して見ると、水族館限定のウォーターキーホルダーを発見した。
何種類か色があり、5人分はある。
お、これよさそう。
それぞれお揃いは買ったけど、みんなでお揃いは無いし、これ五種類買おうかな。
そう思い、五つ手に取ってこっそりとレジへと向かう。
帰りにサプライズで渡そっと。
喜ぶ姿を想像して口角が上がる感じがした。
みんなはまだレジに集中しているな。そことは別のレジに並んでっと。
お、早く進んだ。これは先に終わりそうだ。
レジを終え、無事買うことができた。
それにしても、レジに行くたびに驚かれてちゃたまんないよ。これだけは慣れないな……。
毎回「男性ッ!?」って目を見開いていうんだもん。
そして、同じ場所で待つ。しばらくしてみんなが戻ってきた。
「お待たせ〜」
何食わぬ顔で「おかえり、ありがとう」と返した。
どうやらばれてないようだな。よしっ!
さて、どこで渡そうか……。
「じゃ、帰ろうか!」
「そうだね」
「うん」
こうして俺たちは土産物屋を後にする。
ちなみに、他にも色々と、クッキーやしおりとか夕食用に限定の食べ物など、色々と買った。
いやー、旅行ってついお金使いすぎちゃうよね。
そんなことを考えつつ、帰路につく。
水族館での思い出を語りながらホテルへと戻ってきた。
そしてみんなが買ったお土産を整理している間に、俺はサプライズの準備を始めることにした。
「みんな、ちょっとこっち注目!」
「どうしたの?」
俺はみんなの注目を集めるために声をかけた。成瀬さんと遥、柊さん、涼さんが不思議そうに俺を見つめる中、俺は袋からウォーターキーホルダーを取り出した。
「じゃじゃーん!」
「わあ、これって…」
成瀬さんが驚きの声を上げた。
「水族館限定のやつだよね? 本当にありがとう!」
喜びが爆発したのか、遥が飛び込んでくる。
「わっ!?」
遥は軽く抱きついてきたものの、すぐに照れくさそうに後ろに下がった。
「ありがとう、海! 本当に素敵なサプライズだね」
成瀬さんも微笑みながら、ウォーターキーホルダーを大事そうに手に取っていた。
「これでみんなお揃いだね。旅行の記念にもなるし、良い思い出になりそう」
涼さんも頷きながら、キーホルダーを見つめている。
柊さんは何度も手に取っては、嬉しそうに眺めていた。
「思い出が沢山でとても嬉しいですね」
柊さんが深く感謝の気持ちを込めて話す。みんなが頷き合い、幸せそうな表情を浮かべていた。
みんなが一様に笑顔になり、その場の雰囲気が一層和やかになった。サプライズを用意しておいて良かったなと、俺は心から嬉しい気持ちになる。
その後、夕飯を食べ、風呂へ。
もちろん覗きに行くはずも無く。
そもそも、どこに温泉があるのか分からないしなぁ。覗きに行こうにも無理だというね……。
諦めて、備え付けの風呂に浸かる。
みんなが戻り、だが、まだ眠たくないらしく何をしようか話していた。
ホテル、敷布団、枕が人数分、広い部屋、これだけ条件が揃えばやることはただ一つ。
枕投げの時間じゃぁぁぁぁ!!!!